金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

163:木地雅映子 『悦楽の園』

2010-09-18 10:20:34 | 10 本の感想
木地雅映子『悦楽の園』(ジャイブ)
★★★☆☆

「革命家あるいは犯罪者」の父を持つ13歳の相原真琴は
中学校でいじめられっこの南一に出会った。
一の絵の才能を見出した真琴は、一と心を通じ合わせ、
発達障害の彼の苦しみを感じ取り、
彼の庇護者となろうとする。
不良の染谷を巻き込み、真琴は学校に
革命を起こそうとするが……

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前半はかなりおもしろかったのだけど、
後半にはついて行けなかった……。
ご都合主義が感じられたのもあるけれど、
なんというのか、作者の描こうとしているものが
文章で正確に伝わってこないという感じ。
真琴のキャラクターのブレも気になった。

そしてところどころの性欲の爆発に、
三十路の大人としては、
「お前ら13歳だろ! そんなことは許しませんよ!」
と言いたくなってしまうのでありました。

いろいろツッコミどころはあるのだけど、
きらいになれない。そんなお話。
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162:木地雅映子 『マイナークラブハウスへようこそ!』

2010-09-14 14:57:08 | 10 本の感想
木地雅映子『マイナークラブハウスへようこそ!―minor club house〈1〉』(ポプラ社)
★★★☆☆

桃李学園高等部の一角に存在する古ぼけた洋館は、
「マイナークラブハウス」と呼ばれ、部員5人未満のため
非公式な存在となっている文化部ばかりが集っている。
マイナークラブに関わる少年少女たちの日常を描いた
連作短編集。

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これも初めて読む作家さん。
ほかの作品を知らないのだけど、なんとなく、この人、
ライトでコミカルなものよりは、
シリアスで重い話のほうが得意なんじゃないのかしら?
ユーモラスな部分とシリアスな部分が、
なんだかちぐはぐな印象を受けた。
配分がうまくいっていない感じ。
でもおもしろかったので、次巻に期待大。
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161:イーユン・リー 『千年の祈り』

2010-09-14 14:32:33 | 10 本の感想
イーユン・リー『千年の祈り』(新潮社)
★★★☆☆

親友と婚約者に裏切られた過去を持つ、
ミス・カサブランカとよばれる独身の女教師。
反対を押し切って結婚したものの、
生まれた子どもが障害を持っていたことで
苦しむことになる、従兄妹同士の夫婦。
離婚した娘を案じて中国からやってきた父と、
その父をうとましく思い、かたくなになる娘。
中国に住む人々の人生を描く短編集。

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たまにはいつもと違ったものを読んでみようかと。

著者は北京生まれ・アメリカ在住の女性。
なんだかいろいろと賞をとっている作品のようです。
中国の社会の有り様や時代に翻弄される人々の
人生を描く十篇の短編を収録。
あきらめのような虚無感と、
大きなものを失いながらも生き抜いていこうとする強さを
感じる不思議な読後感。
とくに表題作がいい。

中国を舞台とする日本人作家による現代小説・歴史小説は
数あり、それはそれなりにおもしろいのだけど、
やはりバックボーンがそこにある人間が書いたものと
そうでない人間が書いたものは、全然ちがうんだなあ。
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160:井上荒野 『学園のパーシモン』

2010-09-13 08:48:39 | 10 本の感想
井上荒野『学園のパーシモン』(文藝春秋)
★★★★☆

絵の才能を持ちながら、それがきっかけになって
いじめにあうようになった木綿子。
容姿に恵まれながら、どこか欠落を抱える真衣。
女に関わる問題を起こして進学校から転校してきた恭。
女生徒との逢瀬を重ねる美術教師の磯貝。
3人の生徒と1人の教師が在籍するT学園は、
カリスマ学園長の病気で揺れている。
そんなある日、学園で昔からささやかれていた
「赤い手紙」が木綿子と真衣のところに届く――。

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久しぶりの井上荒野。
学園ものとは、なんだか意外。
大部分が高校生視点なので、これまで読んだ作品とは
ちょっと雰囲気がちがうのだけど、好み。

真衣は生々しくオンナだなあ。
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159:アンソロジー『Lost and Found―さがしもの』

2010-09-12 15:06:09 | 10 本の感想
アンソロジー『Lost and Found―さがしもの (teens’ best selections 16)』(ポプラ社)
★★★☆☆

【収録作品】
永井するみ「ハンカチの木」
花形みつる「いっちゃん」
香谷美季「アヴァロンを探して」
長崎夏海「夢のない眠り」
石崎 洋司「神様のさいころ」

Fragile―こわれもの』と同じシリーズ。
このシリーズはまだ2冊しか読んでいないのだけど、
アンソロジーにしては出来に落差が少なく、
安定している印象。
しかし「アヴァロンを探して」は、
内容に比して文章が大仰で、なんだか滑稽だったな。

「Fragile―こわれもの」に収録されていた
花形みつる「アート少女」の続編が
本になって出ているらしい。
これは読みたい。
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158:アンソロジー『初恋リアル』

2010-09-11 10:52:05 | 10 本の感想
アンソロジー『初恋リアル (YA!ENTERTAINMENT)』(講談社)
★★★☆☆

【収録作品】
香坂直「初恋のたねは、ころんとゆれる。」
菅野雪虫「マッチ売りの少年」
樫崎茜「ローリングストーン」
片川優子「東京プリン」
椰月美智子「恋の石」

著者がみんな講談社児童文学賞出身ですね。
アンソロジーはやはり個々の作品の
出来・不出来の落差が激しい。
以下、一部感想。

「マッチ売りの少年」
菅野雪虫さんって、初めて読んだんだけど、
後味の悪さは勘弁してくださいって感じでした。
でも、作品としてきちんと完結していて、
過不足がなく、その点ではいちばん良かった。
たぶん、上手い作家さん。

「東京プリン」
『ジョナさん』である程度予想がついていたけど、
この作家さん、きっとこの、何を言いたいのかわからない、
ヤマなし・オチなしが作風なんだな。
『佐藤さん』はそうでもなかったけど。

「恋の石」
おそらく、このシリーズのターゲットである年齢層よりも
上の年齢の女性のほうが共感できるんじゃないかしら。
主人公がなぜ若い男の子に恋されているのか、
さっぱりわからない。
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157:岩井俊雄 『アイデアはどこからやってくる? 』

2010-09-11 10:33:55 | 10 本の感想
岩井俊雄『アイデアはどこからやってくる? (14歳の世渡り術)』(河出書房新社)
★★★☆☆

原稿に使えるかな?と思って借りてきたのだけど、
具体的な商品の説明が多くて、
字数の条件にも合わず、無理でした。

著者は「メディアアーティスト」。
縦に開く絵本や、視覚と聴覚を組み合わせた学期など、
自分がつくった作品を、そのアイデアの出てきた過程を
まじえつつ紹介している。
「こんな商品があるのか」というおもしろさはあったけれど、
本のテーマ「アイデア」に関わる内容としては
特に印象に残ることもなし。

それにしても、この「14歳の世渡り術」というのは、
コンセプトとして「よりみちパン!セ」みたいなのを
狙っているのだろうか。
児童書コーナーでも影の薄い感じだったけれど。
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156:筒井康隆 『時をかける少女』

2010-09-09 14:34:38 | 10 本の感想
筒井康隆『時をかける少女 』(角川文庫)
★★★☆☆

表題作のほか、2編を収録。

そういえば原作をちゃんと読んだことないな……と
思って読んでみたのだけど、唖然とするほどの
内容の薄さであった。
短編なので、仕方ないといえば仕方ないのだけど、
それにしたって「ぽかーん……」だった。
映画やアニメ化もされた古典的な作品だというのもあって、
なにかドラマチックな、感動的な物語を
勝手にイメージしていたのだけど、
SF要素が説明でさくさくと片づけられてしまって
まったく話に入り込めず。
映画は肉付けしてあるのかしら?
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155:内田樹 『日本辺境論』

2010-09-04 20:46:28 | 10 本の感想
内田樹『日本辺境論』 (新潮新書)
★★★☆☆

売れてるし、内容的にも、どこかの学校で
出題される可能性大!
……と思って買ってきたものの、読まずに放置していた

辺境の国として、そこにすむ人々として生きてきた日本人は、
常に自国以外のどこかに「世界の中心」を必要とし、
比較の中で自らを位置づけることしかできない――
というのがこの本の主旨。
これまでさまざまに書かれてきた日本論の総括であり
新しい発見はない、と最初にことわりがあったのだけど、
これまで日本論をそれほど読んできたわけではないので
問題はなし。新しい知識として受け入れられました。
途中、
「それは普通、こういう意味で言っているのでは?」
というのを、著者が都合よく解釈しているように
思えるところがあって、それが気になった。
そして、おもしろく読んでいたのは確かなのに、
読んでいる途中で数回寝てしまった。
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154:根本順吉 『月からのシグナル』

2010-09-03 15:02:23 | 10 本の感想
根本順吉 『月からのシグナル 』(ちくまプリマーブックス)
★★★☆☆

著者は気象研究家(故人)。
出産や死亡と月の満ち欠けの関係、
月齢と地震の関係、
吉凶を表す六曜の真偽……等
地球上の生物と月との関係について
暦の歴史や伝承を中心に述べた本。
最初の「月についての概説」は天文学上の
基礎知識の確認になっているのだけど、
知識があること前提の書かれ方で、
大部分、なにを言っているのかさっぱり。

本筋とは関係の薄いことだけれども、
カエサルとアウグストゥスがそれぞれ
自分の誕生月や戦勝記念に自分の名前をつけて、
それがJulyとAugustになった、という話は知らなんだ。
そして意外なところに藤原正彦氏が登場。
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