福岡アジアフィルムフェスティバルにて、シアード・クルスーム『セメントの記憶』(2017年)を観る。
内戦下のシリアからレバノンに亡命した人が撮ったドキュメンタリーである。
レバノンの工事現場でシリア人難民や移民が働く。カメラはセメントを、コンクリートを、鉄骨を、水たまりを凝視し、まるでその一部に過ぎないかのように人間を捉える。人間の夢は水たまりにではなく海にある。だがマテリアルとオカネと戦争は常に一体化し、何もかも轢いて進んでゆく。
工事現場のクレーンとシリアの戦車の主砲とを重ね合わせ、新しく建設されるビルと無残に砲弾で打ち壊されるビルとを重ね合わせる視線。