Sightsong

自縄自縛日記

フレッド・フリス+ニコラス・フンベルト+マーク・パリソット『Cut Up The Border』

2020-02-16 17:37:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

フレッド・フリス+ニコラス・フンベルト+マーク・パリソット『Cut Up The Border』(RogueArt、2019年)を聴く。

Fred Frith (g, b, org, p)
Nicolas Humbert (composition)
Marc Parisotto (composition)

ニコラス・フンベルトとヴェルナー・ペンツェルによるドキュメンタリー映画『Step Across The Border』(1990年)は大変な傑作だった。旅するギタリストのフレッド・フリスを追いつつ、ジョン・ゾーン、ティム・ホジキンソン、イヴァ・ビトヴァ、アート・リンゼイ、Haco、ケヴィン・ノートン、トム・コラら癖のある面々のうごめきを捉え、このぐちゃぐちゃの社会に生きることを無数の意思の泡立ちで表現しおおせたものとなっていた。良いサントラもあった。

本盤は、その際に集積された録音のフラグメンツを、映画を撮ったフンベルトらがコラージュし、フリスも音を加えた作品である。ジョナス・メカスの声が遠くから聴こえ、ビトヴァやパヴェル・ファイトやコラやゾーンらしき音もまた現れては去っていく。「Clapping Rain」の雨音など奇妙に感動的。

結果的にこの素晴らしいノマドとマルチチュードの語り直しとなっている。

●フレッド・フリス
フレッド・フリス『Storytelling』(2017年)
ロッテ・アンカー+フレッド・フリス『Edge of the Light』(2010年)
フレッド・フリスとミシェル・ドネダのデュオ(2009年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
高瀬アキ『St. Louis Blues』(2001年)
突然段ボールとフレッド・フリス、ロル・コクスヒル(1981、98年)
『Improvised Music New York 1981』(1981年)

●ニコラス・フンベルト
ユセフ・ラティーフの映像『Brother Yusef』(2005年)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴの映像『Null Sonne No Point』(1997年)
ニコラス・フンベルト『Wolfsgrub』(1985年)


サーデット・テュルキョズ+エリオット・シャープ『Kumuska』

2020-02-16 10:21:21 | アヴァンギャルド・ジャズ

サーデット・テュルキョズ+エリオット・シャープ『Kumuska』(Intakt Records、2007年)を聴く。

Saadet Türköz (voice, lyrics)
Elliott Sharp (syn, bcl, glissentar)

エリオット・シャープのスタジオ録音の蔵出しモノ。

サーデット・テュルキョズは東トルキスタンから中央アジア、生まれ育ったトルコといった自身のルーツに関連するであろう歌を絞り出すように歌う。ときに童のようであったり他の動物のようであったりもするが、極端に憑依しなり替わることはない。それよりも生きる自分自身の身体に直に結びついている。

確かにエフェクトはかけられている。だがそれは、エリオット・シャープのバスクラやギター(グリセンター)やエフェクトやディレイに近寄り、重なり、離れることで、電気ではないエフェクト感のほうに接近している。そのことによりサーデットさんの肉声がさらに浮かび上がってくる。とても魅力的。

●サーデット・テュルキョズ
内橋和久+サーデット・テュルキョズ@Bar Isshee(2018年)
ユーラシアンオペラ東京2018(Incredible sound vision of Eurasia in Tokyo)@スーパーデラックス(2018年)

●エリオット・シャープ
アルフレート・23・ハルト『Pollock』(-1997年)
ウィリアム・フッカー『Shamballa』(1993年)


坪口昌恭+細井徳太郎@下北沢No Room For Squares

2020-02-16 08:43:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のNo Room For Squares(2020/2/15)。昨年オープンしたバーで、土日はライヴもやっている。はじめて来たがオーディオから出てくる音の押し出しが強いのに柔らかく、低音をお店全体で受け止めている。喫茶の時間にレコードをゆっくり聴きたくもある。

Masayasu Tzboguchi 坪口昌恭 (p, key)
Tokutaro Hosoi 細井徳太郎 (g)

初共演のふたりだが、リハから本番まで和やかに音楽を遊んでいる。(そうに違いないと思って来た。)

冒頭の「口笛」(細井)は口笛らしからぬ広がりを持った曲で、坪口さんのキーボードが昆布のような粘っこさを持っていることが少し新鮮。続く「Circle Dance」はポール・モチアンのオリジナルで、ジョー・ロヴァーノ、ビル・フリゼールとのトリオで演奏されている(『One Time Out』)。細井さんはシングルトーンから途中で和音を入れはじめ、最後にエフェクトで周波数を変えて締めた。モチアンバンドのような変態的なシンプルさがあった。坪口さんは興味深いことにフリゼールに大きな影響を受けたのだという。

3曲目は妙なタイトル「Room(しょうがない)」(石若駿)。坪口さんはこの演奏を、最近亡くなったライル・メイズへの追悼だと言った。スローに始まり、奇妙に転調し、主体がピアノからギターに移動した。「3+1=6+4」(細井)(何だそれ)。ピアノと、アンビエントな感じのギター。ざわめきの中でのピアノが静かに浮き出てきて素晴らしい。またピアノの上に置かれたキーボードでベース音を出し始めたのにも痺れた。

セカンドセットは「2020 chords」(ドリアン・コンセプト)(→コレかな)。ちょっとマジカルなピアノの旋律に太く塩辛いギターが入ってきて、さらにキーボードでのベースで複雑かつ分厚くなってゆく。それでふとまた元のシンプルなデュオに戻り、トンネルを抜けた感覚がおもしろい。

続いては、坪口さんの新譜Ortance『Escargot』から2曲。「Tutuola Drink」(エイモス・チュツオーラの『やし酒飲み』に触発された曲)では、ギターがベース的からキーボード的に変貌する一方で、ピアノはキーボードのベースにもシフトし、そういった素敵なコラージュ感。「Even Shuffle」ではあるコードに半音、全音、一音半、全音ふたつと足し算をすることで邦楽や沖縄音楽のテイストがいきなりあらわれるという不思議さ。途中で坪口さんのキーボードが駆動力をアップさせたようだった。

ここで、セロニアス・モンクの「Light Blue」と「Ugly Beauty」。リハをこっそり聴いていたら「Light Blue」では細井さんが最後に半音ずらして奇妙な策動をみせた。それが成功なのか失敗なのかわからなかったが、本番ではそれはせずカッコ良く攻めた。最後は「Trihedron」(坪口)、スタイリッシュにスイングするピアノ。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●坪口昌恭
Ortance@荻窪ベルベットサン(2019年)
The Music of Anthony Braxton ~ アンソニー・ブラクストン勉強会&ライヴ@KAKULULU、公園通りクラシックス(JazzTokyo)(2019年)
東京ザヴィヌルバッハ・スペシャル@渋谷The Room(2018年)
ホセ・ジェイムズ@新宿タワーレコード
(2015年)

●細井徳太郎
細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
李世揚+瀬尾高志+細井徳太郎+レオナ@神保町試聴室(2019年)
細井徳太郎+君島大空@下北沢Apollo(2019年)
秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)