ヴィム・ヴェンダース『夢の崖てまでも』(1991年)を観る。
公開当時観なかったのは、きっと、①豪華キャストがイヤ、②長いのがイヤ、③映画好きの友人が褒めていた、④サム・ニールが好みじゃなかった、くらいのしょうもない理由なのだが、その後観ようにもなかなか機会がなかった。今般クリテリオン版DVDが出たと知り入手したのだが、長さは公開時の158分の倍近い287分。ほとんど5時間である。そんなわけで、蜜柑やコーヒーを取りに立ったり、ときどきメールの返事をしたり、挿入曲をshazamでチェックしたりしながらゆっくりと観た。
実は厳かなほど壮大な物語を想像していた。たしかに壮大ではあるのだが、ジャン・ルノワールがそうだったように、それは隙間だらけで自由に満ちている。脈絡なくベルリンや北京や東京や南オーストラリアを旅するし、登場人物は大きな物語の一部というよりもあまりにも奇妙にそこに佇んでいる。
この居心地の悪さなど関係なく奇妙な人物がいるという点は、たぶんヴェンダース映画の特徴でもあった(『さすらい』、『まわり道』、『アメリカの友人』、『アメリカ、家族のいる風景』、思い出そうとしたらほとんどそうじゃないかと気がつく)。豪華キャストだってその意味で奇妙だ。そして隙間だらけのアナログなICTツールも同様に古びない。
悪夢のような世界で束縛から不器用に逃れ、自由と生命を求める人たちは、どうしたって奇妙なものに違いない。早く観ておくべきだったが、いま観てもいまの映画だった。
●ヴィム・ヴェンダース
ヴィム・ヴェンダース『世界の涯ての鼓動』
ヴィム・ヴェンダース『パレルモ・シューティング』
ヴィム・ヴェンダース『ランド・オブ・プレンティ』、『アメリカ、家族のいる風景』
ヴィム・ヴェンダース『ミリオンダラー・ホテル』
ヴィム・ヴェンダース『ベルリン・天使の詩』
日本は希望の地であると同時にかなり茶化していたりもして、まあ微妙でした。
公開のすこし後で、名画座(当時はそういう業態が北海道にもあった)で見ました。そのときすでに「これ、編集でずいぶん切りまくってんなあ」と思いましたが、約5時間ってほぼ別の作品ですね(苦笑)。
なんか、日本が希望の地みたいに描かれていて、面はゆい気分になったことを覚えています。細部は忘れましたが。