原題:『サクラサク』
監督:田中光敏
脚本:小松江里子
撮影:浜田毅
出演:緒形直人/南果歩/矢野聖人/美山加恋/藤竜也/津田寛治/大杉漣
2014年/日本
「無計画」と認知症の関係について
タイトルからは予想もしていなかった、老人性認知症を患った父親を巡る物語で、記憶があいまいになりつつある大崎俊太郎はともかく、演出自体があいまいになっては意味がない。
例えば、俊太郎の認知症にいち早く気がついた大崎俊介の息子である大介は家族の誰にも気がつかれないように、去年の暮あたりから大人用の紙おむつを俊太郎にはかせていたはずなのだが、その後も俊太郎は失禁してしまい、そのたびに家族から呼び出される俊介は家に戻って後始末をするのであるが、祖父と同居しており定職に付いていないために忙しいわけではない大介が、俊太郎が紙おむつをしていることを確認しないということが考えにくいのである。
自ら認知症であることを自覚した俊太郎は5月10日から「記憶の糸」という日記を書き始め、9月下旬あたりで家族でワゴン車で初めて旅に出ることになるのであるが、俊介は勤めている大手家電メーカーにおいて取締役という役職を与えられようとする時期と重なってしまう。会社から電話がかかってきているにも関わらず俊介は会社に出勤することを断り、旅を続けることになる。しかしこの選択は明らかに間違えている。単なる思い付きの、俊太郎の思い出の地である寺を見つける旅にそれほど重要な意味があるとは思えず、寧ろ旅が終わった後の生活のことも俊介は考えなければならない。計画性がないから俊介は妻の昭子に浮気がバレたのではなかったのか。