世良利和『外伝 沖縄映画史 幻に終わった作品たち』(ボーダー新書、2020年)
大島渚は沖縄で傑作『夏の妹』を撮るわけだけれど、その前に沖縄のミュージカル映画の構想があったなんて知らなかった。
それよりも驚いたのは、ベトナム戦争の時代に、ジョン・ウェインが『グリーンベレー』の中で沖縄ロケを行おうとしていたこと。かれはやんばるの森をベトナムに見立てて撮影するつもりだった。言うまでもなく、やんばるの北部訓練場には「ベトナム村」が作られ、住民を敵のベトナム人に見立てた演習も、枯葉剤散布もなされていた。なんて破廉恥な。
それから、中島貞夫の『沖縄やくざ戦争』のもとになった脚本『沖縄進撃作戦』(笠原和夫)があったということ。ホンはあの傑作映画をを遥かに上回るスケールだったらしい。やはり抗争や興行の関係者(両者は重なる)に配慮したものだという。もう時間が経っているわけだし誰かオリジナルの脚本で撮らないかなと想像するけれど、だとしても、ヒットマンのチンピラに撃たれる千葉真一の演技を超えるのは無理だろうね。