Sightsong

自縄自縛日記

アンノウン・ミラーズ『Your Ten Is My Twelve』

2020-02-29 15:20:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンノウン・ミラーズ『Your Ten Is My Twelve』(-2020年)を聴く。

Unknown Millers:
Ryan Williams (recorder)
マクイーン時田深山 Miyama McQueen-Tokita (箏)

リコーダーと箏とは地味なデュオのようにも思えるのだが、聴いてみるとそれは誤った予断であるとわかる。

ライアン・ウィリアムスのリコーダーはとても幅広い音を出している。管が息で共鳴するリコーダーならではの素朴な響きもあり、それが低い音になると深さを増す(長いものも使っているのかな)。ヴィブラートは一様ではなく、ときに尺八のようにも強さを変える風のようにも聴こえる。

これに箏がさまざまな撥音で絡んでいる。減衰するときの響きは単純な減衰曲線を描いておらず、弾くときの強さや音色の揺れ動きとともに魅力的だ。弾くときや消すときの踏み込みに強い意思が感じられて、それがまた良い。深山さんの演奏は渡米前後に観ているのだが、音の強靭さがその間に増したように思えた(あるいは気付いていなかった)。精神論的にいえば「覚悟」。

このデュオは観ることができなかったのだが、山猫軒での演奏は場と一体化して素晴らしいものであったらしい。そのときはビョークの「Anchor Song」も演奏したそうだ。伝統も越境もポップスもこの音世界のバウンダリーに入っているようでおもしろい。

●マクイーン時田深山
『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(JazzTokyo)(2019年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)


カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Life Goes On』

2020-02-29 12:22:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Life Goes On』(ECM、2019年)を聴く。

Carla Bley (p)
Andy Sheppard (ts, ss)
Steve Swallow (b)

ジャケットを連作のような形にして出しているトリオでの演奏の3枚目にあたる。『Trios』(2012年)、『Andando el Tiempo』(2015年)よりもさらにゆっくりと落ち着いて音楽を創っていて、そのことがとても印象的だ。止まっては再スタートする。

4曲から成る「Life Goes On」での静かなピアノ、甘酸っぱさを持続させる独特なベース、そこにふくよかで豊かなサックスがときおり入ってくる。カーラのピアノは静かだからといってコードのバッキングでサウンドを色付けするだけではなく、大きなうねりの波にもなっている。

本盤が録音されたときと同じ2019年5月に、ドイツのケルンでライヴを観ることができた。その際にカーラは「Beautiful Telephones」についてドナルド・トランプに捧げたものだと話していて、なんのことだかわからなかった。実は、トランプがホワイトハウスの執務室にはじめて入って、「いままでこんな美しい電話機を見たことがない」と口走ったことを題材にしていたのだった。もちろん直接的な使い方ではなく、カーラならではの美しいピアニズムによって人間の愚かさや馬鹿馬鹿しさをシニカルに覆っているように聴こえる。

最後の「Copy Cat」でやはりゆっくりと、しかしそれまでよりも、スワロウのベースがサウンドを前へ前へと押し動かしはじめて、3人で希望の世界を創ってみせている。

淡々と演奏していながらも無限の想像力と機微を含み持つ音楽。もう泣きそうである(泣いている)。聴くたびになんだろうこれはと思うのだろうな。

●カーラ・ブレイ
カーラ・ブレイ@ケルンStadtgarten(2019年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Andando el Tiempo』(2015年)
イロ・ハールラ+ウルフ・クロクフォルシュ+バリー・アルトシュル『Around Again - The Music of Carla Bley』(2015年)
チャーリー・ヘイデンLMO『Time/Life』(2011、15年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ(1988年)
スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(2011年)
ポール・ブレイ『Homage to Carla』(1992年)
ポール・ブレイ『Plays Carla Bley』(1991年)
ゲイリー・バートンのカーラ・ブレイ集『Dreams So Real』(1975年)
ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ(1968年)
スペイン市民戦争がいまにつながる

●スティーヴ・スワロウ
カーラ・ブレイ@ケルンStadtgarten(2019年)
スティーヴ・キューン『To And From The Heart』(-2018年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Andando el Tiempo』(2015年)
スティーヴ・キューン『Jazz Middelheim 2015』(2015年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
チャーリー・ヘイデンLMO『Time/Life』(2011、15年)
スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(2011年)
ケニー・ホイーラー『One of Many』(2006年)
ポール・モチアン『Flight of the Blue Jay』(1996年)
日野元彦『Sailing Stone』(1991年)
ゲイリー・バートンのカーラ・ブレイ集『Dreams So Real』(1975年)
ゲイリー・バートン+スティーヴ・スワロウ『Hotel Hello』(1974年)
アート・ファーマー『Sing Me Softly of the Blues』(1966年)
ポール・ブレイ『Complete Savoy Sessions 1962-63』(1962-63年)

●アンディ・シェパード
カーラ・ブレイ@ケルンStadtgarten(2019年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Andando el Tiempo』(2015年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
アンディ・シェパード『Surrounded by Sea』(2014年)
キース・ティペット+アンディ・シェパード『66 Shades of Lipstick』、シェパード『Trio Libero』(1990年、2012年)
アンディ・シェパード、2010年2月、パリ
ケティル・ビヨルンスタ『La notte』(2010年)
アンディ・シェパード『Movements in Color』、『In Co-Motion』(2009年、1991年)


アース・タンズ『Atem』(JazzTokyo)

2020-02-29 08:45:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

アース・タンズ『Atem』(Neither/Nor Records、2017年)。

>> #1964 『Earth Tongues / Atem』

Joe Moffett (tp, objects)
Dan Peck (tuba, cassette player, objects)
Carlo Costa (perc)

●ジョー・モフェット
ジョー・モフェット『More of It and Closer』(JazzTokyo)(-2018年)
ジョー・モフェット『More of It and Closer』(-2018年)

●ダン・ペック
ジョー・モフェット『More of It and Closer』(-2018年)
ハリス・アイゼンスタット『Recent Developments』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)
イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
イングリッド・ラブロック『ubatuba』(2014年)
トニー・マラビー『Scorpion Eater』、ユメール+キューン+マラビー『Full Contact』(2008、13年)
ネイト・ウーリー『(Sit in) The Throne of Friendship』(2012年)
PEOPLEの3枚(-2005、-2007、-2014年)

●カルロ・コスタ
ジョー・モフェット『More of It and Closer』(-2018年)


ピーター・エヴァンス『Being & Becoming』(JazzTokyo)

2020-02-29 08:37:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

ピーター・エヴァンス『Being & Becoming』(More is More Records、2019年)。

>> #1966 『Peter Evans / Being & Becoming』

Peter Evans (tp, piccolo tp)
Joel Ross (vib)
Nick Jozwiak (b)
Savannah Harris (ds, perc)

●ピーター・エヴァンス
ピーター・エヴァンス@Jazz Art せんがわ2018(JazzTokyo)(2018年)
ピーター・エヴァンス+ウィーゼル・ウォルター『Poisonous』(2018年)
マタナ・ロバーツ「breathe...」@Roulette(2017年)
Pulverize the Sound、ケヴィン・シェイ+ルーカス・ブロード@Trans-Pecos(2017年)
コリー・スマイス+ピーター・エヴァンス『Weatherbird』(2015年)
ピーター・エヴァンス『House Special』(2015年)
Pulverize the Sound@The Stone(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
トラヴィス・ラプランテ+ピーター・エヴァンス『Secret Meeting』(2015年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
PEOPLEの3枚(-2005、-2007、-2014年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス+アグスティ・フェルナンデス+マッツ・グスタフソン『A Quietness of Water』(2012年)
『Rocket Science』(2012年)
MOPDtK『(live)』(2012年)
ピエロ・ビットロ・ボン(Lacus Amoenus)『The Sauna Session』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ピーター・エヴァンス+サム・プルータ+ジム・アルティエリ『sum and difference』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス+スティーヴ・ベレスフォード『Check for Monsters』(2008年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年)