MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『生きる街』

2018-12-21 00:56:06 | goo映画レビュー

原題:『生きる街』
監督:榊英雄
脚本:清水匡/秋山命
撮影:早坂伸
出演:夏木マリ/佐津川愛美/堀井新太/イ・ジョンヒョン/岡野真也/吉沢悠/升毅/仲間由紀恵
2018年/日本

イラつく男性と冷静な女性と

 2016年10月。主人公の佐藤千恵子は夫で漁師だった俊之を東日本大震災で亡くした後、借りた別荘を利用して「ちえこの家」という民泊を営んでおり、娘の佳苗は嫁ぎ先の名古屋の病院で看護婦として働き、息子の哲也はオリンピックを目指していた水泳選手だったのだが右腕の怪我で断念し、スポーツインストラクターの学校に入学していたが、ドロップアウトしてしまい、仙台市内で居酒屋で働いている。
 そこへ俊之の世話になった父親の代わりに韓国から息子のカン・ドヒョンが父親の手紙を持って現れたことがきっかけとなって3人は久しぶりに再会することになる。
 冒頭から千恵子の民泊を訪れた4人の若者たちが漁の体験をしているのであるが、女性3人が元気なのに対して一人の男性は船酔いしていて海へ嘔吐している。一方、名古屋の病院では断末魔で大暴れしている男性患者に対して佳苗が冷静に対応している。この2つのシーンが印象的でこの男性たちは亡くなった父親の俊之の暗喩のように見える。
 何かとイライラしている男性陣に対して、いたって冷静な女性陣という演出は現実を反映しているのかもしれない。


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『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

2018-12-20 00:56:30 | goo映画レビュー

原題:『The Florida Project』
監督:ショーン・ベイカー
脚本:ショーン・ベイカー/クリス・バーゴッチ
撮影:アレクシス・サベ
出演:ブルックリン・キンバリー・プリンス/ブリア・ヴィネイト/ウィレム・デフォー
2017年/アメリカ

ディズニー・ランドに「住み損ねた」人たちについて

 批評家には高評価を受けている本作なのだが、それほど良いとは個人的には思わなかった。例えば、主人公で6歳のムーニーが冒頭で友だちのスクーティたちと唾を吐いて駐車している車を汚したり、母親のヘイリーが激怒して使用しているナプキンを下着の中から掴みだしてモーテルのドアのガラスに投げつけたりとやりたい放題の言動が酷過ぎ、加えて頻繁に上空を飛ぶヘリコプターの騒音などもうるさく、確かにカラフルな画面とムーニーを演じたブルックリン・キンバリー・プリンスの熱演により確実にラストで感動を得られるとしても、そこまでたどり着くのにどれだけの観客が耐えられるのだろうかと疑問が生じてしまう。
 原題の「フロリダ・プロジェクト」とはディズニー・ランドの開発段階の仮の名称らしいのだが、要するにムーニーたちは「ディズニー・ランド」を目指し、住み損ね、挫折した「敗者」なのであるが、そのような夢に破れた人たちは数え切れない。


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『ねこねこ日本史』

2018-12-19 00:56:34 | goo映画レビュー

原題:『ねこねこ日本史』
監督:河村友宏
脚本:平林佐和子
出演:山寺宏一/小林ゆう/佐々木義人/大森日雅/真木駿一
2018年/日本

荒いタッチに相応しいストーリー展開について

 「新選組」、「源義経」、「石田三成」の三作品が選ばれて劇場で上映されていたのであるが、個人的には「石田三成」の豊臣秀吉の描写が気になった。秀吉は完全に「猿」扱いで「猫」の中でも優秀な三成が他の配下のネコたちとの間に入ってコミュニケーションを図っているのであるが、多少の悪意を感じるとしても、そもそも真面目に観賞するものでもないのかもしれない。


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『グリンチ』(2018年)

2018-12-18 22:54:18 | goo映画レビュー

原題:『The Grinch』
監督:ヤーロウ・チェイニー/スコット・モシャー
脚本:マイケル・レシュー
出演:ベネディクト・カンバーバッチ/キャメロン・シーリー/ファレル・ウィリアムス
2018年/アメリカ

日本語吹き替え版ならではの「解釈」について

 孤児院出身でクリスマスに良い想い出が何もなかった主人公のグリンチはまだ12月20日なのにフーヴィルで暮す住人たちがクリスマスで盛り上がっていることが癪で、クリスマス前夜にサンタクロースに扮してフーヴィルに忍び込み、クリスマスのプレゼントを全て盗むことを企てる。バレずに盗み終えようとした矢先に、シンディ・ルーの仕掛けた罠にひっかかってしまう。シンディはサンタクロースだと思い込んでグリンチにプレゼントではなくシングルマザーの母親のドナの家事労働を減らして欲しいと嘆願したことに心を打たれる。さらにプレゼントを盗まれたにも関わらず、子供たちが歌を歌っていることに感動して心を入れ替えてしまうグリンチの信念の弱さは子供向きの作品としては致し方がないのかもしれないのだが、日本語吹き替え版に関して言うならば、「シンディ・ルー」という響きが「死んでいる」と聞こえて、もしかしたらこれはグリンチが見ている夢の話なのかという不気味さが感じられた。
 同時上映のミニオン新作短編『ミニオンのミニミニ脱走』の原題である「Yellow is the New Black」とは「黄色(=ミニオンの色)こそ流行の最先端」という意味になる。

 個人的にはグリンチが鍵盤を弾きながらエリック・カルメンの「オール・バイ・マイセルフ(=完全に一人で)」を歌うシーンが笑えた。

Eric Carmen - All by Myself (Audio)


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バカに寄り添う長く険しい道

2018-12-17 00:12:30 | Weblog

麻生氏「あれで暴力?」と擁護 自民党議員の暴言に
麻生氏 野党に「はめられた」 国会空転で立憲批判
麻生氏「はめられた」発言撤回 自民議員が小突いた問題
麻生財務相、「はめられた」発言を撤回=立法府に介入考えず

 2018年12月16日付毎日新聞の「日曜くらぶ」の「松尾貴史のちょっと違和感」というコラムを読んで驚いた。ちょっと長くなるが引用してみる。

「この時(7日)の参院での混乱で、自民党の大家敏志議員が、立憲民主党の有田芳生議員の演説中に壇上に登って参院職員に怒鳴り散らして暴言を浴びせ、自由党の森裕子議員の演説中にも壇に上がった上に、立憲民主党の白真勲議員に暴力まがいの行動に出て、参院議長(伊達忠一自民党参議院議員)に向かっては『何やってんだ』と怒声を上げた。この時の暴挙について彼は議員運営委員会理事を辞任させられ謝罪したが、的外れな失言でおなじみの麻生太郎財務大臣は『あれで、暴力?』と、またというか、またまたというか、トンチンカンなかばい立てをして蒸し返した。
 なんでも『(野党に)はめられた』のだそうだ。『はめられた』のならば辞任も謝罪もしなければいいではないか。麻生氏はつい先日も、福岡市長選の応援演説で、東京大出身の北九州市長を『人の税金で学校に行った』となじっていたが、誰か彼の口に校閲をかける装置を取り付けてはくれないか。」

 参院の混乱はニュースで知ってはいたが、報道を見た限りでは、例えば、山本太郎参議院議員の「牛歩戦術」と森裕子参議院議員の「牛タン戦術」(共に自由党)ばかりが話題になっていて、それで混乱しているものとばかり思っていたのだが、まさか与党の自民党議員が「事件」を起こしていたことなど全く知らなかった。問題だと思うのは大家敏志議員の暴挙をニュースとして取り上げなかった報道番組という以上に、もしかしたら大家敏志議員の暴挙を各局の報道番組が把握していなかったかもしれないという可能性である。報道番組が議会運営を見ながら空しくなって「報道」を諦めてしまったら本当に終わりだと思う。
 麻生太郎副首相は刑務所に頻繁に入っている人に対して「人の税金でメシを食って」という言い回しの「応用」のつもりなのだろうが、河野太郎外相の「次の質問どうぞ」と同様にギャグのつもりで言って完全にスベり倒したのである。政治ジャーナリストの田崎史郎は自民党寄りの論客だと思うが、その田崎でさえ河野太郎に関して同じ国会議員ならば対等に話をするが、記者に対しては「上から目線」でインタビューに答え「相手によって態度を変える」とテレビ番組で言っていたから相当なのだと思う。


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外国人技能実習生の「行方」

2018-12-16 00:57:19 | Weblog

「7割近くが最低賃金割れ」 “失踪実習生”で野党追及
技能実習生69人死亡…溺死・凍死・「自殺」も
実習生死亡「3年で69人」=立憲発表、6人は自殺
技能実習生8年で174人が死亡「自殺」は13人
技能実習生8年間で174人死亡、中国人が最多
外国人労働者、125人が労災死 10年間で、技能実習生含む
【詳報】立憲「ややこしい質問ですが」 首相はゼロ回答

 2018年12月7日付の毎日新聞に掲載されていた外国人技能実習生の「聴取票」を巡る法務省の杜撰な対応には驚くばかりで、これでは野党に対する嫌がらせでしかなく、真剣に外国人技能実習生の対応を考えるつもりなど無いと言っているようなものだ。 
 国内に関する法案については例え悪法であったとしても自分たちが選んだ国会議員による自業自得だから仕方がないとしても、仕事を求めて決死の覚悟で日本に来た外国人技能実習生たちが酷い環境に置かれたままであるならば、彼らが日本を恨んで帰国することで、それまで良かったはずの日本のイメージは東南アジア周辺でじわじわと悪化することになるであろうし、それは私たちの子孫に受け継がれる「負の遺産」になることを忘れてはならない。


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「YOUNG MAN」と「U. S. A.」

2018-12-15 00:53:19 | 邦楽


改正入管法成立、人手不足解消も見切り発車否めず

 2018年12月10日付の毎日新聞夕刊の川崎浩専門編集委員の「大衆音楽月評」には違和感を持った。「締めくくりはどう聴くか」と題されたそのエッセイで川崎は今年の「NHK紅白歌合戦」と「レコード大賞」について書いているのであるが、問題は「レコード大賞」に関することである。
 60回目を迎えた今年のレコード大賞において、優秀作品賞に選ばれた「DA PUMP」の「U.S.A.」が外国曲のカバーであることに関して、「主催者によると、現行の審査要網に抵触する部分はないという説明である。1979年の第21回『レコ大』で、今年亡くなった西城秀樹の『ヤングマン(Y・M・C・A)』が外国曲ということを理由に審査対象から外されたことを前例としての話題だが、当時の審査経緯や判断はさすがに不明である。」と川崎は書いているのであるが、近年のレコード大賞の審査委員長まで担っている川崎のキャリアで「当時の審査経緯や判断はさすがに不明である」というとぼけた言い訳は通用するはずはなく、死人に唾棄するような物言いで、本当にわからないのであるならば、今年亡くなった西城のためにも調査するべきであろう。西城は「YOUNG MAN」で第10回日本歌謡大賞と第8回FNS歌謡祭のグランプリを獲得しているにも関わらず、「YOUNG MAN」はレコード大賞の優秀作品賞にも選ばれず、代わりに「勇気があれば」でノミネートされているのである。この事実だけで外国曲は審査対象から外されたと容易に想像がつく。「三冠」は珍しい話ではなく、例えば、1975年の布施明の「シクラメンのかほり」にしても1981年の寺尾聰の「ルビーの指環」にしても三冠を獲得しているのである。それに従うならば「DA PUMP」の「U.S.A.」は審査対象から外さなければならないはずなのである。評論家の中川右介によるならば「西城秀樹のこの年最大のヒット曲〈YOUNG MAN〉は洋楽のカバーだったので、レコード大賞の対象にならなかった。この賞は日本作曲家協会の仲間内の賞でもあるのだ。」(『山口百恵』朝日文庫 2012.5.30 p.441)ということらしい。
 敢えて無理やりこじつけるならば、これは最近成立した「改正出入国管理法」に似ている。日本人自身がヒット曲を作れないために、慌てて「外国曲」を受け入れたように見えるのだが、「U.S.A.」のもう一つの問題点は原曲がリリースされたのが1992年で、要するに「懐メロ」なのであり、日本はいまだにバブルを引きずっているのである。


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「Man On The Moon」 R.E.M. 和訳

2018-12-14 00:54:53 | 洋楽歌詞和訳

R.E.M. - Man On The Moon (Official Music Video)

 2018年12月12日にBS朝日で放送された「ベストヒット USA」でR.E.M.の「マン・オン・ザ・ムーン(Man On The Moon)」が流されたのであるが、MCの小林克也がサビの前のフレーズに関して「カウフマン、本当はネタが尽きたんじゃないの?」という意味だと言って、実際に「もう、ネタ切れなのか?」と和訳されていたのであるが、これではあまりにも説明不足だと思われるので、まずは全体を和訳してみる。因みに主人公のアンディ・カウフマン(Andrew Kaufman)はアメリカのパフォーマンスアーティストだが1984年、35歳で突然死した際に、いつもの冗談で信用されなかったという逸話を持つ。

「Man On The Moon」 R.E.M. 日本語訳

モット・ザ・フープルと人生ゲーム
レスリングの試合中のアンディ・カウフマン
モノポリーとブラックジャックとチェッカーとチェス
大量に朝食を摂るプロレスラーのフレッド・ブラッシー(Fred Blassie)
ツイスターやリスクというボードゲームを楽しもう
もしも君がそんな「楽しみ一覧表」を作るならば
天国で会おうよ

アンディ
君はこのことについて聞いたのか?
僕に教えて欲しい
君はパンチの応酬をし合っているのか?
アンディ
君はエルヴィスをからかっているのか?
僕たちは接点を失ってしまうのだろうか?

君は人類が月に降り立ったことを信じただろう?
人類が月に降り立ったことを
もしも彼(アンディ)に「奥の手」がないと君が信じたならば
面白いことなんか何もないよ

モーセは木の杖を持って歩いて行った
ニュートンは熟したリンゴが頭に当たった
エジプトは恐ろしいエジプトコブラに悩まされた
チャールズ・ダーウィンは厚かましいことを平気で世の中に問うた

アンディ
君はこのことについて聞いたのか?
僕に教えて欲しい
君はパンチの応酬をし合っているのか?
アンディ
君はエルヴィスをからかっているのか?
楽しんでいるのか?

君は人類が月に降り立ったことを信じただろう?
人類が月に降り立ったことを
もしも彼に「奥の手」がないと君が信じたならば
面白いことなんか何もないよ

この歌は「不信者」のための些細な処方箋
この歌は供物のためのほんの儚いもの
ここにはサンピエトロ大聖堂の代わりに
長距離運転手用の食堂がある
アンディ・カウフマンはレスリングをしに行くんだ

アンディ
君はこのことについて聞いたのか?
僕に教えて欲しい
君はパンチの応酬をし合っているのか?
アンディ
君はエルヴィスをからかっているのか?
僕たちは接点を失ってしまうのだろうか?

君は人類が月に降り立ったことを信じただろう?
人類が月に降り立ったことを
もしも彼に「奥の手」がないと君が信じたならば
面白いことなんか何もないよ

君は人類が月に降り立ったことを信じただろう?
人類が月に降り立ったことを
もしも彼に「奥の手」がないと君が信じたならば
面白いことなんか何もないよ
君は人類が月に降り立ったことを信じただろう?
人類が月に降り立ったことを
もしも彼に「奥の手」がないと君が信じたならば
面白いことなんか何もないよ

 小林克也は「Are we losing touch?」を「本当はネタが尽きたんじゃないの?」と解釈しているのであるが、実は私はこの意見に同意しない。小林の解釈ならば「Are you losing touch?」と主語が「君」にならなければならないが、ここは「私たち」だから素直に「僕たち(死んだカウフマンと自分たち)は接点を失ってしまうのだろうか?」と解釈する。しかし小林の解釈は理解できる。あれだけ冗談を飛ばしておいて、本当に死んでしまったカウフマンに対して冗談の「ネタ」が尽きてしまったのかと問いかけたい気持ちが分かるからである。
 サビの「君」はカウフマンのことではなく、この歌を聴いている人を指していると解釈するならば歌詞の意味が理解しやすくなるであろう。
 因みに歌詞に頻繁に用いられる「yeah」という言葉はニルヴァーナ(Nirvana)の「リチウム(Lithium)」に影響を受けていると捉える意見もある。

Nirvana - Lithium


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ムンクの『叫び』と「荒療法」

2018-12-13 00:54:19 | 美術

 現在、東京都美術館で催されている『ムンク展 - 共鳴する魂の叫び』ではエドヴァルド・

ムンク(Edvard Munch)のテンペラ・油彩、厚紙による『叫び(The Scream)』(1910年?)を

観ることができる。『叫び』が展示されている「魂の叫び - 不安と絶望」と名づけられた

部屋が妙に暗くて、列ができていたので並んで観たのであるが、イメージと違って実物は

意外と色褪せていたことに驚いた。

 これはもちろん盗難などに遭って損傷を受けたためなのだが、そもそもムンク自身が

艶の出るワニスを嫌い、敢えて風や雨や雪に作品を晒す「荒療法(drastic treatment)」を

作品に施していたのだからやはり天才の考えることは違う。


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エドヴァルド・ムンクの一流の証

2018-12-12 00:56:14 | 美術

 現在、東京都美術館で催されている『ムンク展 - 共鳴する魂の叫び』ではエドヴァルド・

ムンク(Edvard Munch)の初期から晩年の作品まで観ることができる。

 初期のムンクの作品は、例えば、1882年、ムンクが19歳の時に描いた「自画像

(Self-Portrait)」から1889年の「夏の夜、渚のインゲル(Summer Night. Inger on the Beach)」

までの作風はスタンダードなものである。

 ところが政府から奨学金を得たムンクが1889年10月から1892年3月までパリに

留学して帰国してきて最初にベルリンで催された個展は「ムンク事件(The Munch Affair)」

と呼ばれるほどに大顰蹙を買ってしまうのであるが、その作風が現在、ムンクの作風と

して私たちに馴染みのあるものなのである。パリでムンクは印象派、ポスト印象派、

ナビ派、フォーヴィスムに繋がる象徴主義のみならず、1894年頃には版画を学び、1902年

にはコダックカメラで写真に興味を示し、その上、ムンクは母親、姉、父親、弟、妹を亡くしていき

ムンク自身も精神を病んで入院したり、1902年に痴話げんかによる拳銃の暴発により

ムンクは左手中指を失い、1930年には血管破裂で右目を失明してしまい、80歳の長命で、

生涯独身を貫く。要するにムンクは一流の画家としての素質を全て持つ稀有な画家なのである。


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