「付き合ってやれんですまんが…城博物館から見るとえーわ。じゃー18時にホテルの方に行くから」
「わかりました。いろいろとありがとうございます。4時間もあればじっくりと見て回れるでしょう」
翡翠さんと別れて堀に沿って歩いた。いろは松の幹に藁が巻いてあった。これは腹巻ではなく、害虫駆除の目的だろう。藁の下に害虫を集め、一網打尽にして藁を春に焼く。古くからの松枯れ対策だ。


佐和口多聞櫓から表門橋を渡り、彦根城博物館に入った。古地図、器、甲冑、刀が多数展示してあったが、特に注目したのは能面だった。
能面は見る角度によって微妙に表情を変える。怒り、笑い、悲しみといった感じが表れるのが非常に面白い。

博物館を出た私は急な表坂を上り始めた。
