ちょっとした狂い咲きだろう、鉢植えの菫が花をつけている。
そもそもの始まりは、義父からもらった平鉢にこんもり群れ咲き誇る菫だった。
もう半世紀も前の事だが、直ぐ枯らしてしまい再生を試みたが、いまだ群れ咲く菫を見ることはできないでいる。
ただ一鉢だけ、放っぱなしだが枯れもせず元気に育っているのが、この鉢である。
「やはり野におけ蓮華草」という言葉があるが、やはり植物は自然に育つのが一番よく、よほど熟練しないと平鉢に群れ咲く状態を作るのは難しい。
菫ほどな 小さき人に生まれたし 夏目漱石
菫の花が大好きな私は、漱石のこの句も大好きだが、当初はこの句の意味がよく判らずにいた。
意訳としては、「道端にひっそりと目立たずともたくましくさいている菫のように、そんな人間に生まれたいものだ」とされている。
「ほどな」の「な」を正岡子規は嫌ったと言われているが、私は漱石先生に組したいと思う。
随分、菫に対する意味合いが強調されているように感じる。そして、なにかしら漱石先生の鬱々たる心情の中の作品ではなかろうかと感じる。