Sightsong

自縄自縛日記

香山リカ『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論』

2019-09-15 01:50:00 | 思想・文学

米国に来る飛行機の中で、香山リカ『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論』(太田出版、2019年)を読む。

いきなり飛び込んでくる「フーコーと根本敬の共通点」という文字列に痙攣してしまう(腑に落ちないが)。それはともかく、香山リカ氏がサブカル民であったから、根本敬と根本敬的なものへの愛憎がともに詰め込まれている感がある。

いやそうなのだ。『ディープ・コリア』について、それが書かれた時代や文化的背景を抜きにして批判することは乱暴だが、今ではありえない書物であることもまた確かなのだ。現代の自分たちが獲得しえた視点で読み直すことは、これを笑いながら読んだすべての者に迫られている作業に違いない。少なくとも今後、『ディープ・コリア』の名前を口にするのであれば。

とは言え、両論併記など他のあれこれと同じように、害悪でしかない。著者がいうように、『ディープ・コリア』はヘイト本とは根本的に異なっている。サブカル民にその違いを暴き出す力を見出そうとしていることには、少し嬉しくなってしまう。確かに根本敬自身に外部からそれを求めるのは筋違いというものだ。引いてしまうほどの異物ゆえの根本敬である。

●根本敬
根本敬『因果鉄道の旅』


マーク・ド・クライヴ・ロウ@ロサンゼルスbluewhale

2019-09-15 00:49:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

ロサンゼルスのbluewhaleにおいて、マーク・ド・クライヴ・ロウ2デイズの初日(2019/9/14)。

Mark De Clive-Lowe (key, p, electronics)
Brandon Eugene Owens (b)
Greg Paul (ds)
Chris Woods (vln)
Tylana Renga Enomoto (vln)
Tom Lea (viola)
Heather McIntosh (cello)
Travis Flournoy (projections)
Carlos Nino (DJ and perc)

「皆さんこんばんは」から始まる日本通マーク・ド・クライヴ・ロウのライヴ。曲も日本を想ったものばかりだった。「武士道」の1と2、南禅寺をテーマとしたもの、「赤とんぼ」のアレンジ、「大江戸日本橋」、「竜宮城」。「さくらさくら」的な旋律も聴こえてきた。

それにしてもこんなに快楽が横溢しているとは予想外だった。それにはやはりストリングスの気持ちよさがあった。特に注目してしまったのはチェロのヘザー・マッキントッシュで、音がとても官能的。またこんなに悦びを顔に出して弾く人ははじめて観た。もちろんアレンジも鮮烈なもので、ストリングスの和音、その中から絶えず浮かび上がるキーボードとピアノの響き。

本人が繰り返し口にするようにブロークンビートがストリングスの快楽の隣で進行しており、それが脳内麻薬を分泌させた。グレッグ・ポールが注入するエネルギーはとても大きく、また「Niten-Ichi」はまさに宮本武蔵の二刀流を意識したようなドラミングで全員の注視を集めた。

休憩時間のカルロス・ニーニョによる選曲も、観客もオシャレ。日本でもどジャズの空間でこそこんなのを展開してほしい。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4