坂井孝一『源氏将軍断絶 なぜ頼朝の血は三代で途絶えたか』
★★★☆☆3.5
【Amazonの内容紹介】
●「承久の乱」へと続く、幕府内の壮絶な権力闘争の歴史とは?
●2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』時代考証者が描く
源氏三代「新解釈」。
日本史上初の本格的な武家政権である鎌倉幕府では、
創設者頼朝の源氏の血統は三代で途絶え、継承されなかった。
跡継ぎのいなかった三代将軍実朝の暗殺が
この「断絶」を招いたとされるが、
その当時、二代将軍頼家の遺児、あるいは他の源氏の血を引く人々も
存在した。
にもかかわらず、なぜ彼らは将軍になれなかったのか。
そもそも実朝の暗殺が源氏将軍の断絶を招いたのは、自明の理なのか。
頼朝による鎌倉幕府の樹立から三代将軍実朝の殺害に至るまで、
幕府内の壮絶な権力闘争の歴史を紐解きながら、
「源氏将軍断絶」の歴史的な意味を問い直す1冊。
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北条氏に都合のいいように書かれた吾妻鏡を
解釈しなおす試みは、まさに「新解釈」で楽しい。
実朝の官位の急激な上昇は「官打ち」ではなく、
後鳥羽院が実朝を自らの子の後見にふさわしい立場に
しようとしたための結果。
親王将軍を拒否したのはその実朝が死んだから。
……というのはなるほどね~と思った。
後鳥羽院が我が子を鎌倉へやってもいいと考えるほど
実朝を評価・信頼していたのか?という点については、
かなり疑問だけども。
釈然としないことも多いけれども、
こうしていろんな説を読むのはおもしろい。
歴史学においても逆張りというか、
長い間、暗愚の為政者と評価されていた人物が
実は高度な政治的センスを持っていたのだと
評されるようになったり、
逆に「革新的ですごい!」と言われていた人物が、
実は他者の政策を真似ていただけということになったり。
潮流のようなものが見えるのも興味深い。
この時代もやっぱり残っている文字史料が少ないので、
決定版と言えるような説はなく、
Aの記述を重視した説を立てれば、
Bの記述との齟齬が出てきてしまい、
どうしても推論で終わってしまう。