Sightsong

自縄自縛日記

溝入敬三@横濱エアジン

2020-02-09 22:33:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

横濱エアジン(2020/2/9)。

Keizo Mizoiri 溝入敬三 (b)

溝入敬三さんは広島の福山で齋藤徹さんと高校時代に同級だった方であり(吉野弘志さんは1学年上で広島市)、その縁もあって、徹さんのソロ『Tokio Tango』のライナーも書いている。はじめて演奏を観ることもあり、氏の傑作エッセイ『こんとらばすのとらの巻』を発掘して読みながら向かった。

冒頭の「小吉の夢」では、コントラバスの父とマンドリンの母から生まれたコントラバスの物語を訥々と話しながらコントラバスを弾く。次に、テレマンのバロック曲「ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ」(ヴィオラ・ダ・ガンバは同じ系統の古い楽器)。カタルーニャのアルベニスによる「スペイン組曲」からピアノ曲の「タンゴニ長調」。

ここで溝入さんは徹さんのことをさらっと語った(さらっと、だから、じんとくる)。「高1のときに風の又三郎のように転校してやってきて、1年でまた風の又三郎のように去って行った。去年、また風のように去って行った。こまった奴ですが」と。そして、徹さんもよく弾いた、ピアソラとトロイロの「コントラバヘアンド」。曲の途中にはなにか自分を吐露するような展開があってたまらない。

中国の仙人がトノサマガエルの王様に接するというユーモラスなオリジナル「収羊公」でファーストセットが終わった。弓弾きの奇妙な音からちょっと襟を正す感じのピチカートへの落差がまたおもしろい(ここでまた語りを始める)。いきなり余韻を残して終わった。

セカンドセットは一柳慧「空間の生成」から。連続的に実にさまざまな倍音や奇妙な音があらわれて驚かされる。続いての、鈴木行一「クンダリーニ」は、溝入さんのコントラバスのために書かれた曲だという。低音がぶるぶると震え、弓で音を放り投げるようなアプローチ、執拗な繰り返しと発展。吉川和夫のソナタ曲はいかにも複雑、そして唄うような高音とコントラバスならではの低音とのコンビネーション。アンコールはピアソラの「ラ・クンパルシータ」。

クラシック・現代音楽畑の多彩な表現技術。愉しかった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4


佐藤允彦+豊住芳三郎『The Aiki 合気』

2020-02-09 09:10:49 | アヴァンギャルド・ジャズ

佐藤允彦+豊住芳三郎『The Aiki 合気』(NoBusiness Records、1997年)を聴く。

Masahiko Satoh 佐藤允彦 (p)
Sabu Toyozumi 豊住芳三郎 (ds)

40分と20分の手合わせ。ほとんど感嘆しかできないようなものである。

演奏の個性としては似ているところと全く対称的なところがある。引き出しの無尽蔵さは似ている。佐藤さんの余裕をもって繰り出してくるフレーズやそのタイミングなんて、ぎりぎりに演奏者が追い込まれた感覚が皆無だからつまらない、のではなく、それを遥かに通り越して素晴らしい。

豊住さんは攻める側でも受ける側でも、おそらく脳内に出てきたイメージを一瞬もそこにとどまらせて分析することなく音にしてみせる。引き出しはストックというよりは通過点。

1曲目の後半で、豊住さんがマーチングバンド的な音に化け、それに対して佐藤さんは短絡せず見守る時間があって、ちょっとふたりの個性が出ているようで笑ってしまった。

●佐藤允彦
ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン(2018年)
TON KLAMI@東京都民教会(2016年)
高瀬アキ+佐藤允彦@渋谷・公園通りクラシックス(2016年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男@新宿ピットイン(2014年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』(2011年)
『ASIAN SPIRITS』(1995年)
TON-KLAMI『Prophecy of Nue』(JazzTokyo)(1995年)
『老人と海』 与那国島の映像(1990年)
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)
アンソニー・ブラクストン『捧げものとしての4つの作品』(1971年)

●豊住芳三郎
豊住芳三郎+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2020年)
豊住芳三郎+コク・シーワイ+照内央晴@横濱エアジン(2019年)
豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
ジョン・ラッセル+豊住芳三郎@稲毛Candy(2018年)
謝明諺『上善若水 As Good As Water』(JazzTokyo)(2017年)
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
豊住芳三郎+ジョン・ラッセル『無為自然』(2013年)
豊住芳三郎『Sublimation』(2004年)
ポール・ラザフォード+豊住芳三郎『The Conscience』(1999年)
アーサー・ドイル+水谷孝+豊住芳三郎『Live in Japan 1997』(1997年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(1976年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『新海』、高木元輝+加古隆『パリ日本館コンサート』(1976年、74年)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(1971年、75年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)