MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『チスル』

2014-04-04 22:58:24 | goo映画レビュー

原題:『JISEUL
監督:オ・ミヨル
脚本:オ・ミヨル
撮影:ヤン・ジョンホン
出演:ヤン・ジョンウォン/イ・ギョンジュン/ソン・ミンチョル
2012年/韓国

いまだに描ききれない「済州島4・3事件」について

 チスルとは済州島の方言で「じゃがいも」を意味するらしい。主人公の島民が軍人から逃げる際に、母親から受け取ろうとしたじゃがいもを指すと同時に、縮小されたカットが画面の中でたゆたうように洞窟に隠れる島民たち自身も現していると思われるが、つまり本作は低予算ということもあって1948年4月に起こった「済州島四・三事件」を忠実に描くというよりも、観念的なものになっている。
 例えば、作品の冒頭で煙まみれの部屋から男が現れる。どうやらその男はキムという軍の一等曹長らしく、その部屋は直前まで島民たちが潜んでいたようなのだが、煙にまいて逃げた後だったのである。ところが次のシーンは狭い穴に5人の島民がひしめいて隠れているのであるが、前のシーンとの繋がりが上手くいっておらず、個々のショットは工夫を施されているが全体的には統一感が欠けていてストーリーが分かりにくいのである。
 ナレーションベースでさえ歴史的背景や経緯などの説明がなく、戦争の悲惨さは描かれているのではあるが、それが「済州島四・三事件」であるという必然性が全く感じられない残念なものに仕上がっている。


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