Sightsong

自縄自縛日記

齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo

2018-02-18 21:37:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojoにおいて、齋藤徹、喜多直毅、外山明という驚いてしまうトリオ(2018/2/17)。

Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Akira Sotoyama 外山明 (ds)

齋藤・喜多両氏は多くの共演を重ねていることからも、やはりサプライズは外山明さんの参加である。注目の大きさゆえだろう、かなり多くのオーディエンスが集まった。というのも、外山さんのフィールドはジャズという印象が強いからだが、そのジャズでももとより規格外の存在だった(すべて腰から下に設置してあるドラムセットも実にユニークだ)。長いこと参加している松風鉱一さんのカルテットについても、松風さんは、「最初の演奏でもう解散だと思った」と笑いながら話していた、それほどなのだった。

とは言っても、昨年には大上流一、徳永将豪というどインプロのプレイヤーたちと共演もしている。そしてこの日わかったことは、外山明のプレイはどの文脈でも外山明ということだった。そういえば、昨年NYでヴォイスパフォーマーの山崎阿弥さんが、地下鉄の中でずっと、如何に外山さんの音が普通から逸脱しているかという「外山愛」を語り続けたこともあった。

ファーストセット。静かに音楽に入ってくる喜多・齋藤のふたり。外山さんは最初はバスドラとシンバルでその中に身を入れる。いきなり何かをじゃーんと作り上げてはならないのだ。テツさんは触るか触らないかといった弦へのアプローチを見せる。やがて各人の音は多彩化していき、また相互に触発されて次の音を出すのだが、それは追従という言葉とかけ離れている。勝手に独立して動いているわけでもない。このあたりが、三者三様のすぐれたインプロの面白さである。

喜多さんはロングトーンでスピードを求め、テツさんはエネルギーレベルを上げ、外山さんはドラムの端と中とで見事な対照を示した。潮目が変わり、大きなうねりが創出されてくる。テツさんと喜多さんが弓を振り風切り音を出すと、外山さんは悪乗り風に腕を振り息で風音を作った。弦ふたりのきしみと、シンバルの金属音。テツさんは驚くほど力強く指弾きでドライヴし、外山さんはようやくジャズドラム的なパルスを発した。ここで喜多さんがアジア的な旋律に持ち込み、そして、全員が浮力を求めた。外山さんはその浮力にバスドラを使って貢献した。また何度目か、潮目が変わり、テツさんが物語的な旋律、外山さんがスピード、喜多さんが琴のような音を、触発の連鎖により発した。触発というより常に移動する憑依かもしれない。喜多さんは最後に時間の流れの中心にあった。

セカンドセット。まずは外山さんが、スティックの指による摩擦を叩きへと変換する。喜多さんのかそけき音、テツさんの存在感のある音、この弦ふたりのサウンドが、ファーストセットに続き、アジア的なものへと接近するように聴こえた。やがてテツさんがハミングするように歌った。ここで見せた、外山さんの複雑なリズムは見事だった。喜多さんが周波数を連続的に変えてゆくのだが、サウンドはまたアジアへ、ムード歌謡にまで触手を伸ばした。

潮目が変わり、外山さんが奇妙なリズムで主導し、ときにふたりを煽る。テツさんはコントラバスを横たえた。しばらくするうちに、なぜだろう、リズムと弦の擦りとの主客逆転があって、耳の方向が変わっていった。

また誰が主導するでもなく別の時間が来て、弦のふたりは葬送を思わせる和音を奏で始めた。ドラムスはしばし沈黙した。その和音が飽和したのか、外山さんが再び介入した。弦による長い長いもの、ドラムスによる短く断続的なもの、その対照。最後は、テツさんがコントラバスを愛おしむようにやさしく撫でた。もしかすると、直前にコントラバスに亀裂を入れて修繕したことに起因する振る舞いなのかもしれなかったが、無粋かと思い、そのことを訊くことはやめた。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●齋藤徹
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 

●喜多直毅
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)

●外山明
Shield Reflection@Ftarri(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)


『けーし風』読者の集い(34) 正念場を迎えるために

2018-02-18 20:00:14 | 沖縄

『けーし風』第97号(2018.1、新沖縄フォーラム刊行会議)の読者会に参加した(2018/2/10、秋葉原/御茶ノ水レンタルスペース会議室)。参加者は6人。

以下のような話題。

●村岡敬明さん(明治大学研究・知財戦略機構研究推進員)(参加者)による、読谷村の戦後写真のデジタルアーカイブ化運動。10月公開に向けて資金をクラウドファンディングで集めている。>> リンク
●APALA(アジア太平洋系米国人労働者連盟)のアメリカにおける大会(2017/8)。ここにオール沖縄など34名が参加し、沖縄の米軍基地拡張への反対、APALAの所属組合への働きかけ、米国議会への働きかけが採択された。ロビー活動など具体的なアクションはこれから。
●上原成信さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)が2017年10月に亡くなったこと。何年か前まで、いつもこの読者会に来ておられた。私も報道でご逝去を知った。ご冥福を。>> 上原成信・編著『那覇軍港に沈んだふるさと』
●山城博治さんの那覇地方裁における判決は2018/3/14。本誌には、一方的で強引な裁判であることが書かれている。
●産経新聞と八重山日報のフェイクニュース。この2紙は一応の謝罪文を掲載したが、東京MXテレビは両論併記の検証番組を放送しただけで、社として謝罪はしていない。
●名護市長選。残念ながら稲嶺市長が敗れた。当選した渡具知氏が基地推進を謳っていたわけではない。稲嶺優勢が伝えられていたにも関わらず、組織的な期日前投票と公明票によって結果が変わった。稲嶺市長は政府予算に頼らない財政健全化を行ったにもかかわらず、そのせいでオカネが入ってこないとする間違ったネガティブキャンペーンが行われた(それとは関係ないのに、名護のシャッター通りの映像が利用されたりもした)。舛添前都知事も、市民が経済を選んだと誤ったツイッターを発した。
●辺野古を争点のひとつにした選挙はこれで6回目。なぜこうも迫られなければならないか。
●名護市民の反応として、どうせ基地ができてしまうのなら取るものを取ろうという、どこでも見られる現実立脚主義があるのではないか。
●オール沖縄の行き詰まりはどうか。次回の県知事選で翁長知事はあやういのではないか。稲嶺市長が出馬する可能性はないか。
●名護市許田の宿が安い(2000円くらい)。
●ピーター・ガルビン氏(生物多様性センター)が、動物愛護は個人のもの、軍事はそうでないもの、それゆえ辺野古のジュゴン問題が難しいといった旨の発言をしていることへの違和感。環境NGOは政治との関わりを持っているものである。
●読谷村の若者がチビチリガマを荒らした事件。1回目は知花昌吉氏が日の丸に火を付けたあと、2回目が5年ほど前にあって、今回は3回目とのこと。沖縄の平和教育の退行ゆえではないかとの危機感があるようだ。金城実氏らが関わって更生プログラムを実現したことは沖縄ならではか。
●辺野古での大型特殊船ポセイドンによるボウリング調査は、活断層の存在が疑われるあたりを中心に行われている可能性。ここが活断層でないとの閣議決定は、防衛省がそれを示す公式資料がないとしたことによるものだが、実は、少なくとも4冊はあった。これで活断層なら詰み、あるいは、深部まで杭を打つことによってコストがかなり高いものとなる。それを誰が負担するのか。
●SACO合意における普天間返還の条件として、代替施設を県内に1箇所、県外に12箇所設置することが含まれている。稲田元防衛相が返還できない可能性を言ってしまったのは、仮に辺野古ができたとしてもアメリカが普天間を返還しない可能性についてであった。これを背景として、日本全国の民間空港でジェットが離発着できる軍民共用化が進んでいるのではないか。それは植民地そのものではないか。
●ふたたび出てきた徴兵制の話。あるいは経済的徴兵制。

情報
●「東京⇆沖縄池袋モンパルナスとニシムイ美術村」板橋区立美術館、2018/2/24-4/15 >> リンク
●真鍋和子さん(児童文学作家)による講演「沖縄と子どもの貧困を考える」2018/3/27、ブックハウスカフェ >> リンク (※真鍋さんも以前にこの読者会によくいらしていた)
●澤地久枝さん講演「満州の引き揚げ体験を語り継ぐ」2018/3/17、wam/女たちの戦争と平和資料館
●郷原信郎さん講演「美濃加茂市長事件は終わったのか」(アジア記者クラブ)2018/2/28、明治大学研究棟4階・第1会議室
●安孫子亘『「知事抹殺」の真実』2018/3/3、浦安市民プラザWave101中ホール
●「世界」2018年3月号・特集「辺野古新基地はつくれない」(岩波書店)
●「越境広場」4号・特集「目取真俊」
●佐古忠彦『「米軍が恐れた不屈の男」瀬長亀次郎の生涯』(講談社)
●明田川融『日米地位協定』(みすず書房)
●古関彰一、豊下楢彦『沖縄・憲法なき戦後』(みすず書房)
●鳩山友紀夫、大田昌秀、松島泰勝、木村朗『沖縄謀反』(かもがわ出版)
新城郁夫・鹿野政直『対談 沖縄を生きるということ』(岩波書店)
崎山多美『クジャ幻視行』(花書院)

●参照
『けーし風』