六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

八〇代なかばへ 誕生日の図書館通い

2022-10-30 01:45:17 | よしなしごと

 10月26日誕生日。84歳だって。思えば遠くに来たもんだ。
 敗戦時、国民学校一年生。早く大きくなって兵士として天皇のもとへ馳せ参じたいと思っていた。「大君の辺にこそ死なめ」だ。
 以来、約80年、天皇は三代変わったが私は今も生き延びている。自分が入る棺桶とは至近距離でありながらもだ。

  

 終活などは最低限であえてちゃんとしようとは思わない。生まれたときもとりわけ準備をしてきたわけではあるまいし、死ぬときだってヒョンと終えればいいだけだ。自分では野垂れ死に願望といっている。

  

 それらは子供二人にもいってある。ちょっとした知人たちへの「死んだよ」という知らせのほかはなんにもいらない。あとは子どもたちが判断すれば良い。なんにもしなくっても一切構わないし、「世間体」とやらに気遣って何かをしたいのならそれでもいい。

 こんな言い分自体が子どもたちを縛るのかなという思いもある。しかし、その判断をするとき、既に私というものはいないのだから、いわば「後は野となれ山となれ」だ。
 なんてことをさほど真面目に考えているわけでもない。

         

 県立図書館へ行く。借りていた三冊を返し、新たに四冊を借りる。ここの返却期限は三週間だ。かつてはもっと多くの書を借りていたが、今はこれぐらいが限度だ。なかに、ノートを取って精読なんてのがあると、それだけで大変だ。

 今回借りたうち、一冊はノートを取りながらになるであろう。逆に一冊は、資料になりそうなところを探す斜め読みの対象だ。しかし、「う?」と立ち止まったらノートを取る。そうすれば四冊を三週間は怪しくなる。

  
付帯レストランのガーデン かつては結婚披露宴なども行われたがいまはやや荒れている

 ただありがたいことに、私の借りるものはあまり一般的ではないので、殆どの場合、読みきれなかったものの借り継ぎができることだ。
 しかし、ごくたまに、「これは予約の方が入っているので返却願います」と断られることがある。そんなときは、「おう、あなたもこれを学んでいるの」とエールを送りたい気持ちになったりする。

       

 といったようなわけで、八〇代の中頃に差し掛かったわけだが、引き続き、この図書館にはお世話になるつもり。

    写真はいずれも岐阜県図書館付近。

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八〇代なかばへ 誕生日の図書館通い

2022-10-30 01:45:17 | よしなしごと

 10月26日誕生日。84歳だって。思えば遠くに来たもんだ。
 敗戦時、国民学校一年生。早く大きくなって兵士として天皇のもとへ馳せ参じたいと思っていた。「大君の辺にこそ死なめ」だ。
 以来、約80年、天皇は三代変わったが私は今も生き延びている。自分が入る棺桶とは至近距離でありながらもだ。

  

 終活などは最低限であえてちゃんとしようとは思わない。生まれたときもとりわけ準備をしてきたわけではあるまいし、死ぬときだってヒョンと終えればいいだけだ。自分では野垂れ死に願望といっている。

  

 それらは子供二人にもいってある。ちょっとした知人たちへの「死んだよ」という知らせのほかはなんにもいらない。あとは子どもたちが判断すれば良い。なんにもしなくっても一切構わないし、「世間体」とやらに気遣って何かをしたいのならそれでもいい。

 こんな言い分自体が子どもたちを縛るのかなという思いもある。しかし、その判断をするとき、既に私というものはいないのだから、いわば「後は野となれ山となれ」だ。
 なんてことをさほど真面目に考えているわけでもない。

         

 県立図書館へ行く。借りていた三冊を返し、新たに四冊を借りる。ここの返却期限は三週間だ。かつてはもっと多くの書を借りていたが、今はこれぐらいが限度だ。なかに、ノートを取って精読なんてのがあると、それだけで大変だ。

 今回借りたうち、一冊はノートを取りながらになるであろう。逆に一冊は、資料になりそうなところを探す斜め読みの対象だ。しかし、「う?」と立ち止まったらノートを取る。そうすれば四冊を三週間は怪しくなる。

  
付帯レストランのガーデン かつては結婚披露宴なども行われたがいまはやや荒れている

 ただありがたいことに、私の借りるものはあまり一般的ではないので、殆どの場合、読みきれなかったものの借り継ぎができることだ。
 しかし、ごくたまに、「これは予約の方が入っているので返却願います」と断られることがある。そんなときは、「おう、あなたもこれを学んでいるの」とエールを送りたい気持ちになったりする。

       

 といったようなわけで、八〇代の中頃に差し掛かったわけだが、引き続き、この図書館にはお世話になるつもり。

    写真はいずれも岐阜県図書館付近。

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この時期の昼麺二題

2022-10-25 14:36:50 | フォトエッセイ
 
 やはり山かけそばは秋が似合うなぁ。夏場は冷麺で食べるけど。薬味にはネギ、大葉、ミョウガのみじん切り、すりごま、切り海苔。ミョウガはあとストック三個で今シーズンは終わりか。
 
 もう一品は肉うどんとケツネうどんの合体。肉は昨夕餉の豚の甘がら炒めの残り物。ネギはやや火を通しすぎたか。
 
 ひやむぎをストックしていた箇所が空いていて淋しいので、きしめんでも仕入れるかな。

 

 
 
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ちょっと嬉しかったバッタの話 【付】イギリスの政変

2022-10-23 00:42:18 | フォトエッセイ

 うちの洗濯干場の付近で、二種類のバッタを見かけてスマホで撮った。
 一種は見た通りのオンブバッタ。オンブバッタは通称だと思って調べてみたら、れっきとした和名だという。

       
 
 形態はショウリョウバッタに似ているが、それより小型で、名前の通り、交尾時以外でもやや小さいオスがメスの背中に乗っていることが多い。
 これは最近でもよく見かける。
 
 もう一種はやはり小型のバッタで、最近ほとんど見かけないので、もしやと思って図鑑で検索したら、やはりイナゴのようだ。


 
 五〇年以上前、ここに住み始めたころ、うちは田んぼに囲まれていた。そしてその田んぼには、イナゴが数多く棲息していた。イナゴの習性は面白く、見つけて獲ろうとすると、稲の茎をくるくると回ってこちらの視覚の反対側へ移動する。まるで、自分から見えなくなると相手も見えなくなるかのようなふるまいだ。だから、稲の茎を包み込むように手を伸ばして掴むと容易に穫れる。

 獲ったイナゴは袋に入れて一日ほど吊るしておく。すると、そこで糞を排泄して体内がきれいになる。
 頃合いを見計らって、熱湯などで息の根を止め、ぴょんと飛ぶための太い後ろ足と翅をむしって取り去ってから調理する。
 
 調理は、フライパンで炒って甘辛醤油を絡める、あるいは佃煮にするなど。または唐揚げにしてもいい。それらを数回作ったことがある。
 
 しかししばらくすると、農薬の影響だと思うが、田んぼでのイナゴはほとんど絶滅した。稲をよく観察しても、いまや彼らの姿を見ることはない。かつては、田んぼの傍らを通りかかっただけでうるさいくらい足元からピョンピョン跳び立ったのに。
 
 おそらく、田んぼ以外のところでほそぼそと生き延びているのであろう。そのうちの一匹が私の目に止まったのだ。もう獲って食べようとは思わない。農薬に負けず生き延びよとエールを送るのみだ。

【付】イギリス政変 トリクルダウンの失敗

 イギリスのトラス首相が、就任後わずか44日で降ろされた。いろいろ要因はあろうが、最大の失敗は富裕層への減税政策、つまりトリクルダウン方式への批判だという。
 
               
 ところでわが国は、アベノミクス以来、この大企業や富裕層への薄い税負担、つまり、トリクルダウン方式を取り続けている。岸田の「新資本主義」もこれを改めることはない。
 連合中心の労働運動もそれを問題とする気配はない。
 イギリスでは、このトリクルダウン方式に反発して、世論調査では労働党支持が跳ね上がり、保守党に対してダブルスコアの大差をつけているという。
 トリクルダウンに忠実に従う日本、それに反発するイギリス・・・・やはり民度の違いだろうか。

 

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「ものくるる朋の情けや深き秋」(川柳) 付:辛口の一言

2022-10-21 15:51:39 | よしなしごと
 10月20日、運勢によればさしていい日ではなかった。金運も、恋愛運も、そしてその他の運勢も。ま、そんなもんだろうと覚悟を決めて過ごそうとしていた。

 午前中、宅配便がやってきた。
 六十数年前からのお付き合いのまさに朋輩といえる人からのもので、中身は私の口中から胃の腑までを射抜く日本酒であった。

        

 名古屋市は緑区の山盛酒造「鷹の夢」の二本セットで、うち一本は富山県産の五百万石を使った純米酒(私の好きな酒のタイプです)と、もう一本はALL NAGOYA の純米吟醸酒。
 この後者は、東京のIT 企業に勤めていた六代目が日本酒の魅力に目覚め、家業を継ぐ決意をして後、自ら企画したプロジェクトによるもので、その酒米からすべてを名古屋のもので取り揃えた酒。酒米は名古屋産の「夢吟香」、酵母は名古屋食品工業センターで培養された「FIA-3」を用いたとのこと。

 純米酒の方は、来週中頃のわが84歳の誕生日に開栓しようかな。そして純米吟醸は正月用か。
 Yさんに深謝することしきり。

 さてやはり20日の午後のこと、今度はいつも釣果のおすそ分けをいただく釣り名人からやはりいただきものが。いただくだけでありがたいのだが、すぐ調理できるようにウロコ取りなど必要な下ごしらえがしてあるのがさらにありがたい。
        

 今回頂いたのは、ウマズラハギとサワラ(サゴシ)、それにチカメキントキという魚だ。最後のものは、スーパーあたりにはまず出ない魚で、私自身もその名は知っていたが、身近で見るのも、したがってもちろん口にするのもはじめてだ。

 とても一度には食べ切れないので、夕食にウマズラとサゴシの造りをいただく。サゴシは皮目を炙った造りにする。なお、ウマズラとチカメキントキの肝がサランでくるんで添えられていたので、それらに熱湯をかけ、すぐに冷水にとって少し〆る。こうするとダラッとした肝が形を整え、少ししまりが出てより美味しくなる。
   

 ウマズラとサゴシの中骨はあっさり味のあら煮にする。骨についた身は美味しい。
 チカメキントキは翌日の楽しみとする。

 こうして、当初の占いにもかかわらず、いい一日になった。
 もっとも恋愛運、金運には恵まれなかったが・・・・。
 いや、待てよ、モノくるる朋がらに恵まれているということは、金運に恵まれていることかな。「金運」とはモノに恵まれることの資本主義的な表現に過ぎないのだろう。きっと。
 

 酒と肴にボケてはいるが、一方、ちょっと辛口のことも。以下は、やはり昨20日、とあるSNSに載せた一文。

【その思想において一致しているのだ!】自民党は、旧統一教会の危険性への認識が甘かったので、一部の議員が不注意にもそれとの関わりを持ってしまった、今後はそれと絶縁するということで逃げ切ろうとしている。

 野党の追求は、いや、その関わりはもっと広範囲で深いだろうといった点でのものが多いが、これでは全く不十分なのだ。

 なぜ旧統一教会は自民党に接近してきたのか、また自民党の多くの議員などがなぜそれを受け入れたのか。それは単に、選挙の応援が欲しかったといった利便性によるものだけでは決してない。

 その当該議員たちの一部は、不勉強だから本当に旧統一教会のことを知らなかった可能性もあるのだが、それらをも含めて、とくに自民党が旧統一教会と癒着した最大の要因はその思想的な類縁性によるものであることをはっきりさせなければならない。

 

 男女の結びつきのはじめから(合同結婚式)そこで形成される家庭に至るまで、教父の差配で執り行われる家父長的イメージは、まさに、自民党の抱く家族観、国家観と深い親和性をもっている。教会が、「父母」とか「家庭」をキーワードにするのも、そうした信念に根ざしている。

 また、日本神道以外で憲法改正を訴える宗教も珍しい。

 だから、旧統一教会と自民党の癒着はそのきっかけにおいては様々な偶然を含むとしても、それをも貫いて必然的にしてかつ確信犯的な結合なのだ。

 安倍はまさにその真っ只中にいて差配をしていたし、死者をかばうふりでそれを不問に付そうとする岸田もその追随者たることは明らかだ。

 

 
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死ぬにはちょうどの頃合いなのだが・・・・

2022-10-19 02:52:01 | よしなしごと

      

 私は蓄財というものを試みたことがないので、いわゆる有価証券類はまったくもっていない。
 預貯金は、80代(もうすぐ半ばに差し掛かるが)を生き抜くぐらいはなんとかある。
 子どもたち(二人)に残せるものがあるとしたら生命医保険だ。しかも、何社かに入っている。
 
 なぜそんな事になったかというと、居酒屋経営時代、何社かの生命保険会社が、顧客だったからだ。彼らは、正社員(男性)がいわゆる「保険のおばさん」といわれる複数の女性外交員を連れて来てくれる団体客で、結構売上に貢献してくれた。
 何回か来てくれるうちに、必ず保険への勧誘があった。景気も良かったし、消費してなくなる金でもないからとホイホイとそれらに応じた結果、何社かへの加入となった。
 
 もう、居酒屋家業もやめて何年も経った頃、ある会社が保険の見直し(入院保証付きだったかな?)で、これまでのものからドル建てのものへの変換を勧められた。
 そうしたことに疎い私は、長年の付き合いだから悪く転ぶことはあるまいとそれに応じた。その折の円相場は1ドル108円であった。
 
 それが今、1ドルは150円に迫りつつある。ということは、私がいま死ねば、子どもたちが受け取る保険金は、1ドルにつき42円のプラスで、おそらく契約時の30%以上のアップになる。
 まさに「死ぬにはちょうどの頃合い」なのだ。いま逝ったら、貧しい父が、子どもたちに残せる最高のプレゼントになる。
 とはいえ、自殺するつもりはない。いまもし、なんかの拍子でころっと逝ったら最高だなと思うのみだ。
 
 しかしながらだ、にもかかわらず最近行った健康診査の受信結果では、医師もお墨付きの「これといった異常はありません」なのだ。
 古人いわく、「憎まれ者世にはばかる」だ。
 
 写真は近所で写したもので内容には関係ありません。

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『ニホンジン』が地球の反対側で辿ったもう一つの歴史

2022-10-15 16:35:42 | 書評

 『ニホンジン』というタイトルの小説がある。書いたのはガイジン(この言葉にはある種の違和感があってあまり使わないが)だろうか。「?」である。では、ニホンジン自身だろうか。これまた「?」である。
 ニホンジンでもないガイジンでもないとしたら宇宙人か。そんな訳はない。

         

 種明かしをしてしまうと、著者は日系三世のブラジル人作家で、1910年代にブラジルへ移民した日本人一家とその子供の世代、そしてその孫の世代である自分自身のアイディンティティに関わる問題を書いているのだ。こうしてこの書は前世紀末にまで及ぶ三代にわたる物語で、200ページほどの小説でありながら、構成としては大河小説の趣を持つ。

 初代は日本での貧困を逃れ、出稼ぎのつもりでブラジルへ出かける。ある程度蓄積できたら、できるだけ早く帰国し、残してきた父母を楽にさせてやりたいぐらいのつもりなのだ。彼らは、礼儀正しく、勤勉で、彼の地でも高い評価を得る。
 しかし、農業資本のもとでの労働の対価は、月末には同じ資本が経営する食料や日用雑貨の売店への支払いに吸収されてしまい、手元にはいくらも残ることはない。したがって、短期間に財を成して帰国できることが夢物語であることを知らされることとなる。
 

 それでも、ブラジルは仮の住まいだとしてポルトガル語を覚えたり、ブラジル人やイタリアなど他国からの移民と積極的に交わることはしない。それどころか、黒人などに対してはあからさまな差別意識すらもっている。

               

 二代目になると事情が変わってくる。ものごころついたときから日本以外の言語や風物の間で暮らし、どこかで、自分がハイブリッドな存在であることを意識している。
 

 したがって、ブラジル社会や他の移民たちとも積極的に交わり、とりわけ結婚などでの積極的離反を志す者も出てくる。一世のなかに深く根付き内面化されている「大日本帝国」は、二世にとっては何かしら外在的なものに過ぎない。

 それらは個的には二世の進路や結婚を巡っての問題だが、それがそうした個の問題にとどまらず、日本人移民社会全体を大きく揺るがす問題として鋭く突きつけられたのは、日本の敗戦をめぐっての騒動である。
 日本の敗戦を受け入れる「マケグミ」と、その情報自体がアメリカによるフェイク・ニュースに過ぎず、日本は勝ったのだとする「カチグミ」との相克である。

 そうした対立があったことは知っていた。しかしそれが、敗戦の一年以上後の46年にもなお継続するという長期にわたるものであり、また、カチグミのテロ組織シンド・レンメイ(臣道連盟)によるマケグミ襲撃を伴うほどの激しいものであったことは知らなかった。しかも、その襲撃において、15名もの死者を生み出しているのだ。
 この小説でも、当時、マケを主張して殺された人が史実どおりの実名で出てくるし、この小説での登場人物の一人も殺され、それがこの小説のクライマックスをなしているともいえる。

 カチグミの根拠のひとつに、マケたのなら天皇ヒロヒトが生きているはずがない、彼が生存していること自体がマケていない証拠だというのは象徴的だ。
 たしかに当時、ブラジルは遠く、情報過疎地であったかもしれない。しかし、当時の政府の海外にいる日本人に敗戦の事実を知らせる試みは全く不十分だったといわざるを得ない。
 満蒙開拓団を見捨てていち早く引き上げた関東軍同様、海外移住者に対する棄民にも等しい態度が一般化していたのではないか。

  

 小説は、作家と同じく、この小説の語り手でもある移民三世が日本へ行く決意をするところで終わっている。ただしそれは、もはや一世が強く抱いていた望郷の念による「帰国」ではない。
 主人公が作家の分身であるとするならば、三世に至り、自分たちの歴史を相対化して見つめようとする志向が可能になったともいえる。だから彼の日本への「移動」は、自らの原点を確認し、そこから父祖のたどった道を再確認するための行為のように思われる。

 いろいろ書いてきたが、この小説のネタバレになるようなことは避けてきたつもりだ。興味のある方は読んでみて欲しい。
 この出版は、今年がブラジル独立200周年に当たるところから、他のブラジル文学とともに企画されたものである。

 なお、この出版元の水声社はけっこう面白い刊行物を世に送っている。

『ニホンジン』 Oscar Nakasato   訳:武田千春  水声社 

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「拉致問題は最重要課題」って本当ですか?

2022-10-14 00:49:16 | 社会評論

 ここのところ、朝鮮民主主義人民共和国(以下、「北」と略記)によるミサイル発射が相次いでいる。
 最初に断っておくが、そのミサイル発射や核実験を擁護するものではない。
 しかし、先般のミサイルについての過剰反応には驚いた。青森の友人によれば、アラームと同時に家に入り地下室へとのアナウンスがあったという。今どき、地下室のある民家はさほどあるまい。思わず、戦時中の防空壕を思い出してしまった。
 学校を休校にしたところもあったという。しかし、ミサイルが学校を狙っているのではない限り、下校すれば安全だという根拠がわからない。
 それとほぼ同様のアラームやアナウンスが東京でも流れたという。これはどうもミスだたようだ。また、愛知県は緊急危機管理委員会を開催したという。何を決めたんだろう。県民に防空頭巾でも配布するつもりだろうか。

 なぜこうした危機意識を煽るような過剰反応が気になるかというと、ひとつにはこれを強調することによってこの国の軍備強化につなげようとする勢力が確実にいるからだ。防衛予算の倍増、敵とみなされる国の基地への先制攻撃、アメリカとの核共有などが目指されている。
 もっと卑近なところでは、いま政権が陥っている危機から目をそらすという動機も混じっていそうだ。

 また、この国は、北が核やミサイルで動きを見せる度、率先して経済制裁などの「懲罰的な」行動に出ているし、日韓米で、北を「仮想敵国」とした軍事訓練も繰り返しているのは周知の事実だ。
  

 しかし、私がもっと気にしているのは、歴代内閣が、「拉致問題は最重要課題」と繰り返しながら、上のような事態とどう整合性を保とうとしているのかということだ。
 こうした動きと、拉致問題解決はどう関連するのだろうか。北を経済的、軍事的に締め上げたら「すみませんでした」と拉致被害者を返してくれるのだろうか。それとも、一時、極論として語られたゲリラ部隊の奇襲により拉致被害者を奪還してくるのか。

 どうも、北との回路を米国などとともに遮断しながら(もっともその米国すら、トランプは会談をしたのだが)、なおかつ拉致被害者をどう取り戻そうとしているのかがわからない。現行の徹底的な制裁措置と、拉致被害者の帰還交渉の両立はできっこないのではないか。
 そして、できっこないままに放置しながら「最重要課題」などと繰り返すのは被害者家族へのリップサービスのみで、実際には何もしていない、というより、むしろ拉致問題解決を遠ざける道を歩んでいるのではないかとすら思える。

 何も米韓に歩調を合わせる必要はあるまい。それら両国が、核やミサイルに「懲罰的な制裁」を行うなら、この国は「説得的な反対意見の表明」を行い、軍事演習などの力を誇示する行為には加わらず、ひたすら話し合いの窓口を探るべきではないのか。
 それらへの国際的な批判もあるかもしれない。しかし、「最重要課題」のためならそれは副次作用に過ぎまい。

 「最重要課題をどう進展させているのか」との問いへの最近の岸田の返答は、「それは、各方面への影響からして公表できません」だ。そしてこれは、安倍以降、一貫した自公政権の回答だ。
 こんな都合のいい返答はあるまい。結局は無為無策の隠蔽でしかない。

 いずれにしても、完全な敵視政策をとりながら、こちらの要求だけ飲ませることなど不可能だ。
 私たちは北の現体制を支持できないし、それへの批判的立場を堅持するが、ただし、私たちとは体制が異なる国が現実に隣国としてあるという事実は踏まえた上で交渉の窓口は開いておく、それができないならば、「最重要課題」などと白々しく口にするのはやめた方がいい。

 もし今後も同様の方針を続けるのなら、「拉致問題はもはや最重要課題ではありません。それ以前に、北を仮想敵国とした軍備の増強、そのための軍事予算の拡大、専守防衛を転換した攻撃できる軍隊の装備のほうが重要なのです」とはっきりいったほうがいい。
 現実に、事態はそのように進んでいるのだから。

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クロムツが4尾で318円!しょうもない老人の食い意地日記

2022-10-08 16:31:12 | グルメ

 今週はじめ、釣りの達人からその釣果をおすそ分けいただいたおかげで、海の幸を満喫できたので、週の後半は肉類でもと思ってスーパーへいった。
 
 在庫にないものを補充しながら、魚売り場へ行って驚いた。
 なんと、高級魚ノドグロ(アカムツ)の仲間、クロムツが4尾入ったパックが318円で並んでいるではないか。

 アカムツは、普通ちょっとサイズがいいと一尾1,000円を超えたりする。クロムツはそれよりは安いが、それでもアカムツの半額は下らないだろう。
 それが一尾100円を切るのだからオロロキモモロキサンショロキだ。

 
       火にかける直前 熱湯をかけて臭み取りをしてある

 サイズは一尾20cmぐらいできれいに揃っている。価格から見ても、その揃い具合から見ても、養殖ではないかと思ってググって調べたら、この魚、水面下300~400mにいて養殖は不可能とあった。ということはれっきとした天然物だ。

 肉類は諦めて、迷わずこれをゲット。
 で、調理はどうするかと考えたが、煮付けがいちばんだろうと結論。いくら小兵でも、いっときに4尾は食べられない。半分は残るとして、後刻、温めて食べるのはやはり煮付けだろう。

 火にかける前に、掃除や処理をしたクロムツに熱湯を注いで臭みを防ぐ。この一手間が煮魚をうまくする。
 煮しめ風でもなく、沢煮風でもなく、スタンダードな煮魚風に仕上げる。

 う~ん、うまかった。われながら上々のできだ。箸にかかるその身は、硬からず柔らかからず、その旨味をしっかり保っている。満足々々。

 
    ほかはゴーヤと玉ねぎの炒めもの 豆腐と生わかめの鍋風煮付け
 
 なぜ、こんなに旨い魚が、一尾100円を切って売られているのだろうか。値札を見ると、前のものに貼り直して値下げをした痕跡がある。
 ようするに、海なし県の岐阜では、この魚の旨さを知る人が少なく、当初の値段ではほとんど売れなかったため、私が買い物に行った夕方には4尾318円にまで値下げをしたのだと思う。

 そのおかげで、高級魚を安くゲットできたのだが、ただ、この価格設定でも売れ残るとしたら、この魚部門では、もはやこの魚を置かないのではと恐れる。
 やせ細った秋刀魚が一尾200円する折から、いい魚に出会った僥倖を感謝しながら、とりあえず、2尾を胃の腑に収めた。
 今週は、魚に恵まれた週であった。

【さよなら!今年のひやむぎ。そして、ありがとう!】
 2,3日前から急に冷え込んだ。最近の季節の変化は鋭角的で、グラデーションの期間がほとんどない。
 そこで、今日は少し暖かくなったので、ひやむぎの在庫を片付けることにした。六月からお世話になってきたわが好物とも、今年はこれでお別れだ。

 

 この種のもの、炭水化物のみで野菜が不足がちなので、薬味を多めに用意する。ネギ、大葉、ミョウガのみじん切り、それにゴマを添える。ついでに、装飾を兼ねて麺の上にカイワレを少々。

 真夏には氷など浮かせ、キンキンに冷やしたが、さすがに今回はそこまでしなかった。もっともわが家は井戸水なので、そこそこ冷たいのだが。
 美味しかった!

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急に深まる秋への二題

2022-10-07 00:52:24 | 写真とおしゃべり
【季節変動】最近の季節変動は鋭角的でグラデーションの期間がない。慌てて夏物を片付けて長袖などを引っ張り出す。六月に急に夏になったときも、同様に鋭角的だった。
 
 
【ある夕餉】昼餉は麺類を中心によく載せるが、夕餉はあまり公表したことはない。大体においてみじめなものを食しているからだ。
 ここに載せたのは、先般、釣り名人から頂いた鯛とハマチを二つのメインデッシュにした夕餉。いずれも、頂いた日に刺し身にしたものの後日談。
 鯛をさばいた後のアラ煮とハマチの切り身の照り焼き風。照り焼き風というのは、フライパンで作ったから。
 
 
 合わせた野菜は、さっぱり生野菜のサラダと十六ささげのおひたし。生野菜にはあまり凝ったドレッシングは苦手で、だいたい、塩と酢とサラダオイル、ないしはオリーブオイルのみ。
 自己採点では、鯛のアラ煮がトップ。甘辛さをやや控えて、あっさり味に仕上げたのが良かった。
 合わせたのは、開栓した白ワインがあったのでそれに。
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