孤児院出身でクリスマスに良い想い出が何もなかった主人公のグリンチはまだ12月20日なのにフーヴィルで暮す住人たちがクリスマスで盛り上がっていることが癪で、クリスマス前夜にサンタクロースに扮してフーヴィルに忍び込み、クリスマスのプレゼントを全て盗むことを企てる。バレずに盗み終えようとした矢先に、シンディ・ルーの仕掛けた罠にひっかかってしまう。シンディはサンタクロースだと思い込んでグリンチにプレゼントではなくシングルマザーの母親のドナの家事労働を減らして欲しいと嘆願したことに心を打たれる。さらにプレゼントを盗まれたにも関わらず、子供たちが歌を歌っていることに感動して心を入れ替えてしまうグリンチの信念の弱さは子供向きの作品としては致し方がないのかもしれないのだが、日本語吹き替え版に関して言うならば、「シンディ・ルー」という響きが「死んでいる」と聞こえて、もしかしたらこれはグリンチが見ている夢の話なのかという不気味さが感じられた。 同時上映のミニオン新作短編『ミニオンのミニミニ脱走』の原題である「Yellow is the New Black」とは「黄色(=ミニオンの色)こそ流行の最先端」という意味になる。 個人的にはグリンチが鍵盤を弾きながらエリック・カルメンの「オール・バイ・マイセルフ(=完全に一人で)」を歌うシーンが笑えた。
2018年12月12日にBS朝日で放送された「ベストヒット USA」でR.E.M.の「マン・オン・ザ・ムーン(Man On The Moon)」が流されたのであるが、MCの小林克也がサビの前のフレーズに関して「カウフマン、本当はネタが尽きたんじゃないの?」という意味だと言って、実際に「もう、ネタ切れなのか?」と和訳されていたのであるが、これではあまりにも説明不足だと思われるので、まずは全体を和訳してみる。因みに主人公のアンディ・カウフマン(Andrew Kaufman)はアメリカのパフォーマンスアーティストだが1984年、35歳で突然死した際に、いつもの冗談で信用されなかったという逸話を持つ。
小林克也は「Are we losing touch?」を「本当はネタが尽きたんじゃないの?」と解釈しているのであるが、実は私はこの意見に同意しない。小林の解釈ならば「Are you losing touch?」と主語が「君」にならなければならないが、ここは「私たち」だから素直に「僕たち(死んだカウフマンと自分たち)は接点を失ってしまうのだろうか?」と解釈する。しかし小林の解釈は理解できる。あれだけ冗談を飛ばしておいて、本当に死んでしまったカウフマンに対して冗談の「ネタ」が尽きてしまったのかと問いかけたい気持ちが分かるからである。 サビの「君」はカウフマンのことではなく、この歌を聴いている人を指していると解釈するならば歌詞の意味が理解しやすくなるであろう。 因みに歌詞に頻繁に用いられる「yeah」という言葉はニルヴァーナ(Nirvana)の「リチウム(Lithium)」に影響を受けていると捉える意見もある。