今年の1月、チャールス・トリヴァーのビッグバンドを新宿SOMEDAYまで聴きに出かけた。ピアノのスタンリー・カウエルや、ずっと私のアイドルのビリー・ハーパーが一員だというので、高いチャージ代は仕方がない。ハーパー中心の小さな編成で、どこかのハコでやらないかなと期待して待っていたが、結局それはなかった。
SOMEDAYはあちこち移転して、いまは新宿御苑の近くにある。マスターに、「ハーパーの近くってどこ?」と耳打ちして尋ね、真ん前を確保した(ミーハーか)。最初の曲で、長いソロを取った。音が太く、ファンとしては大感激である。それ以外のときには、ときどき居眠りしていた。エリントン楽団のポール・ゴンザルヴェスか?
ビリー・ハーパー Leica M3、エルマリート90mmF2.8、TRI-X(+2)、フジブロ3号
ビリー・ハーパー Leica M3、エルマリート90mmF2.8、TRI-X(+2)、フジブロ3号
ビリー・ハーパー Leica M3、エルマリート90mmF2.8、TRI-X(+2)、フジブロ3号
チャールス・トリヴァーとスタンリー・カウエル Leica M3、エルマリート90mmF2.8、TRI-X(+2)、フジブロ3号
サインもらっちゃった(笑)
その後ほどなくして、本当に久しぶりのハーパーの新作が出た。『Blueprints of Jazz Vol. 2』(TALKINGHOUSE)がそれだが、このタイトル名でシリーズとして出しているだけで、ハーパーの作品はこれ1枚である。
いつものオリジナル曲とハーパー節、立派だというのか、デビュー以来まったく変わらない姿である。ただ、今回の聴きどころはアミリ・バラカ(かつてのリロイ・ジョーンズ)のヴォイスによる参加だ。最初の2曲において、アルバムのコンセプトに沿って、バラカはジャズの歴史をおそろしい早口で辿ってみせる。その居眠りゴンザルヴェスのことも口走るし、バディ・ボールデン、ジョニー・ホッジス、ジェームス・P・ジョンソン、ファッツ・ウォーラー、ディジー・ガレスピー、エルヴィン・ジョーンズ、サン・ラ、・・・・・・切りがないほど多くの音楽家のことを引用し続ける。そして最後の1曲では、音楽を普遍的なコミュニケーションの活動だと謳いあげる。
これによって、ついつい同じムードになりがちなハーパーの音楽に刺激が加わり、サックス自体もさらに良いものに聴こえてきた。もちろんバラカが参加していないバンドの演奏は良くて、普段より若干人数が多いためか、『カプラ・ブラック』や『ソマリア』のような呪術的な雰囲気を漂わせている。なかでも、「Amazing Grace」は嬉しい。また、「Another Kind of Thoroughbred」は、かつての「Thouroughbred」との関係を思わせるが、ギル・エヴァンスのビッグバンドでの演奏と聴き比べても関連がよくわからなかった。(余談だが、このギル・エヴァンス『スヴェンガリ』では、デイヴィッド・サンボーンとビリー・ハーパーが続けてソロを取るという嬉しさがある。)
●参照
○ビリー・ハーパーの映像