武兵衛が上野に参上した本当のねらいは、国立科学博物館主催の「南方熊楠/100年早かった智の人」企画展へ行くことだった。彼の日記やノートはびっしり細かい英文・日本語や彩色されたきのこや粘菌が描かれているのを初めて見た。
今回は、森羅万象をあまねく探究した「研究者」としてばかりでなく、詳細な資料を収集・蓄積して「情報提供者」としての姿が近年評価されてきたというのが見どころのようだ。
また、日本の自然保護運動の黎明と言われた神社合祀反対運動はあまり知られていない。明治政府の神社合理化に対して神社が保有してきた自然が壊滅することへの異議申し立てだ。官憲に逮捕されたりしながらも在野の学者を貫いた。彼の先見の明に時代がついていけなかったのだ。
科学博物館にはシニアのボランティアスタッフの姿が目立った。その生き生きした説明する姿に第二の生きがいを見出した見本がある。年老いたらこうした社会貢献をするいきざまをもっともっと紹介してほしいものだ。