大正8年10月19日都新聞
今日は年中行事のべったら市にて通旅篭町、通油、大伝馬、小伝馬上町、鉄砲、小伝馬、田所、堀留の各町一帯で賑わうであろう。昨夜から縁日商人は地割りを始め,浅漬店600軒,植木や120軒宮師150軒雑物その他130軒,合計1000軒。堀留・久松・新場橋両署は応援を求めて警戒し、今夜6時からこの区域内の車両の通行を禁止した。恵比寿神社にては福守と福財布を出すようである。
大正8年10月20日都新聞
べったら市 浅漬は上出来
もうべったら市が来た。例によって大伝馬小伝馬両町から鉄砲町にかけて露天商とそれに集まる人通りはおびただしい。とりわけ夜8時頃までは幾たび電車の運転を停止したかもしれない。交通整理は提灯を振り回す巡査の声,それ安いの高いのは12階だと客を呼びとめる浅漬屋の声、浅漬を買い込んでソレツクヨーと人波を掻き分けていく。酔っ払いの声、何もかにも入り交じって景気の好いこと一通りならず、とりわけ大伝馬町通の浅漬の店と梅花亭の切山椒とかほとんど動かない混雑。浅漬を付けられて“キャッキャッ”と叫ぶ芸者の声など物々しい。吉例の神棚屋の数の減ったこと浅漬屋の中に洋風の看板を掲げて流行の「大廉売」と言う言葉を大書した店のあること、焼栗屋の中に甘栗屋も混じったことなどを除けば全く江戸の昔をそのままのべったら市で新高野山の境内の中には芝居、絵話しや、金目鳥という見世物などわずかの木戸銭で客を呼んでいるなど古風なのさえあるポワンポワンと本釣りを打ち込みながら中音で声色を使う絵話しやのヨロズ怪しんで血相を変えた巡査が飛び込んで来るなどと今の世のべったら市にふさわしい光景であった。浅漬大根の出来はよいらしく小ぶりが物2本20銭が言い値で1本20銭ならば快く手を打っていた。
今日は年中行事のべったら市にて通旅篭町、通油、大伝馬、小伝馬上町、鉄砲、小伝馬、田所、堀留の各町一帯で賑わうであろう。昨夜から縁日商人は地割りを始め,浅漬店600軒,植木や120軒宮師150軒雑物その他130軒,合計1000軒。堀留・久松・新場橋両署は応援を求めて警戒し、今夜6時からこの区域内の車両の通行を禁止した。恵比寿神社にては福守と福財布を出すようである。
大正8年10月20日都新聞
べったら市 浅漬は上出来
もうべったら市が来た。例によって大伝馬小伝馬両町から鉄砲町にかけて露天商とそれに集まる人通りはおびただしい。とりわけ夜8時頃までは幾たび電車の運転を停止したかもしれない。交通整理は提灯を振り回す巡査の声,それ安いの高いのは12階だと客を呼びとめる浅漬屋の声、浅漬を買い込んでソレツクヨーと人波を掻き分けていく。酔っ払いの声、何もかにも入り交じって景気の好いこと一通りならず、とりわけ大伝馬町通の浅漬の店と梅花亭の切山椒とかほとんど動かない混雑。浅漬を付けられて“キャッキャッ”と叫ぶ芸者の声など物々しい。吉例の神棚屋の数の減ったこと浅漬屋の中に洋風の看板を掲げて流行の「大廉売」と言う言葉を大書した店のあること、焼栗屋の中に甘栗屋も混じったことなどを除けば全く江戸の昔をそのままのべったら市で新高野山の境内の中には芝居、絵話しや、金目鳥という見世物などわずかの木戸銭で客を呼んでいるなど古風なのさえあるポワンポワンと本釣りを打ち込みながら中音で声色を使う絵話しやのヨロズ怪しんで血相を変えた巡査が飛び込んで来るなどと今の世のべったら市にふさわしい光景であった。浅漬大根の出来はよいらしく小ぶりが物2本20銭が言い値で1本20銭ならば快く手を打っていた。