所用で福岡に行ったついでに、好きな福岡アジア美術館を一回り。もちろん普段馴染みの薄いアーティストが多く、発見があって面白い。
バングラデシュのカジ・ギャスディンによる「夜の物語」には惹かれた。澄みきった夜空の星々ではない。草やウンコやガソリンの匂いがする空気、動物と植物と人がいる濁りの空間における光。光ではなく汁かもしれない。こんな表現があるのか。
台湾のキャンディ・バードによるポップな旅絵日記のような作品。旅行者の感性や「出逢い」ばかりを重視した私語りと何が違うのか?いや違わないし、それでも/それゆえ、アートになりうるということではないかと思えた。
大御所・蔡國強の火薬アート。なんども観ているからか、時間が経ったからか、ますますワビサビ感が強くなってきた。
「アジアの肉体派」というテーマでは、映画ポスターやマッチョな肉体を誇示した作品などいろいろ。面白いなと思ったのは、中国の大躍進政策時代のプロパガンダ絵画だ。わたしは中国のプロパガンダ映画もわりと好きでいくつかDVDを集めて観たのだが、いずれに登場する共産党の若者も、とても爽やかで、言動がきびきびとしている。つまり、共産党をナチスと重ねるつもりは毛頭ないのだが、モーメントとして、健全な肉体を異常なほど重視することは似ている(田野大輔『愛と欲望のナチズム』)。
●参照
「Art and China after 1989 Theater of the World」@サンフランシスコ近代美術館(2019年)
「アジアにめざめたら」@東京国立近代美術館(2018年)
横浜美術館の蔡國強「帰去来」展(2015年)
『民衆/美術―版画と社会運動』@福岡アジア美術館(2012年)
ドーハの蔡國強「saraab」展(2011-12年)
燃えるワビサビ 「時光 - 蔡國強と資生堂」展(2007年)
『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』