米国に来る飛行機の中で、香山リカ『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論』(太田出版、2019年)を読む。
いきなり飛び込んでくる「フーコーと根本敬の共通点」という文字列に痙攣してしまう(腑に落ちないが)。それはともかく、香山リカ氏がサブカル民であったから、根本敬と根本敬的なものへの愛憎がともに詰め込まれている感がある。
いやそうなのだ。『ディープ・コリア』について、それが書かれた時代や文化的背景を抜きにして批判することは乱暴だが、今ではありえない書物であることもまた確かなのだ。現代の自分たちが獲得しえた視点で読み直すことは、これを笑いながら読んだすべての者に迫られている作業に違いない。少なくとも今後、『ディープ・コリア』の名前を口にするのであれば。
とは言え、両論併記など他のあれこれと同じように、害悪でしかない。著者がいうように、『ディープ・コリア』はヘイト本とは根本的に異なっている。サブカル民にその違いを暴き出す力を見出そうとしていることには、少し嬉しくなってしまう。確かに根本敬自身に外部からそれを求めるのは筋違いというものだ。引いてしまうほどの異物ゆえの根本敬である。
●根本敬
根本敬『因果鉄道の旅』