ずいぶん前に、セシル・テイラー『Nuits de la Fondation Maeght』(Shandar、1969年)の3枚のうち2枚しか持っていないと書いたところ、仙台の塚本さんが3枚まとめて送ってくださったことがあった。もちろん順次聴いてはいたのだが、これは1日のコンサートを記録したものであり(1969年7月29日、ニース)、こちらも通して聴いたほうが良いに決まっている。そんなわけでまた3枚を続けて聴いた。
Cecil Taylor (p)
Jimmy Lyons (as)
Sam Rivers (ss, ts)
Andrew Cyrille (ds)
このときテイラーは40歳。テイラーの作品の中では比較的初期ではあるものの、もはや完成されたピアニストだ。カンパニー社の工藤遥さんやバリトンサックスの吉田隆一さんがテイラーの独自性を「冷たくて熱い」のように書いていたが、このサウンドもその通りである。きりきりに冷えた脳で集中しなければ動かせないであろう高速の指でエネルギーを保ち続けている。何を聴いてもテイラーのピアノは圧倒的。
もちろんサム・リヴァース、ジミー・ライオンズという個性の異なるサックスが絡み合うさまも面白いのだけれど、ここであらためて驚かされるのはアンドリュー・シリル。ちょうど今、NYでシリルをフィーチャーしたVision Festivalが開かれている。最近のシリルを観ればわかるが、武道の達人のごときドラミングは現役以上である。しかし、ここでのシリルはまだ29歳なのだ。その後のシリルよりも野蛮なあらあらしさが感じられる。
テイラーを聴くとなぜか生きる気力が湧いてくる。そう思わされたことは一度や二度ではない。たぶんその「なぜか」は、「冷たくて熱い」ところに秘密がある。
●セシル・テイラー
セシル・テイラー+田中泯@草月ホール(2013年)
ドミニク・デュヴァル セシル・テイラーとの『The Last Dance』(2003年)
セシル・テイラー+ビル・ディクソン+トニー・オクスレー(2002年)
セシル・テイラー『Corona』(1996年)
セシル・テイラーの映像『Burning Poles』(1991年)
セシル・テイラー『The Tree of Life』(1991年)
セシル・テイラー『In Florescence』(1989年)
ザ・フィール・トリオ『Looking (Berlin Version)』(1989年)
1988年、ベルリンのセシル・テイラー
イマジン・ザ・サウンド(1981年)
セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(1979~1986年)
セシル・テイラー『Michigan State University, April 15th 1976』(1976年)
セシル・テイラー『Dark to Themselves』、『Aの第2幕』(1969年、76年)
ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ(1968年)
セシル・テイラー『Live at the Cafe Montmartre』(1962年)
セシル・テイラー初期作品群(1950年代後半~60年代初頭)