六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

【詩のようなもの】起床と反省

2023-02-12 17:38:25 | ポエムのようなもの

目醒める
一日が始まる 始めなければならない

だが待てと 安逸の岸辺に押し寄せる反省の波・波・波
知っていたこと 知らなかったこと
知らないふりをしてきたこと 知ったかぶったこと

  

母の乳房を知らないし 父の抱擁を知らない
丘には蜜柑の花が咲いていたし 柱の傷はおととしからあった

戦争があって 竹林の下には防空壕
その闇を抜けると戦争はもはや痕跡となっていた
群れなす屍体と傷病 瓦礫の街と血染めの運河

やってくる進駐軍 その防波堤として動員された娼婦たち
注入される平和と民主主義のワクチン
効いたふりをして 経済の海へ漕ぎ出す人たち
それを鼓舞するいまや人間となったオオミカミ

    

快楽 快感 快挙 壮快 
失楽 失意 失敗 失禁

適度に名付けられ それをなぞるように走る
なんとかなるさ 行く先? そのうちに見えてくるはず

畜群・・・・誰が?
群れている他に安全などないだろう
群れに背くは危険分子
離れすぎたやつは抹殺すればいい

  

大丈夫 自分は外れてはいない
自分は 自分は 自分は と繰り返すたびに希薄になる
もはや影もできない あちこちから陽が射しすぎるから

振り返る? そんな無理なことは言いっこなし
どっちが前で どっちが後ろかわからないのに

隣であえいでいるのは 周回遅れの自分
置き去りにするしかない
邪魔な自分は どんどん脱ぎ捨てアップデイトだ

  

突然 別の群れに分類される 
老齢 前期 後期 要介護 寝たっきり
明日の自分 いや 今日の午後からかも


かくて 起床前のルーティン 形だけの反省は終わった
こうして始める一日 始める? どこから?
しまった 昨日の終りに栞を挟んでおくのを忘れた

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夢を言葉にしてみる 最近のものから二題

2022-11-13 14:41:02 | ポエムのようなもの

  
 
 ひとつ手前の駅でも もう・・・・

あまり人っ気のない電車のベンチシート
端っこに座ってたら 途中の駅から
淡い色のフード付きコートの女の子
ためらわず隣にやってきた

フードの中から見上げる
鳶色の瞳が瞬きもせずいう
オジサン センソウノ テマエノ 
エキマデ ツレテッテ

自分の行く先の ひとつ向こうの駅だったが
すぐ引き返せるからと 連れていった
そんな きれいな こーとでは
すぐ よごれて しまうよ

イイノ モウ センソウノ サキブレガ ヤッテキテ
ミエナイケレド ヨゴレテシマッテ イルンデスモノ

いっしょに降りたら
白い手を ひいらひいらさせて
少女は行ってしまった
硝煙の匂いが残ったようだ

引き返さねばと ホームへと急ぐ
七つの階段 昇ったり降りたり
四つの地下道と三つの高架 行ったり来たり
ホームには行き着けない

着ていた衣服に 染みができた
どす黒い不定形な 模様が 浮き出る
胸にも 袖にも 背中にも 拡がる
汚れ よごれ ヨゴレ YOGORE

センソウが電車に乗ってここまで来たのか
センソウを乗せてきた電車の
運転席の運転手 指差し確認怠りなく
発車オ~ライッと 朗々と叫ぶ

ああその声ときたら こんなにしゃがれる前の
若かった頃のあの声 まぎれもない私のあの声
♪あああああのかおであのこえで
https://www.youtube.com/watch?v=uGv7yjSH3Fc&t=52s


  
 
 繭からは出たけれど

サア ワタシトスモウヲ トルノヨ
黒いシャツに白い短パンのきなこが言った
行司はかんざぶろ
スピルバークの描く未来人のようにスリム

昨日まで 薄い褐色の 繭のなかにいた
出してくれ といったら 二人が出してくれた
思い出した そのとき約束したのを
出たら きなこと相撲をとるのだった

四つに組んでも 掴みどころがないきなこ
少し引いたので ここだと右足を出したら
柔道の 内股のような技で
背中から ドスンと落とされた

コレデ アナタハジユウヨ サアユキナサイ
行きなさいって とくに宛もないし
いっしょに いさせては くれないか
きなことかんざぶろ 顔を見合わせる

デキナイワ ワタシタチニハ ニンムガアル
きなこは 周りを指し示した
そこは キウイの畑のように
多くの繭が ぶらり~っと垂れ下がっていた

コレヲ アケルノガ ワタシタチノニンム
デテキテ スモウニ マケタラ
ココカラ タビダツノガ アナタタチノサダメ
二人は 霧の立ち込めた 彼方を指差す

もし 相撲に 勝っていたら と私
ワカラナイワ ワタシマケタコトガ ナイカラ
かんざぶろも ぎょうぎょうしく うなずいた
旅立つしか なさそうではないか

歩を進めると 昨日まで入っていた繭が
修復されて また ぶら下がっていた
なかに 入っていたのは 
胎児のように 背を丸めた かつての私

単純な セオリーで 編まれている繭
全部が わかってしまう 安心の繭
しかし それは 偽りの 安心
変わりゆく 現実に 嘲笑される安心

去ろうとする私に
かつての私は すねたように 微笑む
自由への恐怖って むかし きいたろ
1950年代の 後半だっかな・・・・

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不眠の不眠による不眠のためのファンタジア

2021-09-13 15:12:54 | ポエムのようなもの

 むかしの修学旅行用の大広間か
 研修場付属の合宿所のようなところで
 数十人が雑魚寝をしていた
 私の褥は一番端っこ
 どういうわけか黒いワンピースの
 女性と同衾していた 着衣のままで
 近すぎて女性の顔はよくわからない
 そっと抱擁してみると
 しがみつくようにぐっと抱きしめられた
 が 次の瞬間 さっと身を翻し
 布団の傍らに立ち 私を見下ろすと
 「私、出かけなきゃならないの」
 と、ちょっと気だるい声でいった
 「ああ、そうだったねぇ」
 彼女のワンピースは 黒一色ではなく
 コバルトの模様が入った斬新なものだった
 そのワンピースの裾を翻し 彼女は去る

 
 
 隣の布団には 制服を着たままの
 女子高生とその母親が寝ている
 布団の隅から瞳だけ出すようにして
 「寂しくないの」と女子高生
 母親は寝たふりをしている
 「う~ん そうだなぁ」と しばしの間
 やがて 思いつく限りのイギリスの
 古い詩を口ずさんでみた
 「その詩は?」と女子高生
 トラファルガー広場の黒いライオンが
 教えてくれた詩さ と私は遠い目

 
   2018年8月 ロンドンにて

 建物の外へ出よう と思った
 大きな引き戸の傍らには
 屈強な男たちが 見張るように立っている
 勝手口のような小さな扉の方を開ける
 むかし 学生食堂にいたおばさんがいた
 「おや こんなところに」
 「ハイ お世話になっております」
 外からのしわがれ声
 「今日の野菜 ここに置くよ」
 祖父の声のようだったので
 慌てて出てみる
 大八車が斜めになって止まってるが
 人影はない

 

 川べりの道を歩く
 なにかが水のなかでうごめいている
 ん あれはヌートリア
 少し泳いでは振り返り また泳ぐ
 物心ついた時 隣の用水で飼われていた
 あの時のつがいの 子孫だ きっと
 だから 私を知っているのだろう
 たしか 軍部の要請で飼われていたはず
 あまり馴れ馴れしくしないほうがいい
 視線をそむけて歩いていたら
 いつの間にか川は 暗渠になっていた
 暗渠の下で すっかり退化し
 白い肌と赤い目をもつ水棲動物たち
 彼らの反乱の企てに耳を澄ませる

 

 月光仮面のように白いマフラーをなびかせた
 派手なバイクが 追い抜きざまに 止まる
 「テンペリアウキオ教会はこちらでいいのかな」
 丘のてっぺんを削り取ったような教会
 知っている しかし初めて行った時
 道がわからず とても遠回りをした
 その遠回りした方の道を教える
 あの教会で聴いたバッハは
 自動オルガンのものだったろうか
 出口の前の土産物売場には
 ムーミンのキャラが並んでいたっけ
 丘のかなり下をよぎるトラム

 
   2019年8月 ヘルシンキにて
 
 「否応なしに迫る死の瞬間」と
 どこかに無造作に書かれていた
 死が迫るのか 瞬間が迫るのか
 迫る方と迫られる方の共同作業で
 死が完成するのだろう きっと

 また川沿いに出たけれど
 もうヌートリアはいなかった
 すぐ目の前を 私をリードするように
 アオスジアゲハが一頭 ひらひら舞い始めた
 黒い翅に鮮やかなコバルトの模様
 そう 私が同衾していたのは
 このアオスジアゲハだったのだ

 こうして私の循環は閉じられた

 
  2019年11月 沖縄平和祈念公園にて
 

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コロナと共生(?)した夏の想ひ出 奥美濃訪問

2021-09-02 01:33:08 | ポエムのようなもの

 夏の終り 一房の葡萄と向き合っっている
 赤紫の果実の周りの白い粉 ブルーム
 果実を守り その鮮度を保つ働きとか
 私の周りにも ついてほしいものだ
 うまそうだといって 食べられてしまうかも

       
       
       

 八月の初め 岐阜県のコロナ感染者は
 ありがたいことに 連日 一桁
 これで収束したとは 思わなかったが
 小康状態であることは 明らか
 近所のサークルで 奥美濃ひるがの高原付近へ

       
       
       

 ここひるがの いまは有数のリゾート地だが
 かつては蛭がうじゃうじゃいた湿地帯
 だから「蛭ヶ野」 今も正式な地名はこれ
 いまはすっかり 開拓され 
 観光客に 印象悪いと 「ひるがの」

       
            

 切り拓いたのは 戦前からの
 「蛭ヶ野大日開拓団」
 大日とは 近くの 大日ヶ岳のこと
 戦後それに 満蒙開拓団の
 帰還者たちが加わり 大陸で果たせなかった
 夢の続きを 再開した

       
       
       
            道の駅で買った 648円 美味しかった

 開拓団を起草した 辻村徳松氏の遺詠
 「いざ友よ 共に築かむ
  日留ヶ野(蛭ヶ野)に
  乳と蜜との 流るる里を」
 乳は酪農 蜜は養蜂か
 あるいは 一般的な豊かさの象徴か

       
       
       

 開拓の結果の 今のひるがの「三白」
 ブランドの ひるがの高原大根
 やはりブランド ひるがの高原牛乳
 大日ヶ岳と鷲ヶ岳、ひるがの高原スキー場
 この三つの白が 四季 人びとを招く

           
       

 春の花 夏の涼しさ
 秋の紅葉 そして豊かな雪の贈り物
 もう 蛭の姿は見えない
 あちこちに 水芭蕉が 群生し
 白樺のほとりを 流れる渓流
 躍動する イワナ アマゴ

       
       

 四季折々 家族連れなどで賑わう
 リゾート施設も あちこちに
 でも今回 やはり蜜は 避けて
 個別に分かれた 里山の散策 
 マスクはいらない 山を駆け下り
 美田を揺らす 風が 爽やか

       
       

 野鳥のさえずり 側溝の水の音
 遠くで作業する人の 草刈り機のモーター音
 後は 私の足音のみ
 少なくとも ここにいる間は
 コロナ云々 とは無縁でいられる

       
            
       

 まだ 日の高いうちに 岐阜に戻ったら
 どっと 猛々しい暑さが
 あっ ここにはコロナが いそうだ
 空気の重さ 色合い 味わいが違う
 慌てて 蟄居モードへ スイッチオン

           
       

 一房の 葡萄を前にした 夏の終り
 おずおずとしか 外界との接触がない 二年間
 晩年の この年月は いかにも惜しい
 もう 足腰が立つのも 僅かな間なのに
 一房の 葡萄に託した 私の 夏の 夢の 終り

 詩ではありません。ただの言葉の繋がり。

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ウチナンチュウの「楕円のハアト」が届いた!

2021-08-04 23:30:13 | ポエムのようなもの
 ハアトはどんな形?
 クリの頭にくびれができたような形?
 本当にそうなの?
 
 あんた、虹は七色だと思ってるでしょう
 それって少数派で、三色から十数色まで
 民族や地方によっていろいろなんだよ

 

 ハアトだってそう
 ぼくんちへ届いたのは楕円形のそれ
 しかもふたあつも

 これはウチナンチュウのハアト
 ぼくと心通うひとの完熟のハアト

 沖縄 それはぼくには禁断の地だった
 一億総玉砕で本土決戦をと豪語していた
 軍国皇民少年だったぼく

 でもぼくは天皇裕仁とともに生き延びた
 しかしその間に、ウチナンチュウの
 四人に一人が戦禍の生贄となった

 そんな島へ物見遊山に行けるか?
 ぼくにはその資格はない
 所属する会の旅行でも参加はしなかった



 それを認めてくれたうえ鎮魂の旅に
 招待してくれたのがおりざさんだ
 そして伊勢の国の夫妻が同行してくれた

 そんなわけで沖縄の地を踏んだのは
 一昨年の秋
 もちろん風光明媚な南の島
 物見遊山を全く外すことなんかできはしない
 近場の淡いブルーの珊瑚礁の海
 その沖合の紺碧に光り輝く広がりと水平線



 本土の森林地帯とはまったくちがう植生で
 したがってその色合いも違うヤンバルの森
 咲き乱れるハイビスカスとブーゲンビリアン
 ザワワと揺れる背高のっぽのサトウキビ



 だが、そのどこもが過去の、そして今の
 戦の痕跡を宿している
 赤茶けた土で埋め立てられる辺野古の海
 埋め立てに使われるその土は
 沖縄戦の遺骨が混じる激戦地からのもの
 かくして死者は二度殺される



 ヤンバルの森に潜むのは
 あのヤンバルクイナのみではない
 そこにある米軍のヘリポート基地から
 飛び立つヘリは人家近くに不時着する



 背高のっぽのサトウキビ畑を
 かき分けるようにして下ると
 昼なお暗き洞窟がある
 投降を許されないまま住民たちが
 親が子を、子が親を殺すという
 集団自決に追い込まれた
 あのチビチリガマが

   
 
 さつまいものユルキャラ「いもっち」が
 笑いかける「道の駅かでな」の屋上からは
 人間の視界では全貌を捉らえきれない
 広大な「アメリカ」が広がっている 



 ここでは物見遊山への専念は困難だ
 指折りの観光スポット・美ら海水族館から
 円錐形の美しい島・伊江島が見える
 ここは戦時中の激戦地だが悲劇はさらに続いた
 敗戦後三年の千九百四十八年八月六日
 この島の桟橋で弾薬を積んだ米戦艦が暴発し
 折から桟橋にいた一〇七名を死へと巻き込んだ


 
 最後の激戦地、糸満市摩文仁の丘に広がる
 沖縄平和祈念公園
 黒い御影石に刻まれた二〇万を数える死者たち
 一見、白い文字の無数の塊なのだが
 そのひとつひとつに物語があったのだ



 これらすべてが、ぼくが沖縄で見たものだ
 これを可能にしてくれたのが
 沖縄在住のおりざさんの案内であり
 同行してくれた伊勢の国の夫妻だ

 なお、おりざさんは、昨年の夏
 自作の詞による歌「祈り…命どぅ宝」の
 唄い手としてデビューを果たした

 おりざさんはハアトフルな人である
 だからそのハアトは並の形ではない
 完熟の楕円形 しかもふたあつ
 これがウチナンチュウのハアトだ

 それがぼくのもとに届いた
 ぼくのギザギザハアトを優しく繕い
 生き続けることを応援してくれるハアトだ
 
 ありがとう! おりざさん!
 

 https://www.youtube.com/watch?v=wwjb8wChELA
  FMラジオでの収録風景 収録の模様がわかって面白い
 

 

 
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無題

2019-09-22 17:36:25 | ポエムのようなもの
 

 初々しい恥じらいに
 赤く染まって昇った朝日
 夕べともなれば
 人の所業の愚かさに
 怒りに染まって沈む

 われらが父母の世代は
 朝夕のお天道様に
 掌を合わせ崇拝したものだ

 朝はその初々しさに感嘆し
 夕べはその怒りを鎮めるために

 明日もまた陽が昇るとは
 限らない
 怒りのあまり
 昇らなくなることだってある

 だから朝日は有難いことなのだ
 そして夕日は
 明日の再見を念じながら
 心して見送らねばならないのだ

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漂泊 譚(いわゆるひとつの詩のようなもの)

2015-01-13 16:10:11 | ポエムのようなもの
   

    「漂泊 譚」 

    しょせん漂泊する身であれば
    自分が何処にいるのかも定かではない
    四囲を見渡し
    山があれば山を巡り
    川があれがそれに従う
    しかしやがて道は失われ
    行方は暗く閉ざされる

    そして悟る
    それが漂白なのだと

    しょせん漂泊する身であれば
    いまがいつなのかもさだかではない
    天空を覗い
    星辰の運行を数え
    月齢の示すを読む
    しかし一陣の嵐が来たり
    時は不可視の彼方へ去る

    そして悟る
    それが漂白なのだと

    かくて漂白は大いなる空疎 
    あるいは絶対の自由
    この身を繋ぐ根拠ももたず
    点滅するいくつかの記憶を抱いて
    荒野の真っ只中をゆく

    われはエル・トポ 砂漠の土竜
    ツァラトゥストラの子にして
    デュオニソスの末裔

 
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紅梅と落書き

2014-03-01 23:30:37 | ポエムのようなもの
 亡父が遺した鉢植えの紅梅が花をつけはじめた。
 昨年は数個の実をつけたが今年はどうだろう。

   

 以下は全く関係がない落書き。


 
 「なぜ そしてどこへ逃げるのですか」
 まただ もういい加減うんざりする問いだ
 
 
 無造作に使い続けきた言葉のなかから
 もう使わないと決めたものに目印を付けた
 捨てるものには真っ赤なタグを
 迷ったものには そう 虹色のそれを
 
 その日から私の歌はスカンと空疎
 メロディのない言葉と言葉のないリズムが
 思いがけなく交差しねじれる
 もう歌わないほうがいいのだろう たぶん 

 しきりにどこかから呼ばれる気配がする
 振り返ると葬ろうと決意した言葉たちが
 見え隠れしながらついてくるではないか

 さっと身を翻そうとした奴の
 えりがみをとっ捕まえてよくよく見たら
 「取扱注意」とある しかも私の筆跡で

 慌てて手を離したのだが遅かったろうか
 「ざまあみろ」が輪唱のように拡散した

 
 だから今日も問い詰められている
 「なぜ そしてどこへ逃げるのですか」
 声を荒らげないまでも必死で答える
 「逃げてはいない 遠ざかっているだけだ」

 
 
   
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「カレー屋さん?」それでもいいか・・・。そうしておこう。

2013-12-16 14:24:25 | ポエムのようなもの
 カレーをつくろうとして紙袋に玉ねぎやら人参やらじゃが芋を詰めたのをふたつ抱えて歩いていると、若い娘が短パン姿で柔軟体操をしていた。とても健康で明るそうなので、つい、「ほらほら、もっと足を伸ばして」といってしまった。若い娘は「アハハ」と笑っていたので、軽く会釈をして通りすぎようとしたら、その拍子に紙袋から玉ねぎが一個転がり落ちてしまった。
 しゃがんで拾おうとしたが、肋骨の損傷のため巧く拾えない。その娘が飛んできてくれて拾ってくれた。そしてついでに袋の中を覗きこんで、「おじさんちってカレー屋さん?」と尋ねる。「あ、いやまあ、そんなようなものかな」と曖昧に返事をすると、スキップをしながら私と並行して歩き出した。「ねえ、ねえ、今度おじさんちのカレー屋さんにお母さんと一緒にいってもいいかな」という。 実のところ、カレー屋さんではないので、少し当惑したが、こんな明るい娘がその母親と訪ねてきて三人でカレーを食べるのも悪くはないなぁと思い、「うん、いいよ、いつでもいらっしゃい」と答えると、「やったぁ~」といかにも健やかそうに腕を突き出してぴょんと跳ねた。


               

 そこで目を覚ましたのだが、目覚まし時計をセットし忘れていて、予定より寝過ごしてしまったことに気づいた。それにしてもなんという夢か。回春への欲望なのだろうか。その娘の健康そうな肢体は思い出せるが、どんな顔をしていたかはさっぱり思い出せない。
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【チャレンジ】短歌もどき試作 十三首

2013-12-05 01:43:47 | ポエムのようなもの
 ほとんどはじめての試みです。写真は、12月3日、夕暮れ時。

          

     ふたたびは逢うか逢わぬかやじろべえ傾く方から一歩退く

     ハンカチの対角線にある寡黙時間がコトリ落ちゆく波紋

     気が抜けたビールのように笑えますほろ苦き澱咀嚼しながら

          

     沈黙のかたちを満たすコップ酒ゆるゆると飲みゆるゆると酔う

     ざっくりと無想の鎌で刈る草を横たえている墓標のごとく

     夜削る鉛筆は鋭く尖れかし自分史記す小さき字のため 

          

     自分史をつつけば赤い不発弾マニュアルなくし錆びゆくままに           
     
     匿名に包囲されてるわがブログ非国民とのコメントが付く

     不都合な星を墜として生き延びた四分の三世紀なおも曲折

            

     自画像に塗れない色が多すぎて結局残るへのへのもへじ

     出てほしくない星も出る地平線私はいつも出遅れた星

     ショスタコの五番はやはりレクイエム若きあの日の私のための

     世の中をはらりと見せる観覧車回ればきりり軋む感傷


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