知人から貰った小鮒の甘露煮。海の近くで育った私は成人するまで川魚にはほとんど縁がなかった。「戦前に小川で寒鮒を獲って食べていた」と父から聞かされた時は信じ難かったが、山陰で寒鮒の刺身を試して癖がなくて美味なものもあることを知った。
かつて海なし県では蛋白源として鮎や鯉や鮒が珍重された。長期保存する場合は焼き干し(だし用)や甘露煮などに加工した。それが今では土産物として売られている。
鮒は素焼きしてから醤油、砂糖、水飴などで長時間煮て味を含ませたと推測した。骨は気にならず、ワタの苦みが若干感じられるが、甘みが非常に強い。関西ではまず有り得ない味付けである。
「たまには甘いもんもええか」と呟いて焼酎の湯割りを飲み干した。
