郵便ポストに投函した帰り、突然林道を歩いてみたくなった。まだ歩いていない近くの林道を前々から踏破したいと思っていたからだ。場所によっては無謀かもしれないが、おおよその方向がわかっていたので決行することにする。舗装がない道が続いたが、さっそく見えてきたのはしばらく使われていない炭焼き小屋だった。
林道なのでその両サイドはもちろん杉林が終始追ってくる。場所によってはなかなか手入れができていない箇所もあった。林縁には「ウラジロ」のシダ植物が多かった。同じくヒサカキ・クロモジ・アラカシ・シラカシ・ソヨゴなどの樹木も道沿いに進出していた。
人には会わないだろうと思っていたが、近所のハンターの人が車で通りかかった。イノシシやシカの痕跡を見に来たようだ。林道沿いにはイノシシの荒らした跡や樹皮を食べた鹿の食痕も少なくない。ふだん人間が立ち寄らない空間なのでここは彼らの解放区なのに違いない。
葉の裏表が同じに見える「リョウメンシダ」の群落も発見。シダは「ウラジロ」や「シシガシラ」が多かったので単調に見えた風景だが、仔細に見れば多様に生きる植物もあることを教えてくれる。
なんといっても最大の発見は珍しい「カギカズラ」(アカネ科)だった。林業にとってはその鉤で材にからんでくるので害木だが、場所によっては絶滅が危惧されている。同時に、その鉤を乾かして子どものひきつけ薬や鎮痛剤の生薬としても利用されている。
春になればもっともっと多様な植物に出会えそうだ。所々にY字路があって案内表示もないので迷走する可能性もあったが無事戻れた。所要時間は2時間弱だった。