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自縄自縛日記

スティーヴン・ホーキング『My Brief History』

2013-10-26 10:05:45 | 思想・文学

スティーヴン・ホーキング『My Brief History』(Bantam、2013年)を読む。タイトル通り、有名な理論物理学者の自伝である。

ベストセラー『ホーキング、宇宙を語る』(原題:A Brief History of Time)を読んだのは、大学生になったばかりのとき。赤鉛筆で線を引きながら熱心に読んだのだが、9割がた忘れてしまった。

なぜこのような難解極まる本が売れたのか不思議だったのだが、この自伝でも、ホーキング自身がそのことを書いている。狙いは、まさに、専門書ではなく、駅の売店に置かれて広く読まれる本を書くこと。出版に乗ってくれたBantamの担当編集者は、とにかく専門的な用語や数式を避けて、例え話などによって読者がイメージを持つことができるよう、原稿に執拗なダメ出しをし続けたという。そして、「永遠に終わらないのではないか」とホーキングが思ったほどのやり取りの結果、あの本が生まれたのだった。もっとも、ホーキングの病気についての興味で買った人や、本棚に並べるというだけの目的で買った人が多いに違いないと、シニカルに言ってもいる。

おそらく『ホーキング、宇宙を語る』にも書いてあったのだろうが、当然というべきか、この自伝でも触れられているブラックホールや時間に関する理論は、イメージを介してではあっても、まったくわからない。

たとえば、時間や重力の特異点(singularity)。これが有限でないことが理論上重要なようなのだ。そのために(どのためかわからないが)、時間を遡ることは不可能であり、時間のはじまり(ビッグバン)以前は何があったかを問うこと自体が無意味である、と説く。

また、たとえば、ブラックホールから光は脱出しないが、情報は脱出しうる。それは、エンサイクロペディアが灰になってしまって解読できないが、一次情報は揃っているということ。勿論、そう言われること自体は想像できるが、哀しいかな、それ以上に想像が進まない。

理論はともかく、下世話な興味の部分も含め、ホーキングの生涯を追うことができて興味深い。父親の教育方針について、難病について、大学の中について(リチャード・ファインマンとマレー・ゲルマンとの激しいライバル意識なんて面白い)、2度の結婚と離婚について。

ところで、ホーキングの口癖は、「○○だ、but、・・・」だということを発見した。


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