MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『レミニセンス』

2021-11-10 00:57:27 | goo映画レビュー

原題:『Reminiscence』
監督:リサ・ジョイ
脚本:リサ・ジョイ
撮影:ポール・キャメロン
出演:ヒュー・ジャックマン/レベッカ・ファーガソン/タンディ・ニュートン/ダニエル・ウー
2021年/アメリカ

「無情の世界」について

 主人公は被験者の記憶を覗き見る「記憶潜入(レミニセンス)エージェント」を生業としているニック・バニスターである。ある日、ニックはメイという女性の依頼を受け、彼女が無くした鍵を探す手伝いをしたことをきっかけに、ナイトクラブの歌手であるメイに何故か惹かれるのであるが、実はそれは仕組まれた「記憶」だったのである。
 繁雑なのでストーリーの詳細は避けるが、メイは麻薬を通じて知り合った共犯者である警官のサイラス・ブースに脅されてニックに近づいたのだが、最後はブースを裏切り、致死量の麻薬を取って飛び降り自殺してしまう。
 メイが死んだことを知ったニックは自ら記憶体験装置を利用して残りの人生をメイと過ごすことにするのだが、記憶の中でニックはメイにギリシア神話の『オルフェウスとエウリュディケー(Orpheus and Eurydice)』の話を語り出す。詩人のオルフェウスは毒蛇に噛まれて死んだ妻のエウリュディケーを取り戻すために冥府に入る。冥界の王であるハーデースは「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という条件を付けて許可したのだが、妻が本当に自分の後ろにいるのか心配になったオルフェウスは思わず後ろを振り向いてしまい、妻とは永遠の別れとなる悲劇である。
 ニックはメイに「後ろを振り向かなければ永遠に幸福だ」と言い放つのだが、愛するからこそオルフェウスは後ろを振り向いたのではなかったか? つまりニックにはメイに対して愛情が無いと断言するしかないのである。ニックの助手だったエミリー・“ワッツ”・サンダース も孫娘に語っているように、悲しい気持ちがあってこそ人生は「生きる」のであり、本作はハッピーエンドを装ったディストピアだと思うのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-91159


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