「おまえには、哲学が足りない。」
私が20代の後半のときに亡くなった父には、よくこの言葉を言われた。
何を言ってんだ。
オレの大学の一般教養の科目「哲学」が「C」だったからって、哲学が足りないだなんて。
オレだって、いろいろ考えてるよ。
たまたま大学1年の時の哲学の成績が悪かったからって、いつまでも言うなよ。
20代のあの頃、晩酌をして、上から目線で語ってくる父の言葉には、反発を覚えたものだった。
ただ、自分の生き方・考え方には確たる自信は持てないでいた。
自分への自信のなさ、というものは案外すっと続いていたのかもしれない。
「不惑」という年代を過ぎ、中年になってからも、ずうっとそんな気持ちでいたのだった。
そのせいだろうか。
今から15年余り前に買った本に、こんな本があった。
「大人になるための思想入門」(新潮選書;新野哲也 著)。
先日、本棚を整理していたら、奥から出てきた。
買ったばかりの新しいままだ。
15年余り前に買った、と書いたが、買ったことを覚えていない。
買ったことも、少しでも読んだという記憶もない。
出版されたのが、2002年7月20日で第1版だから、15年余り前だろうと思っている。
もう、この本は新刊では販売されていない。
本の帯には、「つよい心でしっかりと生きていくために― 世界がひろく、明るくみえてくる。新しい自分に脱皮できる人生のヒント18章」と書いてある。
1章がだいたい10ページくらいで構成されている。
女性との何ということのない会話や、哲学者の論などが出てくることもある。
堅苦しい内容にならずに、くだけた感じになりながらも、自らの主張は通している。
そして、最後には、各章とも必ず「大人になるためのアフォリズム」という金言で締めくくられている。
・過去と仲良く付き合いなさい。小言屋だが信頼できる。未来は、口は巧いが信用がおけない。
・怖いものだけを相手にしなさい。怖くないものは、相手にしなくとも向こうから寄ってくる。
・どんな立派な大人の心も少年の「元気」「素直」「勇気」という三本柱の上に構築されている。
・夜の冷静さで考え、昼の快活さで行動し、朝の清々しい気持ちと夕暮れの穏やかさで語ろう。
・大人は背伸びをしている少年である。上げた踵の十センチのなかに大人のすべてがある。
15年余り前では、まだこれらのアフォリズムに同意はできなかったと思うが、さすがに、定年退職までしてしまった今だと、わかる気がする内容が多い。
そう感じて、ふと思った。
今なら、親父に「おまえには哲学が足りない」なんて言われないだろうなあ…と。
まだまだ自分の生き方に確たる自信をもてないことに変わりはないけれど、ここまで生きていたからには、それなりの思いはもっている。
まあ、親父が亡くなった年齢より長く生きているのだから、それは当然のことだろう。
内面的に少しは大人になれたのだろう、と思いつつ読み終えたのであった。
私が20代の後半のときに亡くなった父には、よくこの言葉を言われた。
何を言ってんだ。
オレの大学の一般教養の科目「哲学」が「C」だったからって、哲学が足りないだなんて。
オレだって、いろいろ考えてるよ。
たまたま大学1年の時の哲学の成績が悪かったからって、いつまでも言うなよ。
20代のあの頃、晩酌をして、上から目線で語ってくる父の言葉には、反発を覚えたものだった。
ただ、自分の生き方・考え方には確たる自信は持てないでいた。
自分への自信のなさ、というものは案外すっと続いていたのかもしれない。
「不惑」という年代を過ぎ、中年になってからも、ずうっとそんな気持ちでいたのだった。
そのせいだろうか。
今から15年余り前に買った本に、こんな本があった。
「大人になるための思想入門」(新潮選書;新野哲也 著)。
先日、本棚を整理していたら、奥から出てきた。
買ったばかりの新しいままだ。
15年余り前に買った、と書いたが、買ったことを覚えていない。
買ったことも、少しでも読んだという記憶もない。
出版されたのが、2002年7月20日で第1版だから、15年余り前だろうと思っている。
もう、この本は新刊では販売されていない。
本の帯には、「つよい心でしっかりと生きていくために― 世界がひろく、明るくみえてくる。新しい自分に脱皮できる人生のヒント18章」と書いてある。
1章がだいたい10ページくらいで構成されている。
女性との何ということのない会話や、哲学者の論などが出てくることもある。
堅苦しい内容にならずに、くだけた感じになりながらも、自らの主張は通している。
そして、最後には、各章とも必ず「大人になるためのアフォリズム」という金言で締めくくられている。
・過去と仲良く付き合いなさい。小言屋だが信頼できる。未来は、口は巧いが信用がおけない。
・怖いものだけを相手にしなさい。怖くないものは、相手にしなくとも向こうから寄ってくる。
・どんな立派な大人の心も少年の「元気」「素直」「勇気」という三本柱の上に構築されている。
・夜の冷静さで考え、昼の快活さで行動し、朝の清々しい気持ちと夕暮れの穏やかさで語ろう。
・大人は背伸びをしている少年である。上げた踵の十センチのなかに大人のすべてがある。
15年余り前では、まだこれらのアフォリズムに同意はできなかったと思うが、さすがに、定年退職までしてしまった今だと、わかる気がする内容が多い。
そう感じて、ふと思った。
今なら、親父に「おまえには哲学が足りない」なんて言われないだろうなあ…と。
まだまだ自分の生き方に確たる自信をもてないことに変わりはないけれど、ここまで生きていたからには、それなりの思いはもっている。
まあ、親父が亡くなった年齢より長く生きているのだから、それは当然のことだろう。
内面的に少しは大人になれたのだろう、と思いつつ読み終えたのであった。