年寄りの漬物歴史散歩

 東京つけもの史 政治経済に翻弄される
漬物という食品につながるエピソ-ド

べったら市 昭和8年10月

2006年07月27日 | べったら市
昭和8年10月17日朝日新聞
家庭商品学
浅づけの巻・上
4斗タルに砂糖3貫500
別名べったらづけと言って東京名産である。本格的な製法は練馬あたりで出来た大根を精選して、うす塩を使って塩づけにし相当についたところで本当につけ込むのであるが、つけ込み4斗タル一杯に白砂糖3貫500匁、それに12枚のコウジ(一枚のコウジは米5合)を使用する。
 順序はうす塩つけの大根の水分を抜き、コウジと白砂糖に埋めておくと塩大根からひとりでに水分が出てあのおいしい味が出てくるものである。このつけ込みも極上品になると更に一回つけ替えして、味を濃厚にしたものもある。
 ところで下級品になるとこの1タルにつき3貫500匁の白砂糖は金がかかるので、悪徳のつけもの屋はサッカリンを代用するものである。これはその筋で厳重に監視取締っているので毎年トラック何台という不良浅づけを押収するようなことである。
 こんな事情だから街にも押収残りの悪商品が相当売られていると思わなければならぬ。これは味の問題であるから、食べてみるまでなかなかわからない。

昭和8年10月18日朝日新聞
家庭商品学
浅づけの巻・下
タルから出して精々4日
今年は日照りで大根の質が悪く、浅づけになる良質の大根が非常に少ない上、主要原料である白砂糖が騰貴しているから相場は商売にならぬほど高価で、目下1キロ70銭位もしている有様である。
 季節はべったら市の行われる今月19日頃の物で、十月末から11月中はずっと味がいいので、保ちは今の陽気タルから出して精々二日間までで、十一月になっても4日経過した物は本来の味はない。
しかし、京都の千枚づけやすぐき等のように東京の浅づけはお土産として地方に送り出されようになっているが、何しろ非常に足が速いから最も好季節でも発送後4日を経過した物は、もう悪くなったものと思わなければならない。
 浅づけの材料として最も主要なのは何と言っても大根である。
 小さなつけもの屋では近在の産地から出荷された大根を青物市場から買うしかないが、大きなつけもの屋では精選した種子を農家に配ってもらい優良な大根だけを原料ににすると云う様な方法をとっている店さえある。
これによって浅づけ屋が如何に原料大根に苦心しているかを知るということが出来る。

この記事には“漬”という字が消えている。戦後、当用漢字に“漬”の字がもれたが戦前の昭和の時代にも消えていたのか?

コメント
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