自分も救急医療をずっとやってきましたが、嘔吐をきたす疾患は数限りなくあります。研修医のdecision makingの過程において、一生のうち1回か2回くらいしかみない頻度の疾患をいきなり一番最初に頭に思い浮かべるのは間違いであると教えます。嘔吐をきたす疾患で一番多い疾患はおそらく急性胃腸炎や食べ過ぎや食あたりくらいが妥当でしょう。その他の随伴症状がなければ、るい痩体型から神経性食思不振症も鑑別診断にいれてもいいかもしれません。ここで「上腸間膜症候群」という病名が出たら唐突にこの疾患を疑った理由は?と質されるでしょう。いずれにせよ救急外来で診断できるようなものではなく、「症状が回復しないなら昼間の外来へ必ず行くように」と言われているはずです(どこの病院の救急外来でもいわれているでしょう)。にもかかわらず再度、救急外来に行ったということは問題であるとも考えなければいけません。「研修医の誤診」とさんざんメディアにいわれていますがかなり酷な表現でしょう。もちろん亡くなった患者さんのご冥福をお祈りしますが、この研修医の今後も心配です。「こんなに言われるなら医者やめる」とならないよう。