毎日新聞2010年7月25日の朝刊の「時代の風」という欄に「公共性と匿名性」と
いう斎藤環の評論が載っている。斎藤によれば電車内での痴漢行為と駅員への
暴力が急増している共通の要因として「匿名性」の問題があるらしい。“匿名性という
仮面”が人々の攻撃性を高めたり、迷惑行為への敷居を下げてしまうという可能性
を指摘しているのだが、「匿名性」という問題が痴漢行為には当てはまるとしても
駅員への暴力に当てはまるだろうか? 駅員に暴力を行使するときに面と向かって
殴らざるを得ない以上、無言電話などの嫌がらせならともかく“匿名性という仮面”を
つけることはできない。つまり完全な牽強付会で理論が破綻しているのである。
そんな精神科医の斎藤環と、理論の“適当さ”では斎藤と十分張り合うことができる
脳科学者の茂木健一郎の往復書簡『脳と心』がようやく出版されるらしい。色々な
意味でこの“2大適当論者”の著書は興味深い。