松江市は好きな都市の一つである。どんな町にも汚い部分は絶対にある。肝心なのは、醜悪な面を適度にぼかすということだ。松江の人はその点で秀でていると思う。私の米子に対する評価がとりわけ低いのはそれができていないから。
公園から大きな「宍道湖」を望む。晴れた日の湖は静かで美しい。しかし、常に穏やかというわけではない。風が吹けば波はうねり湖は荒れ狂う。自然のエネルギーを前にしては人間など無力に近い。普段はその事実をすっかり忘れて暮らしているだけのこと。

「宍道湖大橋」を渡り右に曲がると「國暉酒造」の酒蔵だ。私は旅をしている時には必ずその土地の酒と食材を試す。己の持っている、つまらない固定観念をあっさり捨て去ることで新たな発見ができ、目と舌が肥えてゆくのである。
