森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

ヒスイカズラ(マメ科)

2006年05月12日 | 自然観察日記
 これも、ちょっと前の小石川植物園の温室で見た植物。ヒスイカズラ、蒼い見事な花がちょうど見ごろのときに入ったので幸運であった。温室を持つ植物園なら大概栽培しているが、花の時期に重なることはあまりなかった。花を見ればマメ科の特徴を持つ花だから直ぐわかるし、葉でも見当はつけられるのだが、各地のヒスイカズラの株で今までに果実を見たことが無い。
 当然マメの実なのだが見かけないところをみると不稔性なのかもしれないとおもっていたのだが、調べてみるとポリネーター(花粉運搬者)のせいであった。ポリネーターがコウモリなのだそうだ。コウモリがいない温室では実は出来ないのは当然の理屈なのだが、人口受粉でもダメだというから不思議である。
 多くのマメ科植物は根粒菌との共生で栄養の多いところでは生育しないいわゆる先駆植物という生態をもつ。だから、種子を作りにくいというのはある意味マメ科らしからぬ性質なのである。ましてや、次の子孫をコウモリとの付き合いの中でしか作らぬという選択は、マメ科の中では「風上にもおけない」存在なのだろう。