(2020年6月11日付毎日新聞朝刊)
京都土産として有名な「八ツ橋」を巡って老舗「井筒八ッ橋本舗」が「創業元禄2(1689)年」を謳って営業している老舗「聖護院八ッ橋総本店」を文献に無いことから「元禄年間に八ッ橋は存在していなかった」として不正競争防止法に違反しているなどとして訴えたのだが敗訴してしまった。
久留島群一裁判長は「歴史の古さが消費者の行動を左右する事情とはいえない」とし、さらに創業年の根拠として、近世箏曲の開祖である八橋検校(やつはしけんぎょう)を由来とする聖護院の説は「全てにわたり誤りであるという確実な証拠はない」と指摘した上で、消費者にとっては「江戸時代に創業したとの認識をもたらす程度」とし、表示が商品選択を左右するとまではいえないと結論付けたのであるが、「井筒八ッ橋本舗」は文化2(1805)年創業としており、この100年以上の違いは消費者の行動を左右する大きな事情になると思う。
例えば、外国人観光客が荷物がいっぱいの中、お土産として自国に持って帰ろうと八ツ橋ひと箱を購入する場合、最初に選ばれる方は他の老舗よりも100年以上長く営業を続けることができた味ではないだろうか。創業に関しては包装紙にはそれぞれ「since 1689」「since 1805」と英語で書かれていることを見逃すべきではないと思う。
組合に加盟するある業者が「今はみんなが大変なとき。一致団結して八ツ橋全体を盛り上げていくべきではないか。それぞれが歴史ある老舗なので、互いにいい商品を作って切磋琢磨する方が建設的だと思う」と述べているようだが、これ以上八ツ橋を改良する余地がないから裁判沙汰になっているのである。
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