「NNNドキュメント'15」枠で放送された『9条を抱きしめて ~元米海兵隊員が語る戦争と平和~』(2015/5/3放送)を観る。
元米海兵隊員とは故アレン・ネルソン氏である。アメリカではどの町にもあるという軍人勧誘の事務所において、1965年、若き日のネルソン氏は貧困から抜け出せると言われ、入隊した(日本でも、自衛隊員勧誘は同じ構造である)。そこで教えられたのは、「徹底的に何も考えず敵を殺す」こと。北爆開始から間もない1966年、氏はベトナム戦争に駆り出され、数えきれないほどのベトナム人を殺す。それはベトコン、民間人を問わないものであった。帰国後、多くの帰還兵と同様にPTSDに苦しむ。そして、1995年の沖縄における米兵少女暴行事件をきっかけに、基地や戦争という装置のからくりを明確に意識し、また、日本国憲法の第9条を知る。
ネルソン氏が憲法9条を読んだとき、飛び上がるほど驚いたという。氏は、それをキング牧師の演説と同様の水準・衝撃とする。一方、この憲法の価値をまったく認識せず破壊してしまおうとする為政者は、最近の米国での演説において、こともあろうにキング牧師の演説を引用してみせた。それは間違っているばかりでなく、植民地主義に支配される側からの肯定なのだった。
番組にはダグラス・ラミス氏も登場し、基地は、植民地主義の象徴などではなく、植民地そのものなのだと説いている。
●参照
エンリコ・パレンティ+トーマス・ファツィ『誰も知らない基地のこと』(ネルソン氏登場)
アレン・ネルソン『元米海兵隊員の語る戦争と平和』
小森陽一『ことばの力 平和の力』
沖縄「集団自決」問題(16) 沖縄戦・基地・9条
●NNNドキュメント
『“じいちゃん”の戦争 孫と歩いた激戦地ペリリュー』(2015年)
『100歳、叫ぶ 元従軍記者の戦争反対』(2015年)
『日本地図から消えた島 奄美 無血の復帰から60年』(2014年)
大島渚『忘れられた皇軍』(2014年)
『ルル、ラン どこに帰ろうか タンチョウ相次ぐ衝突死』(2013年)
『狂気の正体 連合赤軍兵士41年目の証言』(2013年)
『活断層と原発、そして廃炉 アメリカ、ドイツ、日本の選択』(2013年)
『沖縄からの手紙』(2012年)
『八ッ場 長すぎる翻弄』(2012年)
『鉄条網とアメとムチ』、『基地の町に生きて』(2008、11年)
『沖縄・43年目のクラス会』(2010年)
『風の民、練塀の街』(2010年)
『証言 集団自決』(2008年)
『ひめゆり戦史』、『空白の戦史』(1979、80年)
『毒ガスは去ったが』、『広場の戦争展・ある「在日沖縄人」の痛恨行脚』(1971、79年)
『沖縄の十八歳』、『一幕一場・沖縄人類館』、『戦世の六月・「沖縄の十八歳」は今』 (1966、78、1983年)