その1からの続き←少し追記してあります。
切り出した板を曲げる。作業は全くの手作業で力技で行うので、結構大変である。
金属板とはいえ基本的には紙やなんかと同じで、硬くて角のある物が当たっていると、その部分から折れる。また力を掛けた位置から遠い所から曲がる(テコが働く為。近い位置は板が撓るだけで折れない…程度にも因る)。
平面を残したい部分は板で挟んでクランプ締めしておくと良い。・・・コレだけ解っていれば、平面構成のアンダーガード程度ならば、設計を工夫すればDIYで可能と思われる。
ちなみに本体をフレームに沿わせた形状に手作業で曲げるのに小一時間。左右のフラップを曲げて本体にピタッと付く様に摺り合わせするのにまた約1時間。
友人とか若い衆とか、余り作業慣れしていない人(スマン)が作業してるのを見て思うのは、発展性のある仕事なのに、一工程がしっかり出来ていない状態で「まあいいや」的に作業を進めていって、最終的に仕上がりに影響してしまう事。
納得の行くまで何度でもやり直し、場合によっては一旦前の工程に戻る勇気も必要だ。
今回は冶具を特に用意しておらず、現物あわせである。天井クレーンにてXR250を吊り下げて作業している。
そうそうジックリ見る事ができない、下からの写真をお楽しみ下さい?
見ての通り、アンダーチューブはかなり左右非対称である。クランクケースの合わせ面は車体の中心にあるので、コレを基準にした。リヤサスのリンクロッドは車体左側にオフセットしているので、目の錯覚で一瞬目をパチクリさせてしまうが、リヤタイヤはちゃんとセンターにある。
デザインを重視して曲面構成とする為、アンダーチューブに対して結構スキマが生じてしまう。実際グランドクリアランスが減ってる事になるが、俺としては「性能は良いがデザインが悪い物」よりも「性能は悪いがデザインは良い物」を選ぶ主義なので(当然だが、程度にも因る)、いいのである。
曲げ加工の終わった部材に肉抜き穴を開ける。一定以上大きい穴はドリルではなくてホルソー(ホールカッター)を使用。ノコ刃が円状に並んでいる物で、ホームセンターでも入手可能だが、結構高い。写真の物で4~5000円位。
曲げ加工をする前に穴をあけてしまうと、そこが弱くなる為に正確に曲げられないので、曲げた後で穴を開けている。
部材を溶接して組み立てる。アルミの溶接にはTIGを使う(※半自動溶接機でも可能、機種によっては不可の物もある)。正確には「TIGアーク溶接」だ。TIGとはタングステン・イナート・ガスの略で、タングステン電極で不活性ガス(基本的にはアルゴンガス)をシールドに使うという意味。この為「アルゴン溶接」とも呼ばれる。タングステンは地球上で最も融点が高い金属なので、理屈上全ての金属を溶接できる。殆どの金属は直流溶接で行うが、アルミやマグネシウムは交流溶接となる(真鍮はどちらでも可能らしいがやった事が無い)。TIG溶接機には大きく分けて代表的な物が二種類あり、直流専用と交直両用の物。直流専用の方が一般的(と自分では認識している)だが、アルミを溶接するには後者が必要。 ※我社の溶接機は後者であり、しかも交直のハイブリッド溶接が可能
実作業でもハードルが多い。まず、母材の表面に不純物があるとダメ。油分とか、塗装とか、アルマイト皮膜とか。溶接作業前に除去しなければならない。
鉄やステンレスでは母材を溶かすのみでも溶接可能だが(必ずしも溶棒を足してやらなくてもOK)、アルミでは事実上殆ど不可能なので、左手でフィラワイヤ(溶加棒)を足してやらなければならない。つまり必ず両手を使うので、面を持つ手が足りない(爆)。今は光に反応して自動で暗くなる便利な面を使っているので良いが、以前は色ガラス部分を手動で開閉する面を使っていた。
あと、そのフィラワイヤだが、アルミの材質に適した物を使う必要がある。逆に言えば材質が判ってないと作業に困る(この場合は母材を細く切り出してフィラワイヤとして使う)。対応する材質の巾が広い物だと便利。我社で加工するのは殆どがA6063なので、それに合わせた物を在庫している。
加えてアルミは放熱性が高いという特性があるので、作業時には母材の温度が低いと溶けていかない。母材のサイズが大きいとこの傾向は顕著だ。母材の温度が上がって溶け出すまでシツコク放電させ続ければ溶接可能だが、その後母材の温度が上がってくるとビード(溶接跡)の見栄えが変わってしまうので、特に気温が低い時期はストーブやヒートガンで予熱を加えている。※その他、他の材質と比較してヒケ(体積の減少)が大きいとか、溶接すると強度が低下するとか、クリーニング巾とかの条件設定が色々あるが割愛。
・・・とまあエラそうな事を書いてきましたが、実は俺、アルミの溶接があまり得意では無い(自爆)。仕事であまりやらないのだ。というよりも、そもそも交直両用のTIG溶接機を導入したのは、ハッキリ言ってバイクの為だった(爆)。近年は仕事でもアルミで、というお客様の要望が多いので、結果的には同業他社に対してアドバンテージがありますが・・・。(参考過去記事:坂内2DAYSで使用したライトのガード、Vmaxのバッテリーケース)
前側の取り付け位置には、フレームにナットが溶接されている(純正のパイプ状のガードが付いていたとの記憶)。この形状のアンダーガードだと、スペーサーで持ち出してやらなければならない。左後側の取り付け穴は単なる貫通穴なので、取り付け時はナットを入れるとかの対策が必要。
結構迷ったのが、先代アンダーガードではデザイン上のポイントにもなっていた、フレームのドレンボルト部分のガードと、繭型の肉抜き穴(風穴でもある)を入れるかヤメるか。ドレンボルトが無防備なのは気味が悪いが、先代アンダーガードではこの部分は余り傷が付いていないし、既製品でもココをガードしてる物はパッと調べた所では無い様なので今回はヤメ。肉抜き穴はデザインのポイントとする為に採用。
両面溶接をするが、裏面を先に溶接した時点で全体をバフ掛け(表を溶接してからバフを掛けてビードを削ってしまうのを嫌っている)。我社ではバフモーターは使っていない(本格的にやる時は外注)。最近使い出したのがサイザルバフのオフセットディスクで、ディスクサンダーに取り付けて使用する物。コレに各種研磨剤を付けて使う。そのままスイッチオン!だと回転が速すぎるので、スピードコントローラーで回転を落としている。
最後に表から溶接して軽く磨いて終了。
どうでございましょう?売れそう?(写真は仮付状態)