私は1944年から6年間を疎開先の大垣市の郊外で過ごした。そしてそこで、翌年春、国民学校(今の小学校)へ入学した。その時の同級生で、優等生の男の子がいて、その子と仲良くなった。
5年生でその地を離れ、岐阜へ戻ったが、彼とは文通をしたり、時には逢ったりもしていた。そしてなんと、名古屋での大学が一緒で、しかも学部やクラスまで一緒になった。
ただし、その間のお互いの過ごした過程での違いもあって、別に仲が悪くなった訳ではないが前ほど親密ではなくなっていた。
卒業をして別々の道を歩んだが、小学校で5年間を共に過ごしたということで、疎開先の小学校の同窓会員扱いにしてくれ、毎回、呼ばれた。同窓会長は優等生だった彼であった。
最後に出席した同窓会はもう30年ほど前で、それ以降は逢っていない。年賀状のやり取りも最近ではなくなった。まあ、お互いに音信不通になったわけだ。
今日、偶然、少し若い大垣の同郷の人と逢った。そこで、かの優等生について尋ねると、なんと、日取りははっきりしないが今年になってから他界したという。私と同年だから、享年86歳だ。
近年は親しくしていたわけではないので衝撃は少ないが、ただ、死を迎えるまでの何年間かの彼の暮らしぶりを知って驚愕した。
あまり詳しくは書きたくないが、あの優等生で、私より遥かに静かだった彼が、ようするに昼間から酒を飲んで近辺を徘徊し、最後は行き倒れ同然になって自分での帰宅もままならなかったことが日常だったという。
あのおとなしい優等生に何があったのだろう。
単にアルコールの誘惑だけだったかも知れないが。
私も、酒好きでは人後に落ちないが、昼間から飲むことは避けている。
いずれにしても、80年前に知り合った友、改めてその冥福を祈りたい。