本八幡のcooljojoにおいて、齋藤徹、喜多直毅、外山明という驚いてしまうトリオ(2018/2/17)。
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Akira Sotoyama 外山明 (ds)
齋藤・喜多両氏は多くの共演を重ねていることからも、やはりサプライズは外山明さんの参加である。注目の大きさゆえだろう、かなり多くのオーディエンスが集まった。というのも、外山さんのフィールドはジャズという印象が強いからだが、そのジャズでももとより規格外の存在だった(すべて腰から下に設置してあるドラムセットも実にユニークだ)。長いこと参加している松風鉱一さんのカルテットについても、松風さんは、「最初の演奏でもう解散だと思った」と笑いながら話していた、それほどなのだった。
とは言っても、昨年には大上流一、徳永将豪というどインプロのプレイヤーたちと共演もしている。そしてこの日わかったことは、外山明のプレイはどの文脈でも外山明ということだった。そういえば、昨年NYでヴォイスパフォーマーの山崎阿弥さんが、地下鉄の中でずっと、如何に外山さんの音が普通から逸脱しているかという「外山愛」を語り続けたこともあった。
ファーストセット。静かに音楽に入ってくる喜多・齋藤のふたり。外山さんは最初はバスドラとシンバルでその中に身を入れる。いきなり何かをじゃーんと作り上げてはならないのだ。テツさんは触るか触らないかといった弦へのアプローチを見せる。やがて各人の音は多彩化していき、また相互に触発されて次の音を出すのだが、それは追従という言葉とかけ離れている。勝手に独立して動いているわけでもない。このあたりが、三者三様のすぐれたインプロの面白さである。
喜多さんはロングトーンでスピードを求め、テツさんはエネルギーレベルを上げ、外山さんはドラムの端と中とで見事な対照を示した。潮目が変わり、大きなうねりが創出されてくる。テツさんと喜多さんが弓を振り風切り音を出すと、外山さんは悪乗り風に腕を振り息で風音を作った。弦ふたりのきしみと、シンバルの金属音。テツさんは驚くほど力強く指弾きでドライヴし、外山さんはようやくジャズドラム的なパルスを発した。ここで喜多さんがアジア的な旋律に持ち込み、そして、全員が浮力を求めた。外山さんはその浮力にバスドラを使って貢献した。また何度目か、潮目が変わり、テツさんが物語的な旋律、外山さんがスピード、喜多さんが琴のような音を、触発の連鎖により発した。触発というより常に移動する憑依かもしれない。喜多さんは最後に時間の流れの中心にあった。
セカンドセット。まずは外山さんが、スティックの指による摩擦を叩きへと変換する。喜多さんのかそけき音、テツさんの存在感のある音、この弦ふたりのサウンドが、ファーストセットに続き、アジア的なものへと接近するように聴こえた。やがてテツさんがハミングするように歌った。ここで見せた、外山さんの複雑なリズムは見事だった。喜多さんが周波数を連続的に変えてゆくのだが、サウンドはまたアジアへ、ムード歌謡にまで触手を伸ばした。
潮目が変わり、外山さんが奇妙なリズムで主導し、ときにふたりを煽る。テツさんはコントラバスを横たえた。しばらくするうちに、なぜだろう、リズムと弦の擦りとの主客逆転があって、耳の方向が変わっていった。
また誰が主導するでもなく別の時間が来て、弦のふたりは葬送を思わせる和音を奏で始めた。ドラムスはしばし沈黙した。その和音が飽和したのか、外山さんが再び介入した。弦による長い長いもの、ドラムスによる短く断続的なもの、その対照。最後は、テツさんがコントラバスを愛おしむようにやさしく撫でた。もしかすると、直前にコントラバスに亀裂を入れて修繕したことに起因する振る舞いなのかもしれなかったが、無粋かと思い、そのことを訊くことはやめた。
Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4
●齋藤徹
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン
●喜多直毅
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
●外山明
Shield Reflection@Ftarri(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)