列車などの駅といところは、駅舎や駅の構造に興味がある「駅鉄ちゃん」でもない限り、そこ自体へ行ってゆっくり過ごすところではない。時折、接続時間の関係で一定時間止められることもあるが、それは不本意な事態である。大抵は必要な箇所へ出かけるための通過点、中継点として通り過ぎる場合が多い。
ましてや、その駅への到着と、そこからさらに行くべき目的地への集合時間が決まっている場合など、急いでその場を離れる必要がある。
先般、名古屋へ出かけた折もそうであった。ただしその折には、万札しかもっていなかったので、その会費(正確には二次会費)の支払いで迷惑をかけないように両替をする必要があった。
駅構内にあるATMでそれを行い、千円札は無事ゲットした。では、硬貨への両替はどうかと千円札を入れて試みたがダメだった。操作違いかなと思いもう一度試みたがやはりダメだった。
そんなことをしているうちに、集合時間はドンドン迫ってる。硬貨は諦めてその場を去り会場へと急いだ。なんとか会には間に合い、三時間にわたる読書会を済ませ、二次会へと移った。
話は弾み、宴たけなわであったが老齢の身、岐阜までの帰路も考え、途中で失礼した。そこまでの概算の支払いも、両替のせいで無事に済ますことができた。
翌日の午前であった。行きつけの銀行の名古屋駅前支店からという電話があった。名古屋駅前支店?う~ん、行ったこともないところからだ。最近、この種の電話であからさまな詐欺があるので身構えながら聴いた。
電話の主はいう。「昨日、名古屋駅構内のATMをご利用なさいませんでしたか?」「ハイ、利用しましたが・・・・」「その際お使いになったカードはお手元にありますか?」と電話は続く。
えっえっえっ・・・・慌てて確認してみる。ないッ、ないのだ!
「やはりございませんか。お客様のカードはそのATMに残されていました。お取引きの支店は岐阜の〇〇でしたね。そちらの方へお送りいたしますので、連絡があったらとりにお越しいただきたいのですが」
お越しいただきたいも何も、すぐさま手にしない限り安心できない。
「ハ、ハ、ハイッ」と応える。
翌日、岐阜の〇〇支店から電話が。身分証明ができるものを持参し、とりにでかける。受領書を書くのみで返してくれる。
「異常や損傷がないかATMで確認してください」とのこと。二つ返事で確認。正常に作動するし、なによりも安堵したのは残高にまったく異常がなかったことだ。
窓口に引き返し、その旨を報告し、併せて、「これを拾得したり、届けてくれた方の連絡先はわかりませんか?お礼の意思表示をしたいのですが」と尋ねる。「いいえ、それはそのATMの管理者からなので特定の誰かはわかりません」とのこと。
納得して帰途についたが、まったく冷や汗モノの一幕であった。虎の子の預金が無事であったのが何よりだ。
言い訳けをするなら、万札から千円札への両替は何度もしていて、この場合はカードの箇所に警告灯がつき、カードを抜いた後に両替分のフタが空くようになっている。しかし、千円札を入れて硬貨へのそれを試みた際には、ただ拒否するようにフタが空いて元の千円札がそのままになっている。だから、そのまま千円札を回収してその場を去ったわけだ。
とはいえ、カードを入れて暗証番号を打ち込んでそれを待ったのだから、カードのとり忘れは明らかにこちらのミス。どんな言い訳も通用しない。いまさら老いを嘆くような境界をもとっくに過ぎているので、改めてそれのせいにせず、ただおのれの不用心さを戒め、今後の教訓としたい。
ただ、これを述べるためにわざわざ駅の機能などから説き始めるなんて、言い逃れをしたい不届きな心情が見え見えだなぁ。