Sightsong

自縄自縛日記

酒井俊+会田桃子+熊坂路得子@Sweet Rain

2018-02-12 11:20:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

中野のSweet Rainに、酒井俊さんを観に行った(2018/2/11)。

Shun Sakai 酒井俊 (vo)
Momoko Aida 会田桃子 (vln)
Rutsuko Kumasaka 熊坂路得子 (accordeon)

最初は会田さんのやや乾いた音のヴァイオリンから、「My Funny Valentine」。メロディをヴァイオリンと少しずらした熊坂さんのアコーディオンが続き、しばし経って、酒井さんが入る。この、唯一無二の雰囲気。「ひとりぼっちのラブレター」では伴奏のふたりがつまむような音を出したかと思えば、猥雑でもある大きなうねりのアコーディオンの中にヴァイオリンが入り、ちょっとした快感を覚える。続いて「四丁目の犬」。「俊さん、ベトナムにコンビニはあるのか?」からはじまる語りにあわせて、熊坂さんはまるで風が吹いているような音、会田さんは合いの手、絶妙。ふたりの伴奏者は次第にノリノリになっていった。「Cheek to Chhek」では俊さんの歌からはじまり、やがてふたりが調子はずれの音からコードにのせてゆく。るつこさんのダッシュがみごと。ちあきなおみが歌った「紅い花」を経て、「Dream a Little Dream of Me」では、まるで遠くで聴こえるかのようなサウンドの中で、俊さんのハスキーな声が映えた。そしてファーストセットの最後は「ナーダム」(林栄一)。伴奏者がゆっくりと空気を取り込むようにはじめ、やがて、勢いも情もある歌。終盤でるつこさんの狂気とも思えるノリがあって、収束するかと思いきや、俊さんのスキャットからの展開。もちろんナーダムはモンゴルの祭りなのだけれど、俊さんは、別の風景を重ね合わせてもいたのだった(書いていいのかわからないので参照→)。

セカンドセットは、「酒と泪と男と女」から。こういう歌も酒井俊世界になってしまう。2曲目はなんだったか、そして3曲目はふたたび林栄一の「回想」。ちょうど休憩時間に外で俊さんと話していたことを、俊さんがステージで語り始めるものだから面白くなってしまった。会田さんの流麗なヴァイオリンも、るつこさんが髪を振り乱して盛り上げたアコーディオンも良い。そしてなんと、友川かずきが作詞作曲しちあきなおみが歌った「夜を急ぐ人」。「Starry Starry Night」やなんかを歌ったあとに、るつこさんフィーチャーで「お菓子と娘」(あとで調べると、西條八十の作詞!)、情感たっぷりの会田さんのヴァイオリンをフィーチャーした「Nearness of You」。アンコールは「真夜中のギター」。途中でつっかえる感じのある歌声が気持ちいい。

それにしても良い時間だった。ひょっとすると酒井さんは伴奏者との音のバランスを気にしていたのかもしれないけれど、客席からは、そのくらいカオティックなほうが場が猥雑に盛り上がって嬉しいものだった。

●酒井俊
酒井俊+永武幹子+柵木雄斗(律動画面)@神保町試聴室
(2017年)

●熊坂路得子
うたものシスターズ with ダンディーズ『Live at 音や金時』(2017年)
TUMO featuring 熊坂路得子@Bar Isshee(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)


ベルギー王立美術館のマグリットとブリューゲル

2018-02-12 10:46:06 | ヨーロッパ

ブリュッセルで空いた時間に、ベルギー王立美術館を覗いた。入館の際のチェックは厳重で、わりと時間がかかる。

ちょうどルネ・マグリットの特別展をやっていた。ブリュッセルにはマグリットが住んでいた家があって、2004年に観に行った。暖炉の上から列車が出てくる絵などはその家で描かれていて、中では暖炉と絵とを観ることができる。しかし、こちらの王立美術館に入るのははじめてだ。

中学生の頃から大好きな画家でもあり、もはやサプライズはないのだけれど、「光の帝国」2種類などの作品を観ることは嬉しい。

ところで、入口に、マグリットとマルセル・ブロータスが自動車に乗っている人形が展示されていた(ヨラ・ミナッチーというアーティストによる)。手にはマラルメの写真。後ろの座席にいる女性がカメラを持っており、それはおそらくニコマート(海外版ならNikkormatか)。ちょっと時代考証が甘いぜと思い調べてみると、ニコマートFTの発売は1965年、マグリットの没年は1967年、ブロータスの没年は1976年。おかしくはない。

 

それよりも(文字通り)度肝を抜かれたのはブリューゲル父子の作品群である。

「ベツレヘムの戸籍調査」は父子両方の作品が並べられており、比べると愉しい。偉大さでいえばオリジネイターの父なのだろうけれど、子の筆も仔細でまがまがしく、ポップでもあり、どれだけ凝視してもキリがないほど面白くドキドキする。

「謝肉祭と四旬節の喧嘩」は子の作品が展示されている(父の作品はウィーンにあるようだ)。なんなんだ、この奇怪な人たちは。おそるべしヨーロッパ中世。以下参照。

ああ、そういえば上野での展示も観に行かないと。