原題:『弥生、三月 -君を愛した30年-』
監督:遊川和彦
脚本:遊川和彦
撮影:左光朗
出演:波留/成田凌/杉咲花/岡田健史/小澤征悦/黒木瞳/岡本玲/奥貫薫/橋爪淳
2020年/日本
フィクションでさえ逃れられない「コロナ禍」について
1970年3月31日に同じ病院で生まれた主人公の山田太郎と結城弥生の、1986年3月から2020年3月までの交流が描かれている。例えば、『Fukushima 50』(若松節朗監督 2020年)は事実に基づいた物語である以上、大いに現実が反映されていることは理解できるが、フィクションである本作も決して現実から逃れることはできない。例えば、サンタ(=太郎)の息子のあゆむが教師として勤めている学校でトラブルに巻き込まれ、福島から転校してきた生徒をいじめた生徒を叱責したことに対して逆に謝罪させられる羽目になっているのであるが、それは2020年3月29日の話で、現実においては福島よりも「コロナ差別」が問題になっているからである。
主演の波留と成田凌は16歳から50歳までを演じている。成田はとても50歳には見えないが、波留はなんとなくやつれた感じは出ているものの、「50歳」があれほど乗り遅れたバスを走って追いかけられるとは考えにくいとしても、そもそも本作はほぼファンタジーというような作風で、だた波留の熱演だけを堪能できればそれで満足できる作品ではある。