銀座の奥野ビルに、5年ぶりくらいに入った(2019/6/12)。
Hiroshi Kato 加藤裕士 (electronics)
Kazuya Yamamoto 松本一哉 (perc)
加藤さんは窓際でエレクトロニクスを触る。操作するというよりも、触るという感じである。左手で窓を締めると、外の音が外に追いやられるとともに、明るさは変わらない筈なのに暗闇がさらにまとわりついてくる。加藤さんという人の形、室内にある物の形、それらが暗闇と相互に浸食しあい溶けあっている。音もまた同様に暗闇と溶け合っている。しばらくして加藤さんが再び窓を開けたとき、それまで自分たちが感じていた時間はなんだったのかという不思議さがあった。
松本さんは、加藤さんが行った空間との相互浸食とは異なり、音で触ることにより、自分たちがいる空間を確かめる。蛇口から滴り落ちる水、窓ガラスやシンクの擦れ、乾ききった壁、それらの音がこちらの触覚とつながる。そして松本さんは大きな銅鑼を擦りはじめたのだが、やがて、部屋のあちこちが共振を開始した。びりびりと唸り、震え、部屋の地霊がそこかしこに口を持っているかのように話すのだった。驚いた。
Fuji X-E2、XF35mmF1.4