伊丹十三『タンポポ』(1985年)を観る。
食と性とを同根のものとして描いたり、フランス料理の注文マナーやイタリア料理の食事マナーに対してぼろを出さないように努める俗物たちを描いたり、まるでルイス・ブニュエルのようだ。なかでもラーメンに賭ける宮本信子、山崎務、加藤嘉(いい!)らの情熱ぶりに抱腹絶倒。『美味しんぼ』の「ラーメン三銃士」、味のわかるホームレスたちとの交流など、この映画がなくては生まれなかったのだな。マーラーの「交響曲第5番」を使っているのが、また下世話で愉しい(いま映画を反芻しながら、ブーレーズ指揮の録音を聴いている)。
ついでに、ロバート・アラン・アッカーマン『ラーメンガール』(2008年)を観る。明らかに『タンポポ』へのオマージュであり、豚の頭で卒倒しそうになる主人公、雨に降られたことがきっかけでの恋、それから山崎務に「師匠」を演じさせることなど、にやりとさせられる場面が多い。何よりも共通するのは、ラーメンを「小宇宙」とする精神である。日本にいる外国人の疎外感を、恋愛相手の在日コリアン3世の男と共有するところなど、目が行き届いている感もある。
映画公開の翌年、主演のブリタニー・マーフィはわずか32歳で亡くなっている(心不全)。良い演技だったのに。
『タンポポ』のあとは、マーラーで映画を反芻
●参照
○恵比寿の「香月」
○「屯ちん」のラーメンとカップ麺
○西荻窪の「ひごもんず」
○18年ぶりくらいの「荻窪の味 三ちゃん」
○博多の「濃麻呂」と、「一風堂」のカップ麺
○「らーめん西や」とレニー・ニーハウス
○札幌「五丈原」
○札幌「雪あかり」、「えぞっ子」
○札幌「喜来登」
○沖縄そば(2)
○沖縄そばのラーメン化
○ラーメンは国境を超える(笑)
○ポニョ・ラーメン
○韓国冷麺
○上海の麺と小籠包(とリニア)
○北京の炸醤麺
○中国の麺世界 『誰も知らない中国拉麺之路』