ツァイト・フォト・サロンで、橋本照嵩『琵琶法師 野の風景』を観る。
70年代後半に撮られた、東北の蛇売りのお婆さん、熊本の琵琶法師。いまからみると際立った商売人や芸人だけでなく、そこに居るひと。藪や草叢の写真と同様に、否定しようもなくそこに居た存在である。それが焼き付けられたイコンとなって残っていることの何て不思議なことか。
橋本さんが在廊しておられたので、少し話をした。多くはニコンFに24mmの広角レンズで撮られていること。Tri-Xを使い、ISO400または場所によって増感していたこと。当時のバライタ紙(3号や4号を使用)は銀が多かったのか、薄かったこと。フィルターワークだけで、現在の多階調バライタ紙が持つ能力を引き出しおおせているか疑問だということ。いまはデジタルを使っているということ。木村伊兵衛のネガは向こう側が見えるほど薄かったということ。
今回の写真展に合わせて出された写真集『叢』を購入し、署名いただいた。これを紐解くと、まさに、あるがままの叢のように、「どうしようもなく存在している」ということが、そのまま謎として提示されているように思える。
●参照
橋本照嵩『瞽女』