三菱一号館美術館で7月25日まで「マネとモダン・パリ」展が催されていた。
今まで私がエドゥアール・マネ(Édouard Manet)という画家は描写が上手いと認識
していた理由は「草上の昼食」や「オランピア」などの有名な作品でマネを知って
いたからなのだが、今回他の作品を見てその認識の正しさが疑わしくなった。
例えば上の作品「笛を吹く少年」(1866年)の少年の手は正確に描かれている
のであるが下の作品「ラテュイユ親父の店」(1879年)の人物の手を見ると、
特に女性の手の描写は酷すぎると思う。しかしこの描写の変化はマネの年齢による
衰えという事ではないようで、作品ごとにタッチが全く変わってしまっているのである。
ギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet)と並び称されるほど“ふざけた”画家で
あるために、このいい加減な描写もカメラの「ブレ」を意識したものなのかもしれないが、
確実に言えることはマネはモネのような印象派ではないということである。