MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『美しき冒険旅行』

2022-07-14 00:58:59 | goo映画レビュー

原題:『Walkabout』
監督:ニコラス・ローグ
脚本:エドワード・ボンド
撮影:ニコラス・ローグ
出演:ジェニー・アガタ―/リュシアン・ジョン/デヴィッド・ガルピリル/ジョン・メイロン
1971年/イギリス

ストーリーよりもイメージ優先の映画監督について

 ニコラス・ローグの監督作品は『地球に落ちて来た男(The Man Who Fell to Earth)』(1976年)を観ただけで、妙にかったるい演出だと感じたものの、それはデヴィッド・ボウイが演じる主人公が宇宙人だからこんなものなのだろうと納得した次第なのだが、今回ニコラス・ローグ監督の実質デビュー作である本作を観て、この「かったるい演出」は監督の作風なのだと思った。
 原題「ウォークアバウト」の意味は主人公の14歳の少女と6歳の弟の「徒歩旅行」の他に、オーストラリアの原住民であるアボリジニが伝統的な生活を取り戻すためにある期間奥地を放浪してまわるという意味も込められており、この二つの意味が混ざり合うのである。
 当初、少女と弟が無理心中で父親に殺されかけて、結局父親が車に火を放って一人で自死してしまうのは、二人が訪れる先の家が無人だったり、集合住宅地で男性が一人いても他に誰もおらず二人が厄介払いされるために、どうも土地開発が上手く行っていないのが原因のように思う。それに加えて二人は途中でアボリジニの少年と遭遇し、一緒に旅をすることになるのだが、結局、少年の想いが通じなかったためなのか少年もまた首を吊って自殺するのである。
 二人は無事に街にたどり着き、ラストシーンは大人になった少女が昇進したという夫の言葉を聞いて喜んでいるのだが、内心は「ウォークアバウト」を懐かしんでいるという場面である。しかし自分を殺そうとした実の父親と親密になった少年が自殺しているのに懐かしく感じるというのはどう考えても不自然で、これはニコラス・ローグ監督がストーリーよりも大自然に戯れる子供たちのイメージを優先させており、主人公の視点ではなく監督や観客の視点で描かれることがローグ監督をマイナーな映画監督として自身を甘受させているように見えるのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-138842


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