過日、長良川最大の支流、板取川へ名古屋の友人を案内する機会があった。
おおよそ半世紀前、渓流釣りにしばしば訪れた溪で、それなりの釣果を得た記憶もある。
途中、長良川から別れた板取川沿いにある森のカフェ、「ル クレール せきや」に寄る。ここは岐阜から小一時間ほどのところで、名古屋など都会地の人をしばしば案内しているが、杉林に囲まれた空間に広がる自然と共存したガーデンはみごとで、感嘆されることが多い。
ただし、今回訪れた感じでは、いくら自然と共存しているとはいえ、それなりの手入れは必要なわけで、その面ではかつてに比べやや荒廃の感が否めないかなと思った。ただし、これを維持するのは実に大変なことなのだから致し方ないかなとも思う。
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そこでの小休止のあと、向かったのは最近話題の「モネの池」である。
もともとは根道神社の境内の石段下にある名もない池だったのだが、水が透明で睡蓮が咲き誇り、独得の雰囲気があるところから、誰言うともなく「モネの池」と呼ばれ、口コミやネットで広がった結果、今では観光バスが止まる景観スポットとなっている。
もちろん、かつてこの溪へよく来ていた頃にはこんな池があることは知る由もなく、単なる通過点に過ぎなかった。
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駐車場には平日であるにも関わらずかなりの車がとまり、大型の観光バスも駐車していた。そして少し離れた池の周りには、多くの人たちがひしめいていた。
思ったよりは小さい池であった。それと季節を外していたので、睡蓮の花もなく、黄色のコウボネの花が2、3輪見られる程度で、あの睡蓮に満ちたモネの池とはかなりイメージの乖離があった。
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ただし、山裾にあるという条件もあって湧水があるようで、水はあくまでも澄み切っていた。よく、透明度が高くて舟などが空中に浮かんでいるかにみえる写真があるが、それほど深くはないがそれと同じ現象が見られる。何尾かの鯉が放たれているのだが、それらがまさに浮遊しているかのようなのだ。
本家のモネの池にこだわると幾分肩透かしの感があるが、これはこれで美しい。睡蓮の季節だったらもっと感動的だったろうと思う。
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名古屋からの客人に、もう一つ見せたいものがあった。それはさらに上流にある川浦渓谷(川浦と書いて「カオレ」と読む)である。
この渓谷とはじめて出会ったのはもう半世紀近く前である。冒頭に書いたようにその頃、私は渓流釣りにはまっていて、中部地区の溪々へ、アマゴやイワナを求めてよく通っていた。こことの出会いもその折で、いまほど道路事情が良くないなか、ポンコツ車でよく来られたものだといまにして思う。
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その折、川浦には大きなアマゴがうじゃうじゃいるという噂を頼りに行ったのだが、数十メートル下を切り立った岸壁に挟まれて流れる渓谷にどこからどう降りるのかもわからず、諦めてほかの谷へ入った思い出がある。
その後訪れたのは、いまから数年前、地域の写真クラブの人たちに同行した際であった。人の入川を拒む岸壁の間を流れる溪は昔のままであったが、それを見る私の目は変わっていた。かつては釣りの対象であった渓を、いまはそれ自身の景観を楽しむ目線で見ているのであった。
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右の地図の航空写真
その目線で見ると、この渓谷は、これまで訪れたどの渓よりも険しく、かつ、美しいことに気付いた。写真で見ていただくとわかるように、これは渓谷というより文字通り峡谷で、相当の水量の流れが、左右から迫る岸壁に阻まれて、細い流れを余儀なくされ、そこから解き放たれた途端、歓喜の轟音とともに白泡を放って流れ下る、その繰り返しがこの渓谷を彩っている。
今回もまた、その絶景を満喫することができた。
そこを最後に下りに転じ、途中、美濃市のうだつの上がる街並みを眺めて帰途についた。
川はいい。水はいい。山林が大半を占める岐阜県は、それに満ち満ちている。
おおよそ半世紀前、渓流釣りにしばしば訪れた溪で、それなりの釣果を得た記憶もある。
途中、長良川から別れた板取川沿いにある森のカフェ、「ル クレール せきや」に寄る。ここは岐阜から小一時間ほどのところで、名古屋など都会地の人をしばしば案内しているが、杉林に囲まれた空間に広がる自然と共存したガーデンはみごとで、感嘆されることが多い。
ただし、今回訪れた感じでは、いくら自然と共存しているとはいえ、それなりの手入れは必要なわけで、その面ではかつてに比べやや荒廃の感が否めないかなと思った。ただし、これを維持するのは実に大変なことなのだから致し方ないかなとも思う。
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そこでの小休止のあと、向かったのは最近話題の「モネの池」である。
もともとは根道神社の境内の石段下にある名もない池だったのだが、水が透明で睡蓮が咲き誇り、独得の雰囲気があるところから、誰言うともなく「モネの池」と呼ばれ、口コミやネットで広がった結果、今では観光バスが止まる景観スポットとなっている。
もちろん、かつてこの溪へよく来ていた頃にはこんな池があることは知る由もなく、単なる通過点に過ぎなかった。
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駐車場には平日であるにも関わらずかなりの車がとまり、大型の観光バスも駐車していた。そして少し離れた池の周りには、多くの人たちがひしめいていた。
思ったよりは小さい池であった。それと季節を外していたので、睡蓮の花もなく、黄色のコウボネの花が2、3輪見られる程度で、あの睡蓮に満ちたモネの池とはかなりイメージの乖離があった。
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ただし、山裾にあるという条件もあって湧水があるようで、水はあくまでも澄み切っていた。よく、透明度が高くて舟などが空中に浮かんでいるかにみえる写真があるが、それほど深くはないがそれと同じ現象が見られる。何尾かの鯉が放たれているのだが、それらがまさに浮遊しているかのようなのだ。
本家のモネの池にこだわると幾分肩透かしの感があるが、これはこれで美しい。睡蓮の季節だったらもっと感動的だったろうと思う。
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名古屋からの客人に、もう一つ見せたいものがあった。それはさらに上流にある川浦渓谷(川浦と書いて「カオレ」と読む)である。
この渓谷とはじめて出会ったのはもう半世紀近く前である。冒頭に書いたようにその頃、私は渓流釣りにはまっていて、中部地区の溪々へ、アマゴやイワナを求めてよく通っていた。こことの出会いもその折で、いまほど道路事情が良くないなか、ポンコツ車でよく来られたものだといまにして思う。
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その折、川浦には大きなアマゴがうじゃうじゃいるという噂を頼りに行ったのだが、数十メートル下を切り立った岸壁に挟まれて流れる渓谷にどこからどう降りるのかもわからず、諦めてほかの谷へ入った思い出がある。
その後訪れたのは、いまから数年前、地域の写真クラブの人たちに同行した際であった。人の入川を拒む岸壁の間を流れる溪は昔のままであったが、それを見る私の目は変わっていた。かつては釣りの対象であった渓を、いまはそれ自身の景観を楽しむ目線で見ているのであった。
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右の地図の航空写真
その目線で見ると、この渓谷は、これまで訪れたどの渓よりも険しく、かつ、美しいことに気付いた。写真で見ていただくとわかるように、これは渓谷というより文字通り峡谷で、相当の水量の流れが、左右から迫る岸壁に阻まれて、細い流れを余儀なくされ、そこから解き放たれた途端、歓喜の轟音とともに白泡を放って流れ下る、その繰り返しがこの渓谷を彩っている。
今回もまた、その絶景を満喫することができた。
そこを最後に下りに転じ、途中、美濃市のうだつの上がる街並みを眺めて帰途についた。
川はいい。水はいい。山林が大半を占める岐阜県は、それに満ち満ちている。