原題:『Fukushima 50』
監督:若松節朗
脚本:前川洋一
撮影:江原祥二
出演:佐藤浩市/渡辺謙/吉岡秀隆/緒形直人/火野正平/平田満/吉岡里帆/安田成美/佐野史郎
2020年/日本
英雄物語の限界について
2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の模様が描かれているのであるが、新型コロナウイルスの災禍に見舞われている現状の視点から鑑みてどうしても負の部分がダブって見えてしまい、結局、一番苦労するのは現場で働いている人間で、昔も今も国のトップというのはとかく余計なことをしがちなのだなというため息しか出ない。
しかし本作に限って言うならば、当事者で福島第一原発の吉田昌郎所長の努力は認めるとしても自業自得の面は否めないはずで、それは事情をよく知らない海外メディアが福島第一原子力発電所の事故の被害を食い止めた英雄たちとして「フクシマ50」と報じられたことからその中心人物である吉田所長は映画的には都合が良いキャラクターでしかないのであるが、英雄になることを拒絶した『ビリー・リンの永遠の一日』(アン・リー監督 2016年)の興行的失敗を見ている者としてはなかなかさじ加減が難しい問題だと思うのである。