小さな林道の仲間の花が見えました。フデリンドウではなさそうで、これはちょっとした発見?と感じて、いろいろと検討した結果ミヤマリンドウとしました。経験的にミヤマリンドウは高山帯の湿地や稜線などで出会ったもの。ここ天竺の里は海抜700mほどで1000mに満たない亜高山帯とも言えない場所です。それも、湿気を好む種と考えていますが、水持ちの悪い岩棚のような山道の片隅に生育していました。察するに、巻機山(1967m)の山頂付近に生育している個体の種子が渓谷沿いに運ばれて来たのでしょう。ミヤマリンドウが生育するには十分な水分が必要ですが、この渓谷は霧や雲の発生が頻繁で空中湿度が高いのでしょうね。それにしても比較的低海抜でミヤマリンドウが見られるとは驚きです。
どういういきさつがあったのかは不明ですが、山頂部の高山植物が低所に生育していることは時々あり、それはほとんど沢沿いです。種子や株が流されてくるというのは容易に想像できます。しかし、このミヤマリンドウの生育する場所が、裏巻機渓谷本流から非常に離れていることや近くに浅い急峻な沢があるくらいで比較的大きな山頂部に繋がっていそうな沢がありません。もっとも、リンドウの種子は微小なものですから強い風で容易に運ばれます。水の働きというより風の作用でしょうか。そして、比較的低海抜であっても裏巻機渓谷は冷涼な環境なのだということが分かります。