和宮様が「タマムシみたいぞえ」と持ってきたのは、「ウバタマムシ」(タマムシ科)だった。一瞬七色に輝くタマムシが目に浮かんだが、洗濯物についていたという 「ウバタマムシ」は、その名前の通り渋いデザインだった。
車検済みの車を歩いて取りに行く途中に出会った「アマガエル」。2cmほどの小さくかわいい子どもだったが、それに比べて「ウバタマムシ」は大きくじっとしていて風格があった。色が地味というわけでもなく所作に品格を感じるのだ。日本やアメリカの政治家からはとても感じられない品格だ。政権と自分の保身のために汲々としている姿は悲しいが、それを選んでしまう国民の無頓着さも悲しい。
そんなナーバスな感情移入を吹っ切るほどの渋さが「ウバタマムシ」にはあった。松をちょっぴり食害する害虫ではあるが、近年その個体数は少なくなっているという。神奈川では準絶滅危惧種に指定されている。松の減少と松への薬剤投入による影響があるようだ。桐のタンスにときどき見られる隆起条の縦線といい、四つの黄色い紋といいジャパンを感じさせる。
成虫になるまでには2~3年かかるだけあって、年輪のような縦のデザインと色合いがマッチしている。裏山を伐採したときの松の枯れ木にきっとこの「ウバタマムシ」がいたのに違いない。だから、森には枯木も必要なのだ。桐のタンスにウバタマムシの翅を貼りつけたら国宝になるかもね。