年寄りの漬物歴史散歩

 東京つけもの史 政治経済に翻弄される
漬物という食品につながるエピソ-ド

べったら市 明治39年10月

2006年07月06日 | べったら市
明治39年10月17日読売新聞
イチョウの葉がちらほらと散りだしてコウロギの声が縁の下へ回るかと思うと早今年も秋深くなり夷講のべったら市はいよいよ明後日19日となれり、今年も二カ月余りとなって人の心も気も忙しくなるなり、例年のごとく日本橋小伝馬町にてべったら市を開き警察にしてもそれぞれ地割り警戒の準備も整ったが、当日の第一の売物である浅漬は本年は雨天がちとなっていたので地面は湿っていて大根の出来はよろしからず品質悪しき物にても一本7~8銭より10銭位にて上等品はわずか3~4把ほどしかなく他はみの種の袋物である。又浅漬に漬けている。近頃はサッカリンを多量に用いれば色よく早く漬かるとしてこれを使用するもの多く、そのために大根の苦味を増すになっているけれど例年べったら市を過ぎれば大根の価格が下落するが今年は下落する見込みがないという。また同日は小伝馬上町より人形町通には浅漬店・縁起物店・鉄砲町は菊・祖師堂は見世物等が出店し、日本橋署は非番の巡査を出し、東鉄社より電車道へ社員を派遣し事故のないよう注意する予定。

明治39年10月17日都新聞
ベッタラ市と浅漬
明後19日は例年の通り大伝馬町のべったら市なのだが当夜の売物たる浅漬大根の相場を聞くと本年は盆明け後雨続きのため大根作柄は大外れにて従って仕入れた値段も高くて上物は一車の荷の中にはようやく2~3把位にして一本5銭なるべし。そういう訳で中々引き合わぬと例の奸商連は麹をたくさん使用せず例のサッカリンを用いている者もある。中には分量を間違えて大根の苦味と共にサッカリンの苦すぎる漬け方をする物があるとのこと。同所の各漬物店においては夷講のご祝儀に極めて少数の浅漬大根を販売する位なので当夜の相場も大抵一本7~8銭から10銭位になるだろう。

奸商とは不正な手段を用いて利益を得ようとする悪賢い商人。悪徳商人。
サッカリンが“べったら漬”に使われていると言う記事が出る。
明治34年に人工甘味質取締規則により”サッカリン“は食品に使用は禁止となっていた。サッカリンは使用過多になると甘味以上に苦味が出る。
東鉄社とは馬車鉄道を電化した東京電車鉄道社のこと。現在東京都電の荒川線として唯一残っているが他の鉄道に比べて線路の軌間が(1372mm)なのは、馬車鉄道の時代から引き継いで来たことが理由です。
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