吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

ほどほど

2016年07月12日 06時02分21秒 | 日記
 この梅雨から夏にかけての時期は、どうやら体の調節機能も落ち着かないようである。
 昼は連日熱いが、明け方は結構涼しくて、喉をやられたり風邪をひいたりする人が多い。

 いろいろと患者さんに療養指導やらアドバイスもするのだが閉口することも多い。
 いつも「よく散歩したりして足を動かしてください」というと「この暑いのに? 熱中症になってしまうんじゃないですか?」と返される。
 じゃあ「十分水分摂ってくださいね」とお願いすると「夜中のトイレの回数が増えるから寝れなくなるし、お腹がゆるくなるんですよ」と返さりたりもする。

 ということで「消化の良いものを食べるよう心がけてください。あ 野菜のように繊維の多いものは消化が悪いですよ」というと、「えっ? まさか野菜は消化が悪い? 身体ためにいいってみんな言っていますよ」となかなか説明するのも難しい。

 たぶん何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」なのである。
 何ごともほどほどなのである。

グルテンフリーって? その3

2016年07月11日 06時03分11秒 | 日記
 グルテンが急激に血糖値をあげるとか言っているが、それも定かではない。例えそうであっても、他に急激に血糖値をあげる食材なんていくらでもある。
 なんでグルテンばかりが悪者にされているの?という感じである。まるで歴代知事も視察に行くときはみんなファーストクラスだったのになんで今回、舛添さんだけが追及されているの?といったものと似ているような感じである。

 今回のグルテンフリーブームも、古くは、故鈴木その子さんの「脂質は摂ってはダメ!糖質(ごはん)は好きなだけ食べましょう」というダイエット法や、あるいは紅茶キノコブーム、近年ではココア健康ブームにもなんだか似ている。

 おそらくこの現象は半年も持たないだろう。そのうちスーパーの店頭にはグルテンアレルギーの方が購入されるくらいの絶対数にまでグルテンフリー食材が激減していくものと考える。
 
 おそらく、この仕掛人(tactician)は食品業界の人だったりして・・・。この業界の人は今はグルテンフリー食材を大量に入荷しているが、もうそろそろブームも去ることを見越して徐々に入荷制限をかけ始めると思います。

 グルテンが悪者かどうかはこの人たちにとってはどうでもいいことであり、むしろ自分の仕掛けが当たるかどうかが重要なんでしょうけど・・・。

グルテンフリーって? その2

2016年07月09日 05時41分35秒 | 日記
 たぶん多くの人の誤りは「グルテンは身体に悪い。これさえ取らなければ健康体になってヘルシーな生活が送れる」と勘違いしていることである。
 グルテンは例えば「お麩」がそうである。麩饅頭なんて自分の好物である。しかもモチモチ、シコシコの麺もこれがないと旨くない。
 グルテンアレルギーをもつ人は別にして、これら原料であるグルテンを身体に悪いなどと言っているメディアはないはずである。

 ところが何故「悪者」と位置付けられて広まったのか? 
 たぶんグルテンの中の成分が血糖を急にあげるので、それを抜けば効果的にダイエットができると考えているのだろう。 
 しかしダイエットする際に、食べていいもの、絶対に食べていけないものの棲み分けは存在しない。

 日本人は昔から、それが正当か不当かの十分な評価をせず、まず善人、悪人の区分けをして、とにかく悪者を懲らしめるという勧善懲悪の図式が好きなようである。それは忠臣蔵しかり水戸黄門しかりである。

 ただそれは物語の世界だけにしてほしい。自分はそこまでグルテンが悪者だとは思わない。
 しかしなんだかグルテンを抜いた食材ならいくら食べてもOKであるとばかりの勢いである。

グルテンフリーって? その1

2016年07月08日 06時15分31秒 | 日記
 巷では米国のモデルさんがグルテンフリーの食事にしてダイエットしたとか綺麗になったとかで、またぞろ日本の付和雷同的な雑誌メディアがこれに乗っかり持ち上げている。まっ、勝手にしなさい・・・というのが結論であるが、どうもグルテン自体が悪者になっているような評価のされ方である。

 もともとは小麦粉の中に入っているモチモチ感を出すたんぱく質である。あのモチモチ感はうどんやラーメンの歯ごたえのもとであるわけなのでこれは麺好きには命なのである。
 しかしたんぱく質なのであるからこれは過敏患者にとってはアレルゲン(アレルギーの原因物質)であり、ひどい場合はアナフィラキシーを起こすこともある。
 したがって、このようなアレルギーを持つ場合、小麦を含むものが摂れなくなるためこのグルテンフリーの食材が必要になるのである。

 つまり必要な人の絶対数は多くはないのであるが、今やスーパーにいくとグルテンフリー食材コーナーが作られており、ありゃ?こんなにグルテンアレルギーの人は多かったの?・・・と思うのであるのだが。

200錠で致死量? その6

2016年07月07日 05時57分44秒 | 日記
 古くは明治時代に旧制一高の藤村某が「曰く不可解」の辞世の句を残し華厳の滝に入水自殺した。
 また昭和の時代では女性アイドルタレントが、その絶頂期にビルから飛び降りて亡くなった。
 そしてどちらの時代にもこれに追随する後追い自殺が横行した。まさに横行という言葉がぴったりである。
 時に自殺とは人間が自分の意思で選択できる唯一崇高な行為などと美化されることもある。
 しかし観念的にかつ文学的に美化されたとしても、今の世の中では社会通念的および医療経済的には自殺は公序良俗に反するものと位置づけられている。

 とにかく人に迷惑をかけてほしくない。狂言自殺、あるいは致死量にも満たない眠剤服用などで医療機関に搬入されることこそみっともないのである。自分が子供の頃は、病院とは本当に助かりたい人だけが来るものだと思っていたのであるが・・。


200錠で致死量? その5

2016年07月06日 05時51分45秒 | 日記
 自殺未遂者に言いたい。実際自殺行為は公序良俗に反する行為なので保険診療の適用にはならず本来はすべて自費なのである(どうせはらえないので精神疾患名をつけて保険診療にすることは多いが)。
 それでその治療費は払えるのか?と問いたい。

 また致死量にも満たない眠剤服用で、もし救命センターにでも搬入されたらそうそう簡単には死ねないということもご理解いただきたい。
 意識がなければ気管挿管され(時に呼吸器がつけられることもあるが)、点滴でもされて数日後には「はっ、あれっ、ここはどこ?」と目を覚ますことになる。

 時に致死量に至らなくとも服用量が多ければ病脳期間短縮のため血液浄化をすることもある。
 そして退院時には、目の飛び出る様な治療費の請求書をみて、また生きる気力を失うのである。
 その方がつらいであろう。

 でも狂言自殺の患者さんをかかりつけの精神科にフォローをお願いしても、また「やって」くるのである。何回か救命センターにくる「おなじみさん」を診るたびこちらは無力感と寂しさを覚えるのである。

200錠で致死量? その4

2016年07月05日 06時08分22秒 | 日記
 こんなことがあるから、睡眠導入剤や睡眠薬は1か月以上の継続処方が認められなくなったのである。
 つまり同月内に何回か来院しても合算して一か月分以上は処方できなくなったのである(裏技的サービスで「倍量処方」という手もあるが)。

 しかしながらいい迷惑である。睡眠薬を希望されるかたは比較的高齢者が多い。
 時々寝られないといって数多く服用することもある。
 またあるいは「睡眠薬もらったがどこ捜してもみつからない。あれがないと夜一睡もできないので困る。追加で薬だしてくれ」と懇願されることも多いのである。

 「規則で眠剤は1か月分以上は出せないのです。紛失したというのは追加処方の理由にならないので出せません」と言うと
 「先生は、眠れない者の気持ちがぜんぜんわかっていない」などとトンチンカンな訴えでこちらを責めてくるのである。そういわれてもねー・・・。

 あんなものいくらでも出してあげてもいいのだが、これだけ自殺未遂者がでて事故や問題になっているのだから「私が患者に冷たい」と言われてもそれは困るのである。

200錠で致死量? その3

2016年07月04日 05時46分58秒 | 日記
 その個体の半数が死亡するといわれるLD50(50%致死量)ですら膨大な錠数である。
 でもそれでも50%なのである。
 マウス、ラットと人間との種差で反応性の違いはあるものの致死量にははるかに満たない。

 睡眠導入剤としか報道がないのでどんな薬剤かは不明であるが、たかだか200錠では深く寝てしまうだけでそれだけでは死に至ることはない。

 一般的に「高齢者や持病をもつ方はこの量でも死に至ることがある」と言うが、現場での状況次第である。深く寝込んで目が覚めない状態で脱水になりそのまま熱中症に陥ったとか、あるいは意識不明で舌根が沈下して気道閉塞で窒息死したとかの二次的な問題であろう。

 それにしても味噌汁を鍋に作り、そこに200錠入れたのである。そこからお椀1杯分の味噌汁を食したのであれば、実際の服用量は50錠くらいであろうか? とても死に至る量とは思えない。

 寝込んだところにプラスアルファで傷害を加えなければ死に至らせしめることは難しいと考えるのであるが・・・。
 容疑者は過去に2回自殺未遂の経験がある。おそらく自身の経験から200錠くらいでは死ねないことは知っていただろう。
 無理心中を装っているが、寝込んだところの夫の鼻と口を塞いで殺害し、自分はただ「寝てしまうだけ」の量の味噌汁を食し寝てしまう。表面上は無理心中のように見えるが、私の推理ではこれは立派な殺人事件と考える。
 警察も殺人事件としているようであるが当然だろう。

200錠で致死量? その2

2016年07月02日 06時11分18秒 | 日記
 別の報道では、「200錠もの致死量を超える睡眠導入剤を・・・」とあった。
 昔、自分は救急医療をやっていた。医薬品中毒の診療を経験をしたものであればすぐに気が付くはずである。
 それは「睡眠導入剤でたかだか200錠が致死量となるような薬物はない」ということである。

 救命センター在職時にいつも医薬品、特に眠剤関係の多量服用で意識不明の患者を診療した。現場に散乱した空パッケージを持参させ、その数から推測して服用した錠数を推定するが、過去に致死量まで服用した(できた?)人はほとんどいなかった。唯一、患者が薬剤師の方で致死量を自分で計算しそれに見合うだけの量を服用されてしまい、その方は救命できなかった。
 しかしその他の患者はすべて致死量にはるかに満たない量であった。

 因みにラットやマウスの致死量でしか資料がないのであるがLD50(50%致死量:その動物の半数が死亡する服用量)での判断である。人間あたりの体重(60kg)に換算すると、ハルシオン(0.5mg)で90万錠、デパス(3mg)で87000錠、コンスタン(0.8mg)で56000錠、ユーロジン(2mg)で22000錠、そしてリーゼ(10mg)で5700錠といった感じである。
 どうやったらこんなに飲めるの?・・・といった感じである。

200錠で致死量? その1

2016年07月01日 05時45分10秒 | 日記
 夫に多量の睡眠導入剤を混ぜたみそ汁を飲ませて殺害したとして、栃木県警捜査1課と小山署は6月13日、殺人の疑いで、同県野木町野木、無職、斉藤俊子容疑者(63)を逮捕した。
 県警によると、「一緒に死のうと思って(自分も)みそ汁を飲んだ」と供述、容疑を認めている。

 逮捕容疑は、平成26年8月10日ごろ、自宅で夫の無職、六郎さん=当時(71)=に、多量の睡眠導入剤を混入したみそ汁を飲ませて、薬物中毒で死亡させたとしている。同日午後9時45分ごろ、自宅別棟の窓から頭を出すようにして倒れていた六郎さんを散歩中の近所の女性が発見した。

 斉藤容疑者は「白菜のみそ汁に200錠の睡眠導入剤を入れ、飲ませた」などと供述している。斉藤容疑者もみそ汁を飲み、意識不明の状態で病院に搬送された。退院した13日午前、逮捕された。
 
 県警の調べによると、夫婦仲は悪く、斉藤容疑者は母屋で、六郎さんはプレハブの別棟で生活する家庭内別居状態だった。
 斉藤容疑者は精神科の通院歴があり、医者に処方された睡眠導入剤を「使いきった」などと嘘を言ってため込み、使用したとみられる。自宅からは約500錠分の空のパッケージが発見された。斉藤容疑者は事件前にも2度ほど自殺を図ったことがあるが、未遂だった。(ネット報道より)

 何だか怪しい感じがする。